第44話 生狛ダンジョン浅層①


 一応リュックに装備や探索用の道具をいっぱい詰め込み、生狛ケーブルに乗っている。時間的に空いててよかった。午後の中途半端な時間なせいか、遊園地に行く人もダンジョンに行く人もいない。


 生狛ダンジョンは消失推奨ダンジョンなので協会施設は簡易設備ばかりだ。

 総合受付のあるコンテナハウスへと入っていく。


「帰還予定は4月12日で二泊三日の予定ですか?」

「途中で出てくるかもです。連続してかどうかは様子を見ながら」


 俺の言葉に入ダンジョン管理担当の人が、少しほっとした顔をした。

 迷路型ダンジョンをソロ探索、しかも探索者免許をとって1週間の新人にはダンジョン内泊は危険だと思ったのだろう。

 寝るときは裏山ダンジョンモフィ=リータイに転移するけどな。


「ここには宿泊施設はありませんし、ケーブルの最終時刻は二十時九分ですから注意してくださいね」


 一時間に1〜2本しかないからな。一応遊園地の駐車場の一角にテントを貼ることもできるが、有料だ。


 キャンプ道具が入っている風のリュックを、背負いなおしてライセンスを改札かざすと、ピロンとアラーム音がなり、改札が開く。


 入り口から数メートルも進むとダンジョンの壁、生狛ダンジョンの壁は土を塗り固めたような感じだが、光苔はごくわずかで、灯りのオブジェクトもなく、ほぼ真っ暗だった。


 俺は《暗視》があるから全く問題ない。


「タマ、出て来ていいぞ。他の探索者は灯りを持ってるだろうから、近づくとわかるだろう」

「わかりましたにゃ」


 タマも暗視能力があるので、これくらいの暗闇は全く問題ない。


「じゃあ一階層のマップは大体頭に入っているから、下り階段目指すぞ」

「モンスターが出たら戦っていいですかにゃ」

「うーん、できれば俺に倒させて」

「わかりましたにゃ。ピンチの時はお助けしますにゃ」


 背負っている大きなリュックには昨日購入したマイボス部屋に持っていく様々なものを詰めてある。これを《倉庫》にしまい、カモフラージュ用の風船を詰めたリュックと交換する。

 一応他の探索者と出会った時のためだ。


「じゃあ行くぞ」

「はいにゃ」


 生狛ダンジョンは一階層に脅威度2のリトルドッグが出る。一階層に脅威度2のモンスターが出ることで、ここのダンジョンランクは裏山ダンジョンより上になる。

 リトルと言いながら、中型犬くらいの大きさの茶色の犬型モンスターが、少し先にいる。

 暗闇だが、鼻が効くので俺たちの接近を察知したようだ。


=【コモン・リトルドッグ】【魔石70%・皮10%・爪5%・牙5%・アイテム5%・なし5%】=


 刺身包丁を手に走りながら《魔物鑑定M》を使ってみた。

 前は脅威度とモンスター名、後ろがドロップの割合だ。アイテムドロップ率5%は低いな、と接敵即斬でリトルドッグの直前で右にステップしつつ首に刺身包丁を振り下ろすと、胴とさよならしつつ黒い粒子に変わる。

 そしてカランと魔石が落ちた。


「70%だしな。なしの5%を引くとドロップなしだからまだマシか」


 拾った魔石をジャンピングワラビーの腹袋にしまい、先へ進む。


 下り階段に到着するまでに十二匹のリトルドッグに遭遇した。魔石が十個皮が一枚爪が一個。ちょっと引きが悪いかも。


 一時間かからず二階層へ降りた。

 二階層も全く同じ雰囲気だが、ここからは罠がある。

 二階層に多い罠はスリップアンドスネアだ。

 足元にゲル状の物質が湧いていて、それを踏むと転倒するスリップ。

 足元にわっか状の紐があり、足を引っ掛けて転倒するスネア。

 どちらも転倒するだけの罠だが、戦闘中とかにハマると危険である。転倒時の打ち所が悪ければ命も……まあ、スリップアンドスネアにかかって死んだなんて絶対嫌だし、末代までの恥である。


 よくよく観察すれば発見できるのだが、灯りのない迷路型で自分たちがどのような光源を用意できるかによって違うし、足元にばかり注意していられる場所でもない。

 俺の場合。


「そこにスネアがありますにゃ」


 視線の低いタマが先に発見してくれるので、全部避けることができる。

 このタイプの罠は位置固定なので、《マッピング》にマーキングされるから、次からはタマがいなくとも大丈夫だ。




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 生狛ダンジョン探索前で二章を終わらせるつもりが、話の区切りが悪くてもうちょっと続きます。


 

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