第27話 コアとガーディアン

 

【2020.11.04/9:00】一部文章修正しました。

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「はいですにゃ」


 返事をした子猫は俺の足の上にぴょんと乗ってきた。


「ボディがないとマスターに接触できませんので、ガーディアンと融合しましたにゃ」


 子猫が喋っているのに、俺は驚かない。それは権能を譲渡されたことでいろいろ情報が俺の中入ってきたからだ。

 子猫サイズなのは俺がガーディアンダンジョンボスを倒してさほど時間が経っていないためだ。

 ダンジョンボスは雑魚モンスターと存在のあり方が違う。


 倒したダンジョンモンスターが再び湧くことを一律にリポップというが、雑魚モンスターは毎回別個体のモンスターが湧く。

 だがダンジョンコアのガーディアンたるダンジョンボスは同個体だ。ガーデイアンの個体情報はダンジョンコアに保存されており、身体を構成するリソースが満ちるとリポップできる。このリソースが満ちるまでの時間がボスのリポップまでの時間だ。


 そのことを知ってるやつはいないがな。

 ダンジョンボスを倒してもコアルームへ行かない場合もある。

 それはダンジョンボスを周回してドロップを稼ぐためだ。だがリポップしたダンジョンボスが同個体か別個体かなんてわからないし確かめようもない。


 そして今目の前の子猫だが、溜まったリソースだけで身体を作ったため、子猫状態なんだ。

 完全体としてリポップするには時間が全然足らない。緊急事態としてリソースをかき集めるには……マスター権限が俺に移っているためできなかったのだ。


「当分そのサイズでいてくれ」

「わかりましたにゃ」


 ……なんだろう、このあざとい感じ。


「その〝にゃ〟っていう語尾、わざとだろう」

「にゃにゃっ!」


 なんですとっと言わんばかりのポーズをとる子猫。


「おかしいです。日本という地の人間は猫形態で〝にゃ〟をつければ〝萌える〟と……あの情報は間違いでしたか」

「何ぶつぶつ言ってる。てかそれどこ情報だよ。ダンジョンコアはどこからそんな情報を得てるんだ!」


 思わず突っ込んでしまった。


「まあいい、今後のことだ」


 俺は怪しい子猫と、今後のダンジョン経営について話し合うことになった。

 結果は次のとおりだ。



 1、しばらくは入り口を封鎖する。竹林の下の入口ゲートは元の崖に戻し、家族にはダンジョンを踏破して消失したと報告する。

 そのほうが協会に報告とかいろいろ手間が省けるからな。リソースについてはおいおい考える。なんせ明日から新学期だからここを離れなければならないのだ。


 2、ダンジョンを開放する以外の方法でリソースの入手する。

 ダンジョンは中で生物が活動することでリソースを得る。それはモンスターでもいいが、人間が中に入って活動してくれる方がより多く得られる。

 だがダンジョンマスターには、他のダンジョンのコアを吸収することで莫大なリソースを得ることができるのだ。


 放課後や休日に何処かのダンジョンに潜ってこれをやることにする。

 学校にしれたらうるさいが、知られずに行動できそうなスキルがダンジョンマスターにはあるのだ。


 そして残念なことが一つ。


「ガーディアンはコアを守護しますにゃ。コアはマスターと同化しましたにゃ。ガーディアンの仕事はマスターの護衛ですからついていきますにゃ」

「お前、その語尾続けるのか……」


 モンスターはスタンピードでも起こさない限りダンジョン外に出ることはないのだが、ガーディアンだけは別だ。

 ガーディアンはコアから遠く離れられないようになっているが、コアを持つ俺が外に出ることでついて出ることができるのだ。


「外に出たら喋るなよ」

「大丈夫ですにゃ。私の声はマスターにしか聞こえませんにゃ」

「だったら、その語尾イランだろうが」

「え、可愛くないですかにゃ?」


 キュルンとした目で俺を見上げるコア……じゃなくてガーディアン。

 こいつ狙ってやってやがるな。


「とりあえず出るぞ。今日中に寮に戻らないと」

「わかりましたにゃ。お供しますにゃ」


 俺はマスタースキル《階層転移》で一階層の入り口まで転移した。このスキルダンジョン内の階段の近くに転移できる超便利スキルだ。五階層ごとの転移オーブと使用感は変わらず、誰かに見られたとしても一階層なら【転移オーブ】をしようしたように見えるだろう。


 そして俺はダンジョンの外に出た。


 腕に子猫を抱えたまま。



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