第66話 精算

 新年明けましておめでとうおめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。元旦0時の予約投稿です。

 作中は四月ですが。

┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼  

 

 いつの間にか寝てしまっていたようで、気付けば三時を回っていた。


 一度八階層に転移して、近くにあの探索者がいないか確認したが、彼らは七階層にいた。

 三時間で七階層ってことは、彼らは六階層の探索経験があるんだろう。

 六階層以降は、下り階段までのコースはいくつもあるから、すれ違わずに下に降りたとすることに問題はない。

 八階層には他の探索者がいなかったので、そのまま十階層を目指して進んだ。

 リトルシリーズの討伐が全くないので、八、九階層でいくらか倒してドロップ品を集めていく。


 六時に十階層についたとき、ボス部屋の扉は開いていた。俺以外にもだれかここまできたのかな。前回から六日経ってるから流石にリポップしているだろう。


 今日はこれで清算をするかと、ドロップ品をまとめることにして、マイボス部屋へ転移した。


 放課後の探索でドロップした魔石は全部リソースにしてしまったから、残していた素材を水増しして今日の分に追加する。裏山ダンジョンのスキップゴートとビープシープの魔石も足しておこう。


 前回は七階層まで行ったことにしてスキップゴートまでのドロップまでしか売らなかったからな。

 今回はライズアップシープとビープシープのドロップも売りに出すから、バックパックに入らない分の毛と皮を手荷物としてまとめよう。

 

 夕食も済ませると八時を回っていた。ケーブルカーの最終が出てしまっているから日帰り探索者はとっくに帰っているかな。いや普通は車とかでくるのか。

 免許欲しいけど教習所に通う時間なんてないからな。


 十階層に探索者の姿はなかったから、十階層から帰ってきたってことにしよう。

 一階層の入り口に転移して改札を潜る。この時間は探索者だけじゃなく、協会職員も少ないな。


「買取お願いします」

「はい、ではこちらにお願いします」


 まず手荷物の皮と毛束を、その次にバックパックの中から魔石と爪、牙、角と出していく。

 その中にスタティックエレシープの角が入っていたのを見た職員が


「五階層ボスを倒されたんですか」

「はい、それで剣もドロップしたんですが」


 通常は窓口が別なのだが、夜間対応の時は人が少ないので一括対応してくれる。


「運搬用ケースをレンタルされますか、それとも購入されます?」

「また潜るから明日の帰りに購入するので、用意だけしてもらっていいですか」

「え、今からまた入るんですか?」


 係の人に驚かれたが、生狛ダンジョンここは昼夜関係のない、常に真っ暗なダンジョンだ。夜だから戦闘しにくいってことはない。


「はい、学校が始まるんで週末しか潜れないし、できるだけ稼ぎたいんです」

「……無理はしないでくださいね」

「ありがとう」


 俺みたいなガキが無理な探索をして怪我をするのは良くあることだ。

 職員としては注意はするが、止めはしない。職員の立ち位置では止めてはいけないのだ。人としての意見は別であっても。仕事中は〝協会職員〟なのだから。

 それが己の意思であれば責任は探索者本人にあるのだから。

 十八歳は選挙権もあるなのだから。


 査定に時間がかかるということで、明日受け取りに来ることにして、俺は改札を潜った。


 昼寝をしたようなものなので、まだ気力は十分ある。一、二階層でちょっとだけ戦闘をして、十三階層へ転移した。


 十三階層に新たに出たモンスターはカシミールリンディアだった。


 なんていうか毛がボーボーのトナカイ である。


=【レア・カシミールリンディア】【魔石35%・可食部20%・毛10%・皮10%・角10%。アイテム10%・なし5%】=


 ドロップに可食部があった。トナカイの肉ってフィンランドでは普通に食べるんだよね。トナカイって橇を挽く赤鼻しかイメージないけど、角がでかいな。

 鹿だってジビエブームで最近よく聞くし。まあうちは裏山に出るから爺ちゃんが狩猟免許持ってて俺が小学生くらいの時まで、鹿肉とか猪肉は食卓に並んでた。

 ここ数年は「もう歳だから」と昔の狩猟仲間にお任せしている。本当は時間があったら釣りのほうに行きたいだけだと、俺は知っている。


 羊肉があれだけ美味いんだからトナカイ肉にも期待大だな。


「じゅるり」

「食べる気満々だな、タマは」

「この身体になって味も重要なファクターだと認識しましたにゃ」


 コアの時は魔素として取り込んでたが、口で味わったことってなかったからか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る