第106話 境ダンジョン浅層①
一階層のゲートを
天井は五メートルほどなので工房は平屋の長屋風だ。朝っぱらから仕事熱心な鍛治師の槌打つ音で結構うるさい。
そしてこの工房長屋を過ぎると、坑道が何本も伸びている。
落盤を防ぐとか本来は天井を支えるために設置するのだが、効果の程は疑わしい
この坑木は「オブジェクトタイプだろうから、取り外しても坑道が崩れることはないのでは?」と試しに取り外した連中がいたらしい。結果は取り外してしばらくすると黒い粒子に変わり、ダンジョン外に持ち出すと変化せず残ったという。そして外された場所の坑木はしばらくしたら復活した。
いや、ただのダンジョンの壁だから。オブジェクトタイプのモンスターじゃないからね。ランプもそうだから。ダンジョンを構成するものは全てリソースによって形成されているので、壊したらリソースに戻るのよ。ダンジョン外に出すとリソースに戻れないだけで。でもそんなこと誰にも言えないけど。
境ダンジョンは
とりあえず五階層以下を目指すため、俺が進んだのは下階段へ続く坑道。何本もある坑道には採掘ポイント好発箇所があるのだが、一階層なんですでに他の探索者がいるだろうと思う。
五階層までの採掘ポイントで取れるものは鉄鉱石とか銅鉱石とかが多く、俺の目当ては炭素鋼なので浅層はとっとと移動する。
同じく下を目指す探索者もいるが、ここでもソロは珍しく二度見された。
ドロップ品が鉱石とか重さのあるものだから、ソロじゃ持てる重さがしれていると思われるのだ。
ていうか、あの探索者ツルハシ持ってるよ。掘る気満々だが戦闘もツルハシでやるのかな。あ、こっちの探索者はシャベルだよ。
でも一階層のモンスター相手には有効か。
粟嶋先輩の資料によると、一階層に出るモンスターはクレイスライム。
スライム種なので工房長屋のトイレにいらっしゃるようだ。
普通のスライムと違うのはこのクレイスライムは見た目は粘土の塊みたいで、坑道で出会うと見逃しがち。
スライムの常で取り込んだものを溶かすのは変わらないのだが、なんと排泄するそうで、普通のスライムトイレと違って放置すると排泄物がすぐ溜まってしまうのだとか。
でもその排泄物というのが〝腐葉土〟らしい。
クレイスライムのドロップ品にも〝腐葉土〟があってこれがなかなか良い土らしい。
……人の排泄物から作られるスライムの排泄物で作られた野菜。
いや昔は肥溜めにためて発酵させたものを肥料にしてたんだし、鑑定で〝腐葉土〟って出るんだから昔の肥料より良いよね、ね?
境ダンジョンは階層を進むと出現モンスターが増えていき、ボス階もフロアがある大坂ダンジョンと同じタイプだ。クレイスライムは五階層まで出現することになる。
その後も五階層までにはクレイパペットやらロックボールやらで剣や槍よりハンマーとかで叩き潰す方が早い。ツルハシやシャベルも有効なのだ。
しばらくは団体の後ろをついていくことになるから、戦闘の機会はなさそうだけど。
二階層に着くといくらかばらけるが、半分は三階層を目指すので列を組んだような移動が続くことになる。
モンスターは先頭のパーティーが倒すので後ろにつくと出番はない。戦闘が済むまで追い越せないのか辛い。
これで鈍臭いパーティーが先頭だったら、ヤジが飛んだりするらしい。
ふむ、二階層はクレイパペット。泥人形というやつだ。
=【コモン・クレイパペット】【魔石50%・鉱石10%・欠片10%・泥炭10%・アイテム10%・なし10%】=
欠片は身体の一部がドロップ品として出るのだが、言ってみれば獣系の毛皮とかの代わりなんだろうけど、泥炭って何?
粟嶋先輩の資料によると、クレイパペットは火に弱く松明などで火をつけるとよく燃えるってことだから、泥人形自体が泥炭でできてるのかも。それと欠片は別枠?
人が多いところで燃やすのは迷惑だから核を潰さないといけない。動物系やゴブリンやオークのような亜人系と違ってパペット系というか魔法生物系は身体のどこかにある核を取り出すか潰すことで倒すことができる。
ビチャッ!
「おい、飛ばすなよ」
「すぐに消えるから問題ないだろう」
先頭のパーティーでハンマー持ちがクレイパペットを核ごと叩き潰したせいで、周りに泥が飛び散った。それが後ろで待機していた探索者にはねたようだ。
モンスターの体液とかは倒した時点で
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関西ではスコップがシャベル呼び、園芸で使う小さいのがスコップ。
日本のJIS規格では〝ショベル〟だそうな。ショベルカーはシャベルカーとは呼ばないな。
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