第83話 午後の探索①
五階層の中ボス部屋の前に行くと先客がいた。普通に階段を降りてきてよかった。
男四人組と男二女三の五人組の二パーティーが離れて休憩をとっていた。
俺も二パーティーとは離れたところにバックパックを下ろした。さっさと食事を済ませようとバックパックから出すフリをしてコンビニおにぎりとペットボトルのお茶を《倉庫》から出す。
壁を背に座り込んで昼食をとっていると視線を感じた。
なんだかどちらのパーティーも、ヒソヒソと会話しながらちらちらこっちを見てるが、そんなにソロ探索者が珍しいのか?
うん、珍しいな。大坂ダンジョンの低層ではソロは珍しくはないが、ここ生狛ダンジョンのようにトラップの多いダンジョンをソロで探索するのは珍しかった。
一階層の非致死の軽い罠でも、かかってしまったときにモンスターが現れれば危険なのだ。そのためフォローできるよう比較的多めの人数で挑むのが罠の多いダンジョン探索のセオリーだからな。
学校の授業でも習うし、去年試験に出たな。
ここ生狛ダンジョンの低階層の罠は、引っかかっても怪我をすることも稀なものなのでソロでも行けそうだとは思うのだが。
『マスターは罠の位置を感知できるので、そう思うのではないですかにゃ』
確か購入できる地図には罠の位置まで記入されてなかったっけ?
俺は学校の端末からダウンロードしてるから、そういうのは描かれて無いただの地図だけど。
あ、地図を購入してるとは限らないか。
視線を無視して食事を終わるとさっさと下に向かうことにした。
俺が戻るのではなく、下に進むことに若干驚愕されたが、何かいうような者はいなかった。
六階層を少し進んだところでタマが声をかけてきた。
「そろそろご一緒しても良いですかにゃ」
ずっと影に潜っていたタマがじれてきたようだ。
今のところ六階層で他の探索者に出会ってないけど。
「サーチを使わずにできるだけ進みたいから、混み具合によるな」
「マスターがスキルを使わなくとも、自分でわかりますにゃ」
ああ、野生というかモンスターの感というのか、俺のサーチよりタマの気配察知能力の方が範囲が広いから。
「人がきたら隠れてくれよ」
「了解ですにゃ」
影からしゅるりと出てくると、子猫サイズのまま爪でカリカリと壁を掻く。準備運動ならぬ準備爪とぎか?
「じゃあ行くぞ」
「はいですにゃ」
俺の少し前を進んでいくタマ。若干嬉しそうに跳ねている気がするのだが。
「午前中の分を取り返しますにゃ」
タマがやる気マックスである。午前中控えさせていたから、やむなしと前を行かせた。
六階層を進み七階層へ下り、午後の探索も一時間ほど経過した頃、流石にタマに物申した。
「俺にももうちょっと回して」
鬱憤が溜まっていたのか、先行してモンスターを鎧袖一触で屠って行く。
サーチを使っていない俺とじゃ、タマの方がモンスターを先に見つけるのだ。
そして成長というかレベルアップして、俺から離れられる距離が伸びた。俺がタマに追いついたときにはモンスターは黒い粒子になっている。
「仕方ないですにゃ」
とか言ったが、結局八階層への下り階段を見つけるまで、八割がたタマが倒した。せっかく《サーチ》スキルなしの縛りで鍛えようと思っているのに、俺が見つけるより先に倒してしまったら、意味ないじゃんか。
その後八階層、九階層と未踏破エリアのマップを埋めつつ進んだ。
そして九階層の未踏破エリアで宝箱を二つ発見した。
罠ダンジョンだからというわけじゃないだろうけど、宝箱も罠付きで一つは鍵部分を触ると毒針が飛び出してくる。しかし鍵がかかっていないので触らなければなんともないという、気の抜ける仕様。
いや俺が《アイテム鑑定》のスキルを持っているからわかるだけで、それ系のスキルがなかったら鍵を解除しようとして触るよな。
最初の宝箱の中身は
=【レア・アーマー】《赤鋼のレガース》炎耐性(中)=
鋼シリーズの防具だ。この鋼シリーズは鋼の前に色が付いているが、その色によってついている属性耐性が異なる。赤は炎、青は水という感じだ。
そしてもう一つの方だが。
=【レア・アーマー】《緑鋼のバンブレイス》風耐性(中)=
ありがたい、ありがたいんだができればお揃いのが。いや贅沢だってわかってる。色自体もくすんだ暗い色で原色のような派手な色じゃないんだが。
揃っているほうが良いと思う俺は贅沢だろうか。
うん贅沢だな。
協会で公表しているドロップ品情報に、この鋼シリーズは他に
けれど同じダンジョンから全ての部位が出るわけではないし、俺みたいに別の属性ということもあるので、自力で揃えるのは至難の技だな。
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調子良く書き進められているので投稿続けます。
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