Ⅱ章

第26話 ダンジョンマスター

 しばらくぶりの更新です。♡や★を貰えての御礼的なお話。

 短編ⅠとⅡの間のエピソードを1日1話ですが5話ほど投稿予定です。

 アルファポリスにも投稿してますが、今回はこっちが先行してます。

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「とりあえず、何をどうすればいいのかな」


『ダンジョンマスターの権能をお受け取りください』


 ダンジョンを踏破した場合、アナウンスはダンジョン中に響き渡る。コアルームに到達した探索者だけでなく、ダンジョン内にいる探索者全員に聞こえるから、聞いたことのある探索者はそこそこいる。

 これは踏破した探索者以外に、ダンジョン内にいる探索者に知らせる必要があるからだと言われている。

 今のアナウンス内容は【迷宮指標】にない。俺が〝運営〟を選択したことによる内容か。


 存続にしろ消失にしろ、ダンジョンの有り様が変化するからだ。

 消失を選択した場合、中にいる探索者は全員外に強制排出される。探索者は強制排出の準備をしなければならないからだ。荷物を回収し損ねると、二度と取り戻せない。

 一応一時間の余裕は与えられる。

 モンスターと戦闘中であれば、アナウンスの時点でモンスターは何処かへ隠れるのか遭遇しなくなる。

 唯一中ボスだけが残るものの、あと少しで中ボスを倒せるってところで強制排出時間になれば無駄になるのだ。


 そして選択肢と選択項目もアナウンスされる。


 今まで〝運営〟なんて選択肢は出たことがない。【迷宮指標】にも載ってない。

 これってDDSが隠してるのか?


『〝運営〟の選択肢は、ダンジョンを単独踏破した場合のみ選べます』


 そういうことか。え、と言うことは今までソロ踏破したものはいないってこと?


『選択肢は初回踏破時のみ提示されます。一度選択されたダンジョンを再び選択し直すことができるのは〝ダンジョンマスターの権能〟を持つものがダンジョンコアまで到達した場合です』


 ソロで踏破したものもいるが、すでに踏破済みで〝存続〟ダンジョンだったってことか。

 踏破済みの〝存続〟ダンジョンは地図や出現モンスターの資料とかが販売されている。未踏破のダンジョンをソロで踏破した奴は……もしかして俺が世界初?


 この情報ってDDSに売ればすごい金額に────『ダンジョンマスターの権能をお受け取りください』

 

「え、あ、さっきも言ってたな。権能ってどうやって受け取るんだ?」


 思考をコアに遮られたので、とりあえずその権能とやらを受け取ることにする。


『コアに接触してください』


 俺は再度、目の前にある黒いボーリングの球のようなコアに手を置いた。


『モフィ・リータイマスター、カノウ・ヤマトを認識しました。ダンジョンマスターの権能を譲渡します』


 そのアナウンスが終わった途端、ダンジョンコアが金色の粒子に変わっていく。


「わっ」


 金色の粒子が渦を巻きながら立ち上ったと思ったら、俺目掛けて突っ込んできた。

 スキルスクロールを開いた時に似た、それのもっと強い何かが俺の中に入ってくる。


「うぐっ」


 頭痛と胸を締め付ける様な苦しさが一気に押し寄せ、アナウンスが頭の中でガンガン響く。


『マスタースキル《念話M》を付与。マスタースキル《倉庫M》を付与。マスタースキル《魔物モンスター辞典M》を付与。マスタースキル《階層転移》を付与。マスタースキル《コア吸収》を付与。マスター────


 アナウンスは俺の頭痛を悪化させ、途中で意識はブラックアウトした。






 ペシペシと頬を柔らかいもので叩かれるというか、撫でられている。

 重いまぶたを持ち上げようと試みるも、身体がだるいしなんか重い。


 ざりっ。


「いって」


 頬をザラついたもので擦られた痛みに、思わず飛び起きた。


「にゃあ」


 起き上がった勢いで、俺の上に乗っていたと思われる白いモフッとした何かが飛び上がり、足元に着地する。


「にゃあ、マスター、お目覚めですかにゃ」


 白いモフっとしたものはお座りすると、方前足を上げてそう聞いてきた。

 そこにいるのは白地に黒の虎縞の子猫。猫に詳しくはないがアメリカンショートヘアかベンガルかという感じの子猫。


 じっと見つめているとコテンと首を傾げる。か、かわいいな。


「よかったですにゃ。地球時間で四十八分五十六秒間意識消失しておりましたにゃ。権能は無事受け取られたようですにゃ」


 権能……


「もしかして、お前コアか?」

「はいですにゃ」


 喋る子猫はダンジョンコアだった。

 

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