第147話 刀型武器の完成


ご指摘を受けまして、マチェットのところ削除しました。

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 体力測定が終わったあと学校へ戻ってくる生徒は少なくない。

 探索科なら鍛錬場へ。試験勉強後の鬱憤ばらしも兼ねてストレス発散するんだろう。


 サポート科の面々はそれぞれの作業場へ。といっても松本のように試験期間中も入り浸っている奴もいるが。


「ども」

「やあいらっしゃい、待ってたよ」

「ヤマぴん、試験お疲れ〜」


 鍛治工房のいつもの教室へ行くと粟嶋先輩だけでなく、疲れた顔をした正村もいた。まあこの前の試験の時よりはマシだけど。


「帰って寝た方がいいんじゃないのか?」

「ようやく工房に来れたんだから、それはないんやで」


 そんな会話をしてると粟嶋先輩がクスリと笑う。


「彼女ご両親から試験中工房への出入り禁止を言い渡されててね」


 筆記試験の成績の悪さに「実家を離れていることで怠け癖がついた」と、言われたそうな。

 それが原因じゃあないと思うけど。


「鹿納君、まずは手入れが済んだ装備を返すね」


 返されたウエポンケースは鍵はかかっておらず、開けると中にエレホーンソードが入っていた。


 エレホーンソードはカケとかはなかったので、磨かれただけのようだ。まあソードと言いながら刃がないんだけどな。

 ねじれて渦を巻いている羊の角を、まっすぐに伸ばしたようなエレホーンソードはねじれのあるフランベルジュっぽい。まああれは波打っているがねじれてはいないけど。


 エレホーンソードをウエポンケースにしまっていると、粟嶋先輩が奥から一本の刀型武器を持ってきた。


「さて、メインの方だけど」


 差し出された刀型武器は、本来の日本刀に比べかなり太いというか厚みがあった。


「ちょっと素材が良すぎたみたいで、扱いが難しくって見た目だけ日本刀なんだよ。申し訳ない」


 ちょっと情けなさそうに眉を下げる粟嶋先輩。そんな顔も絵になるモデル顔だな、なんて考えてる場合じゃなかった。


 一度コモン星2のリトルドッグの素材を使ったものを、鋳つぶしてレア星1のハウンドドッグの牙と爪を追加したらなかなか大変だったらしい。

 別素材を追加はあまりしたことがなかったそうだ。


 ダンジョン武器というか、鍛治スキルで加工するため素材をたたら製鉄で玉鋼を作りという手順を踏まない。多少焼き入れはするものの製作工程が違うのだ。

 斬れ味をあげようとするならそこは《付与》になるのだそうだ。

 また使う素材によっては《付与》しなくても効果がつく場合がある。


「刀鍛冶なら《切れ味付与》ができるんだけど、今の僕にはそこまでは無理なんだ」


 武器としての力を持たせるために多少太くなったが、出来上がった刀型武器はレアだ。メインは竹割鉈で使った素材は牙と爪なので《切れ味》効果がない素材だった。


「いや、でも刀型が作れるってだけでもすごいです」


 鞘から抜いて軽く素振りをしてみる。ブンッと風切り音を立てる刀型武器は、結構な重量があるようだが、問題なく扱えそうだ。


「ウチが振ったら刀に引っ張られたのに、ヤマぴんかなり身体能力上がってそうやん」

「そうだね、僕も構えるだけで重かったよ。やっぱり探索科は違うね」


 チン、と鞘に戻すと粟嶋先輩に武器を返す。力一杯振ったことで緩みがないかどうかをチェックしたが問題なかったようだ。


「柄巻の皮は総合服飾研究クラブの河中君から譲ってもらったのを使ったよ」

「ルナぴんが柄巻用に加工してくれたんや」


 そういえばそんな話もしたような?

 この前は葉山副部長が剣帯の話をしたけど、佐々木と正村と最初に話した時に鞘とかこしらえの話をしたな。


 いつもは加工されたものを購入していたらしいが、正村が俺が総合服飾研究クラブといろいろやりとりしていたことを聞いたそうだ。そしてちょうど縫製用の針を依頼に来た河中部長と、どちらも俺の渡した素材で俺の武具を作るためということでやりとりしたらしい。


「同じハウンドドッグの皮を使っているから、相性は問題ないよ」


 うん、河中部長に渡した中にハウンドドッグの皮も入れてたな。


「で、本命の刺身包丁を使って作る方なんだけど、ちょっと時間をもらっていいかな」


 本命の制作に入る前に、もう少し習作を重ねたいそうだ。


「いきなりかかって失敗したくないし、エピック素材はそれほど扱ったことがないからね。君に納得がいくものを渡したいんだ」

「わかりました。俺もまずこっちを使って刀型武器の扱いに慣れたいし」


 スクロールがあるからそう時間はかからないけど、せっかくだから粟嶋先輩の納得いくものを作ってほしい。


「もし、追加素材がいるならいってください。今週末は無理だけど来週なら目当ての素材が出るダンジョンに行ってきますよ」

「そこまでは、まずは今ある素材で挑戦するから」

「ええなあ、ウチもはよ作りたいわ」


 正村は三年度になって学校から《加工》のスクロールを受け取っている。無事三年度を終了すれば《鍛治師》を父親からもらえるので、迷わず《加工》を収得したそうだ。

 まだダンジョン鉱石を精錬するくらいしかできないそうだ。


「加工もしたいけど、レベルもあげたいから早よ誕生日きてほしいわ」

「明希緋くん、一般で免許とるのかい?」

「サポート科は学校の鍛錬だけじゃあレベルアップがしにくいよって。免許取れたら境ダンジョンで自分で素材も取ってこれるし、一石二鳥やし」

「そうだね。僕も今年度に入ってからは全く探索していないし、免許取れたら一緒に行ってみるかい」


 粟嶋先輩は春休みに卒業生と探索したっていってたな。

 卒業生は三年度を終了した後輩を連れて探索に行くのが恒例になってるって聞いたが、二人だけで行くのか?

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