第55話 刺身包丁代には足らない
売りに回すドロップ品を選別する。
五階層で他の探索者に出会っているし、七階層までのドロップは売ってもおかしくないだろう。
本当は九階層のビープシープまで含めたかったが、リトルシリーズが結構出て土日で総討伐数は九十六体。中ボスとライズアップシープとビープシープを除いたら七十七体か。
ソロの一日半の討伐数としてはかなり多い方になる。
九階層のビープシープも裏山ダンジョンのドロップがあるから入れたいところだが、流石になぁ。
ま、いいか。次はいつ生狛に正式入ダンできるかわからないけど、来れなかったら魔石はリソースに変えればいいから倉庫に入れておこう。
ポーション類は温存するとして問題はスクロールだな。
〈スラッシュ〉はコモン星4だし、オークションに出せばそこそこな金額で売れそうな気がする。
〈裁縫〉はレア星3だからさらに高額落札の可能性があるが、一度の探索で二つ出すのはやめておこう。
〈魔力強化〉はレア星5だが、これはいつか取得するかもで保存だな。
そんな感じでドロップ品をリュックに詰めていく。魔石や爪牙はさほど幅をとらないのだが、今回皮の他に毛もあるからかなり嵩張る。
皮はリトルドッグ1、リトルリカオン2、リトルウルフ4。
毛がヘッドバットゴート3、スキップゴート1に手持ちのスキップゴートの毛を4個ほど追加するとリュックがパンパンになった。
スキップゴートの角は別の袋に入れて手荷物にするか。
ライズアップシープとビープシープの毛は皮より高額で買い取られるから、早めに売りたいな。
来週末にもう一度来ることにして、その時は〝十階層まで行きました〟てことで売っ払おう。
エレホーンソードを外し、レンタルしていた剣を倉庫から取り出して装備すると、リュックを背負う。
「タマ、いくぞ」
「承知しましたにゃ」
タマは俺の影に沈む。これでタマはアパートに帰るまでは出てこれない。
「んじゃ、帰るか」
転移を使って生狛ダンジョンの一階層入り口に転移する。
やはり受付では驚かれた。レンタルの武器でも七階層は無謀のようだ。
また七階層以降に挑むならもう少し良い武器をレンタルするか、購入を考えた方が良いとアドバイスを受けた。
次あたり五階層ボス戦して武器ドロップしたことにするかな。
買取品を査定してもらっている間に、スクロールをオークションに出す手続きを頼んだ。
「確認しないで出品するんですか?」
あ、鑑定してもらうの忘れてた。普通は鑑定してもらって習得するかどうか確認するのに。
「あ、借金があるんで先に稼がないといけないんだ」
「そうですか。今回は受け付けますが、無理な探索はやめてくださいね」
怪我人や死人が出れば、それでなくとも人気薄な生狛ダンジョンから探索者が減ってしまうことを心配してるのだろう。
無謀な探索者を諫めるのも仕事のうちだけどな。
今回はスキップゴートの毛が一つなんと三万円もするということで合計十八万千八百円になった。税金と剣のレンタル代を引かれて十五万四千百七十円。交通費や食費にいくらかかかっているが、三日間の収入として十七万円は高額ではないだろうか。しかしこれでも爺ちゃんの包丁代に届かない。どんだけ高級な包丁だったんだよ。
帰りの電車の中で、今後の予定を考える。
授業が終わったら学校から生狛ダンジョンの十一階層へ転移して、毎日ちょっとずつ攻略を進めよう。
多分よくて一日二時間ほどしか探索できないだろうけど、レベルアップとドロップ品をリソース補充に当てるにはいいだろう。
問題はどこから転移するかだな。
ああ、そういえば週明け面接があるんだった。うっとおしいなあ。
せっかく気分良くアパートに向かっていたのだが、嫌なことを思い出してしまった。
けれど考えてみれば、これであのウザ面子から距離をおけると思えば、少しは明るくなれる。
そう思って気分が浮上し、足並み軽くコンビニの前を通り過ぎてから、夕食を買い忘れたことに気付き慌てて引っ返した。
────Ⅱ章 終わり────
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延長16話でⅡ章終了です。すでに短編Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの内容入り混じりでございます。
若干短編と設定変えたつもりが変わってなかったり、勘違いしてたりでちょっと前から見直しと修正をしております。告知なく一部設定変えてるところもあります。
Ⅲ章はただいま執筆中なのでしばらくお待ちください。年内には投稿できるかと……たぶん……
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