第137話 放課後の色々


 翌日の土曜日も平和に一日の授業が終わった。

 粟嶋先輩からエレホーンソードはまだだけどマチェットの研ぎが終わったとのことで受け取った。

 内緒の探索はダブルファングを使っているが、明日の午後の探索はマチェットだけになりそうだ。


 今日は授業が終わったら図書室で調べ物をすることにした。ダンジョン内での活動は明日まで自粛だが、外部施設の図書室は範囲外なので人がいるかなと思ったが、さほどでもなかった。

 まあ三年度生の宿泊研修参加者以外は普段通りだし。

 図書室に着くとあたりを見回したが、知り合いはいなかった。彼女の姿も見かけないので教室で勉強してるのか。


 パソコンを使用して近隣のダンジョン情報を検索するのだが、やはり大坂府内に消失推奨ダンジョンはなかった。そこで検索範囲を、近畿二府四県へ拡げてみたらいくつか見つかった。

 那良県には生狛ダンジョン以外にもう一つ、消失推奨ダンジョンがあったのだが、どうやら攻略されてしまったようだ。一覧から消えている。


 現在大坂と那良以外では俵庫県に一箇所、倞都府に三箇所、滋駕県に二箇所だ。若山県には精査中のダンジョンが二箇所あり、今月末か来月頭には方針決定するようだ。

 

 消失推奨が決定するのは、そのダンジョンが有益かどうかの調査が済んでからのことだから、現在調査中のものもあるのだ。

 調査を専門に請け負うクランもあるが、ひとつのダンジョンの調査は数週間から月単位でかかることもあるので、結果がいつ頃出るかは読めない。進捗状況などの詳しい情報まではここには載らないから。調べる方法はあるけど、今はそこまでするつもりはない。


 あとは思ったほど採算が取れなかったダンジョンの場合、方針変更されることもあるので、ダンジョンが新たに増えていなくとも、消失推奨ダンジョンだ増えるときもあるし、その逆もある。


 明日の午後からでも行けそうなところがないか探したが、どの場所も日帰りは無理っぽい。一泊二日で行くとして考えたら倞都府か滋駕県のダンジョンかな。距離的にこのどちらかがよさそうか。

 二つのダンジョンについて調べていく。


 滋駕県の方は動物系のモンスターが出るフィールドタイプで、大坂ダンジョンと同じでよくあるタイプだ。

 倞都府の方は建築物タイプだ。有名なのは各階層が城の中のような廊下と部屋で構成されている。ここは日本のお城風か。

 こっちのタイプは扉を開けると仕掛けが発動するトラップのあるタイプが多いが、宝箱やドロップにアイテム系が多いことで人気がある。

 親父世代はこういう建築物タイプをお化け屋敷タイプと呼んでいたな。

 一度こういうタイプのダンジョンも経験したいとは思うが、現在最高到達階は二十六階層で、三十階層以上あると思われる。

 制覇に時間がかかりそうだな。だけどそのおかげでまだ制覇されていないとも言える。


 滋駕県の方は最近調査が終わって、消失推奨になったようだが、こちらも最終到達階層は二十一階層で、それ以降の調査は打ち切られている。


 裏山ダンジョンを大きくするなら、より多くのリソースが回収できる方がいいんだが、時間がかかりすぎたら、他の探索者に先に制覇されてしまう可能性もあり意味が無くなってしまう。

 週末と放課後の短い時間で探索する俺と、数日から週単位で長期探索する探索者パーティーを比べたら、どちらが早いかなんて比べるまでもないと思う。


 今月末は中間考査と体力測定があるから、探索に費やせる時間も少なくなるしな。


 調べ物は1時間ほどで終え、途中買い物を済ませてアパートに帰ると、今日も魔石集めのために知良浜ダンジョンへ行く予定だ。


 夕食までは、七階層と八階層をタマとポチを連れて回った。

 二時間ほどの探索でジャンピングスパイダーとニードルビーの魔石を必要数集めることができた。跳蜘蛛布と糸束も一個づつドロップしたのだが、河中部長に追加でわたして、ショールもお願いしてもいいかな。


 夕食のためマイボス部屋に戻ったとき、タマに改装の相談をする。


「ジャンピングスパイダーとニードルビーは八階層に配置するか」

「八階層は洞窟型のままですが、変更しますかにゃ」


 タマの言葉にしばし考えるが、モンスターは環境によって生存率が変わるというものではない。別に知良浜と同じにする必要はないのだ。

 環境適応で能力にバフデバフ的な効果が出るタイプのモンスターもいる。

 この二種については機動力において広い空間の方が有利ではある。俺が倒すことを考えて逃げられやすい知良浜のようなフィールドタイプは今はなしだ。

 九階層は平原タイプに造り替えたが、八階層はそのままでいいだろう。特に飛行型のニードルビーは飛びまわれる空間があると倒し辛いからな。


 ドロップ率はジャンピングスパイダーは魔石20%、大顎10%、アイテム70%にした。

 跳蜘蛛布も糸束も分類はアイテムだった。

 ニードルビーの花粉団子も可食部ではなくアイテムなんだ。

 アイテムはそのモンスターしか落とさない固有のものと、スクロールやポーションのように関係なく落とすものがあるが区別はできなかった。


 夕食後は一時間ほど十二から十四階層を探索しリザードとロックキャタピラーの魔石を集める。こっちはレアモンスターなのでジャンピングスパイダーより数が必要になるので、一時間じゃあ全然集まらない。


 探索を終えると温泉で汗を流す。

 ペット用シャンプーも購入したのでタマとポチを洗ってやった。


 ダンジョンの中の昼夜設定は、外とリンクさせることもできるし、決まった時間で固定することもできる。

 今日は夕暮れ設定にしてみた。任意設定できるって便利だよな。

 暮れゆく空を、でもいつまで経っても暮れることのない空だけど、湯に浸かって眺めていると時間を忘れてしまいそうだ。

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