第105話 連休初日

 

 

 ゴールデンウイーク初日の五月一日の土曜日。と言っても早いところでは四月二九日から始まってるけど。

 第三迷高ダンジョンで行う宿泊研修という名の二泊三日の探索は、三年度生の探索科とサポート科の希望者で行われる。前半が上クラスで後半が下クラスとサポート科というスケジュールだ。

 探索科の四年度生はアドバイザー兼護衛の探索者をつけて大坂ダンジョンで、五年度生は協会指定のダンジョンで宿泊研修なのでここには来ない。

 サポート科は四年度から実践実習はなくなるから、それぞれの工房やら研究室やらに籠るんだろう。


 俺は朝っぱらから図書館を利用するため、境ダンジョンに行く前に寄り道をしたんだ。マップ購入代というお金を惜しまず、直接境ダンジョンに行けばよかったと後悔している。


 ゴールデンウイーク前半は上クラスが宿泊研修するんで、こいつらはいないかと思った。

 参加するつもりなかったから、要項ちゃんと読まなかったことを後悔している。


「なんだよ、一端の探索者気取りか? そんなでっかいバックパック背負って」

「前橋、こいつウエポンケースなんか持ってるぜ」


 Gクラスの前橋と鈴木に通学路で鉢合わせをしてしまった。

 そういえば学校の設備はゴールデンウィーク中も解放されているって正村が言ってた。宿泊研修に行かなくても訓練とかにくるって、気づけよ俺。


「Hクラスの宿泊研修は後半の四日からだぜ。なに、まさか上クラスに混じろうとか思ってるわけ?」


 ギャハハと、相変わらずな笑い方をする前橋と鈴木。そういえば三年度も始まって一ヶ月が過ぎたら、この二人以外は俺に絡んで来なくなったな。

 上を目指すなら他人に構ってる場合じゃないと自覚したかな。


「いうなよ、ぼっちくんは誰も間違いを指摘してくれるお友達がいないんだからな」


 他の生徒は遠回しに俺たちを避けつつ、学校へ向かう。


「はあ、お前らって……」


 言いかけて、言っても仕方ないと途中でやめた。前橋は言い返せば余計に興奮するタイプだからな。カッカしやすいタイプは探索者に向かないと思うぞ。

 俺はダンジョン外施設に向かうため、前橋たちに背を向けた。


「なんだよ、逃げるのか」

「なんやあんたら、またヤマぴんにちょっかいかけてるんか?」

「君たち、三年度生かい? 他人に構ってる余裕があるなんて羨ましい話だね」


 声をかけてきたのは正村と粟島先輩だった。

 流石にサポート科といえ一年先輩の登場に、バツが悪いのかそそくさと去っていった二人だった。


「おはようございます、粟島先輩、正村も」

「おっは、ヤマぴん。その荷物どないしたん?」

「今日は生狛ダンジョンに行くって言ってなかったかい」


 先輩たちは今日も工房で作業するつもりできたそうだ。正村の宿泊研修は下クラスと同じ後半なので、前半は粟島先輩の助手をするのだそうだ。


 俺は生狛ダンジョンがので、境ダンジョンにいく予定だと話した。

 図書館で境ダンジョンの浅層のマップを手に入れるつもりで寄ったことを話す。


「へえ、鉱石採取かい。だったら僕の持つ十階層までのデータをあげるよ」


 そういって粟嶋先輩はスマホを操作してデータを送信してくれた。


「採掘ポイントが頻発する場所とかのマーキングもしてあるから、学校でダウンロードできるマップより役に立つよ」

「いいんですか?」


 粟嶋先輩はニッコリ微笑む。イケメンの微笑みに周りの女子の視線が集まったよ。


「まあ、お土産は期待するけどね」

「元々渡すつもりだったんで、お土産にならないですよ」

「じゃあ、ウチもお土産期待しとこ」

「正村に渡しても粟島先輩が使うんだろ。意味ないじゃんか」

「それはそれ、これはこれやん」


 そんな軽口を叩き合うのも久々な感じで、おもはゆい感じがした。

 粟嶋先輩が試作品を作るなら五階層以下の炭素鋼あたりでと、余分があれば協会の買取価格で引き取りたいと注文ももらって俺たちは別れた。

 粟嶋先輩のおかげで図書館にはよらずに済んだので、駅に向かって歩き出す。


 電車で移動中にもらったデータを確認できるな。予定より早めに境ダンジョンへつきそうだ。




 境ダンジョンは結構混んでいた。やっぱりゴールデンウィークだし、兼業探索者は稼ぎ時なのだ。


 制覇禁止ダンジョンなので、ゲート前はちゃんとした建物が建てられている。ここは六階建てのオフィスビルっぽい造りだ。

 一階は受付とゲート、買取窓口が並んでいる。更衣室や武具レンタルは二階にある。三階にショップが入っており武具だけじゃなく、探索用グッズや携帯食なども売っている。四階は食堂で五階から上が協会のオフィスってことで一般立ち入り禁止だ。


 二階の武具レンタル窓口でウエポンケースを開けてもらい、更衣室で着替える。

 境ダンジョンは一階層に武具メンテもしてくれる鍛治師が在住する工房が作られている。探索帰りにメンテしてもらえて、メンテのためにウエポンケースの開閉しなくて済むからいいな。

 一階層はそんなに広くないんだが、採掘した鉱石を持ち込んで武具を作ってもらったりもできるので、ここの貸し工房は鍛治師に人気で予約が詰まっているんだとか。


 一応ウエポンケースにはエレホーンソードを入れてきたが、途中でダブルファングに交換するつもりでいる。

 さてと、ここの一階層にでるモンスターはっと。



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 作中は2020年です。ネタ作ったときは数年先だったんですが、連載版書く頃には追い越してしまってました。

 この世界ではコロナはないことになってます。コロナ前にネタつくりましたもので。


 

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