第111話 固有ドロップ
その塊はダンジョン内の謎明かりを反射して、鈍い金色に輝いた。
=【レア・アイテム】《黄銅》銅60%亜鉛40%の黄銅の鉱石=
「……黄銅って、五円玉とか家具の金具とかに使われる真鍮だよな」
ややこしい色して、ちょっと金かなって期待したじゃねえか。
いや、この辺りの階層で金は出ないってわかってた。わかってたけど。
確か粟嶋先輩の資料に買取価格一覧があった。
俺はスマホを取り出し電源を入れる。ダンジョン内は圏外なので使わない時は切っておかないと、バッテリーの減りが早いんだ。
「キロ五百円から八百円くらいか。価格変動があるみたいだな。一応掘るか」
途中ホームセンターで購入した金槌を取り出す。これは片側が釘抜きになっているタイプで、釘抜きの方をピッケルの代わりに使える。
十分ほどそのポイントをガツガツ掘ってみた。
結果、真鍮の塊がいくつか取れた。
採掘は初めてで、学校でも話に聞くだけで映像とかまではなかったから、こんな感じとは思っていなかった。
なんだろうかこれ。掘り起こすまではどうみてもダンジョンの壁なんだが、ポロリととれた部分は鉱石なのだ。
それもポイントを外れると、金槌じゃあびくともしない。
しかし真鍮って合金なのにこうして取れるのが不思議なダンジョンだよな。
「これくらいでいいか」
大小六個くらいの黄銅鉱石が取れた。重さにして十キロ……まではないか。
これもホームセンターで購入した土嚢袋。五十枚入りで七百円という価格が安いのか高いのかはよくわからないが、色々使えそうなので買ってみた。
そして袋詰めしていると、一つ色の違うものがあった。
「なんだ?」
=【レア・アイテム】《赤銅》銅95%金5%の赤銅の鉱石=
「……赤銅が混じってる」
赤銅の買取価格は黄銅よりもよかった。一応別の土嚢袋に詰めて、もうちょっと採掘を続けてみることにした。
時間にして三十分ほど費やしたが、徐々に石とかも混じりだしたあたりでハッとした。
「いや、銅が目的じゃないんだよ」
「終わりですかワン」
初めての採掘ポイントで、思わず熱中してしまったが俺の欲しいのは銅じゃない。
まあこれはダンジョンで探索と採掘しましたと言って売ればいいか。
本当、倉庫がなかったら運べないな、こんなの。
石以外は袋詰めして倉庫に放り込んで。探索を続ける。ポチには悪いがまた隠れてもらおう。
その後八階層へ降り、ロックゴーレムに遭遇した。
身長二メートルはある関取体型のモンスターは、ぶっとい腕を振り回して襲いかかってくる。
こんなのに殴られたら骨も折れるわな。
幸い重鈍で素早くはないため、避けるのは難しくはなかった。
エレホーンソードとマチェットで関節部を狙って、パペットと同じ戦法で削っていく。
流石に硬いがエレホーンソードの〈ラッシュ〉で手足をもいでいけばなんとかなった。
まだ広い場所で遭遇したのもよかった。これが狭い場所だと逃げる場所がないから。
黒い霧に変わったストーンゴーレムは、黒い塊を残していった。
「あー、これって」
=【レア・アイテム】《コークス》一キログラムのコークス=
ストーンゴーレムの鑑定をしたときにあったんだよな。コークスって。
ドロップ率は15%だったが。
=【レア・ストーンゴーレム】【魔石40%・鉱石15%・欠片15%・コークス15%・アイテム10%・なし5%】=
なんでロックゴーレムからコークスドロップするのかなんて、クレイゴーレムから石炭ドロップするくらいなんだから、ここはこういうモンスター設定なんだろう。
俺はモンスターのドロップ率は変更できるが、モンスターのドロップ候補にないものは設定できない。
ここのモンスターにはコークスやら石炭やらが候補にあるってことだ。
もしくはもっとダンジョンマスターランクが上がれば設定できるようになるのか。
今の権能では〝ランクアップで使えるようになる能力〟はわからないのだ。
流れ込んでくるのは〝使える能力〟の情報。当然タマとポチも自分のランク以上のことは知らない。
「しっかし、ドロップ率15%のコークスかあ。最近キャンプとかグランピングとか流行ってるから、鍛治以外にも需要があるんだよな」
市販されているものと比べ、ダンジョンものは燃費というか燃焼時間が段違いに良いらしい。
新しい土嚢袋を取り出して放り込む。口の紐をキュッと絞ったら倉庫にしまい探索を続行する。
少し先にまたロックゴーレムを見つけた。できれば今度はドロップ率15%じゃなくていいので、40%の魔石あたりでお願いしたい。
今回魔石のドロップが少なめだ。あれ? ドロップ率40〜50%の魔石じゃなくって10〜15%の固有ドロップ引いてるってことは運がいいのか?
こんなところで運を使い切りたくないなあ。
心の中でせめて『運がいいならアイテムでお願いします』と運の神様にお願いしながら、ロックゴーレムに向かって走り出す。
運の神様は極端な性格かもしれない。
5%のハズレでドロップは何もなかったよ。
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お知らせ
ただいま四月に刊行予定の他作品の改稿作業に追われております。
その作品ですが、今月末と来月末にコミック2巻と3巻が連続刊行される予定です。(すでに私の原作とは離れた内容ですけど)
小説の方は四月末に7巻刊行予定で、ただいま絶賛修羅場中です。
万が一112話を14日に更新できなかったら「必死に改稿作業やってるんだな」と、思ってくださいませ。( ; ; )
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