第65話 五階層ボス再び

 

 さて、ここで問題が一つ。

 スタティックエレシープに、エレホーンソードの攻撃が効きにくかったりした。


「同じ属性には効きが悪くなりますにゃ」


「メ”エ”エ”エエェェ」


 スタティックエレシープは雷属性。エレホーンソードも実は雷属性だった。(エレってついてるし)

 攻撃自体に雷属性が付いているような気はしてなかった。実際雷属性の攻撃ではなく吸収って感じかな。

 突っ込んできたスタティックエレシープの身体にエレホーンソードで突きを繰り出すもパリパリっと電気が逆流してきた。それは剣に吸収されたので俺には効果が及ばなかったが、どうにも突き攻撃が弾かれたというか向こうにも効果がない。



「お手伝いしますにゃ」


 巨大サイズで控えて様子を見ていたタマが、前回同様「ギャワオオォォ」と吠えるとスタン効果が発生し、スタティックエレシープが固まった。

 すかさず刺身包丁を下たから喉めがけて振り上げると、中程まで食い込み止まってしまった。

 振り抜くのではなく、そのまま引き抜きながら斬り上げることでスタティックエレシープの首を三分の二まで切り裂くことに成功する。


 スタンが切れた頃にはもう首を動かすことはできない。


 止めとばかりにタマ(巨大vr)の猫パンチが頭に命中し、胴体と泣き別れて飛んでいった。

 横倒しに倒れつつ黒い粒子に変わっていくスタティックエレシープ。

 十分以上一人で戦っていたが、タマが参戦してからは一分とかからず終了した。


「くそー、タマなしじゃあまだ無理なのか」

「タマなし……」

「いや、そこだけ繰り返すなよ」


 そんな馬鹿なやりとりをしていると、ドロップ品が現れた。


=【エピック・魔石】《スタティックエレシープの魔石》雷属性の魔石=

=【レア・素材】《スタティックエレシープの角》素材として使うことで雷属性を持つことがある=


「今回のドロップはイマイチか。でもこの角は高く売れそうだな」


 魔石を腹袋にしまい、角をしみじみ眺めてみた。こうぐるっとねじれているというか撒いているというか、羊のそういう角だけど、表面の感じはエレホーンソードと同じ質感だ。まっすぐか巻いているかの違いだがこれを加工してまっすぐ伸ばすことはできないと思うが。

 突然タマが影に隠れた。

 中ボス戦闘中だったのでサーチも使っていなかったが、入り口から声が聞こえてきたた。


「くっそう、間に合わなかったかよ」


 入ってきたのは三人組の探索者。一階層で脇をすり抜けたあの三人組だ。


「だから雑魚は放置しようって言ったんだよ」

「おい、あれ」

「え、マジでソロなの?」


 三人は周りに仲間が倒れているのかとボス部屋を見回すが、当然俺以外誰もいない。


「へースッゲーじゃん。あれ、君一階層で俺らを追い越してったよね」


 向こうも俺を覚えていたようだ。


 魔石は腹袋に入れていたので、手には角のみ。そして腰にはエレホーンソード。


「もしかして、武器ドロップ? うっわー羨ましー」


 何かやばい感じがする。


「俺、荷物置いてきてるんで、失礼します」


 それだけ言って入り口の方へ駆け出す。彼らの横をすり抜ける必要があるので、足早に抜けた。


 ボス戦前に荷物を置いていくことはよくあることだが、ボス部屋前には何もなかったことを彼らは見ているはず。ということは四階層のどこかに隠しているということになるので、四階層に向かうしかないのだ。


「おい、なんか怪しまれてるぜ」

「お前が悪人顔だからじゃね」


 そんな会話が聞こえてきた。俺が疑い深すぎたのか。若干前橋や三田のせいで人間不信気味かもしれない。四階層を少し戻り、誰もいないことを確認してマイボス部屋に転移した。


「はー、なんかボス戦より疲れた」


 まだ昼を回って少しだけど、ちょっと休憩しよう。


「お疲れ様ですにゃ」


 子猫サイズで現れたタマがねぎらいの言葉をかけてくる。なんだか無性にもふもふしたくなってきた。


「タマ、ちょっとだけ、ちょっとだけだから」

「なんですかにゃ、その怪しい手つきは。ほんとにちょっとだけですにゃ」


 許可をもらってもふろうとしたら、突然大きくなった。


「うおっ」

「こっちの方がもふりがいがありますにゃ」


 言われてみればそうかもしれない。俺は寝転がる牛サイズのタマのお腹に顔を埋めた。


「……もふもふだけど、なんか獣臭い」

「失礼にゃ」


 今度子猫のうちに洗ってやろう。猫用シャンプー買ってこようかな。



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 今年も残り二十四時間となりました。2020年はいろいろあり過ぎた年でした。来年もよろしくお願いします。

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