第84話 午後の探索②


 七階層あたりまでは時々他の探索者の気配があったが、八階層では見かけなかった。

 多分七階層の落とし穴ピットフォールや八階層の落とし格子ポートカリスが探索者をふるいにかけるのだろう。

 六階層までは罠に引っかかっても大きな怪我をすることはまれだ。まあ、運が悪い奴もいるからな。

 だが七階層以降は進行を阻まれるため、進みが悪くなる。

 この辺りを超えられるかどうかで、探索者の実力が分かれる……とまでは言わないが、そういう回り道とかが鬱陶しいと思う探索者もいる。


 他にも七階層から出現モンスターがレアに上がる。脅威度で言えば4のモンスターだ。ダンジョンでは何においてもレアリティの差というものがある。

 コモンとレアではモンスターの強さに差があるのだ。


 今の俺はレアクラスのモンスターであれば梃子摺ることはない。

 ……嘘です。スタティックエレシープはレアクラスのモンスターで、梃子摺りました。


 いや、あれからも随分モンスター倒したし、今ならもっと短時間で倒せるさ。

 リポップしてないから試せないけど。ザンネンダナー。


 ごめんなさい、大きく出ました。

 ある程度レベルが上がると、コモンレベルのモンスターを倒して得られる経験値が少なくなると言われている。ずっとコモンモンスターだけを倒し続けても、身体能力が上がらないことは実証されているのだ。

 第三校ダンジョンって十五階層までコモンモンスターしか出ないんだよ。

 制覇されたときは三十階層まであったから、ダンジョンランクGの下から2番目でランクつけられてるけど、階層ごとのモンスターのランクの上がり方は裏山ダンジョンの方が断然上だった。

 けれど十階層までしかなかったのでダンジョンランクは最低のHになる。


 このダンジョンランクの設定を見直そうという意見がある。ダンジョンランクと実際の攻略難易度が違うからだ。


 ここ生狛ダンジョンがもし二十階層未満であればダンジョンランクはGだが、同じGでも階層を進むと出現モンスターの脅威度上昇率は高いし、罠も多くて攻略難易度は第三校ダンジョンより断然上だ。


 そういうのを踏まえたダンジョンランクを設定しようという流れがあるが、基準作りに時間がかかるので、俺が卒業するまでは変わらないだろうから、試験に備えて覚えなおさずにすむだろう。





 九階層で宝箱を一つ発見した。中身はミドルヒールポーションとスクロール。


=【レア・スクロール】《視力強化Ⅲ》目が良くなる=


 単に視力が良くなるだけではなくて、動体視力も上がるのだ。しかもすでにレベルⅢである。迷わず使用する。

 けど《暗視》に次いで《視力強化Ⅲ》って目関係ばっかりだな俺。


 実は七階層で戦闘中に落とし穴にハマって、ローヒールポーションを使用した。

 通ったときは避けたんだが、逃げ出したモンスターを追いかけてハマってしまったのだ。モンスターも一緒に落ちて、落とし穴の底で倒したけど。落ちた時にリトルコヨーテの爪が頬をかすったのだ。顔の怪我って出血多いし、ミドルもあるからいいよねってことで初めてヒールポーションを使った。

 よって現在のヒールポーションはミドル三本だ。



 十階層へ辿り着いた時には七時を回っていた。

 午後の戦果はリトルドッグ五匹で魔石3皮1ハズレ1、リトルコヨーテ六匹で魔石3皮2牙1、リトルリカオン六匹で魔石3皮1ハズレ2、リトルウルフ五匹で魔石魔石3皮1牙1。

 リトルシリーズの皮が結構集まった。

 ヘッドバットゴート六匹で魔石3毛1角1ハズレ1、スキップゴート六匹で魔石2皮1毛2ハズレ1、ライズアップシープ七匹で魔石4皮1角1ハズレ1、ビープシープ6匹で魔石4毛1とスクロールが1。


 午後の最後にようやくスクロール一つ。午前中にドロップ運使い切ったか。

 しかしものは良かった。


【レア・スクロール】《水球ウォーターボールⅢ》水球を作り出す=


 攻撃の威力としては弱いが使い方はそれだけじゃない。これが同じレアの《水矢ウォーターアロー》だと攻撃にしか使えないが、球はぶつけるのではなく、任意の場所に浮かせることができる。

 通常数字のない《ウォーターボール》ならレアリティはコモンなんだが、これは数字付きのしかもⅢである。ただ飛ばすだけではなく、コントロールも可能だ。

 窒息狙いで鼻口を塞ぐ様な使い方も可能だが、相手を拘束して動かないようにしないと逃げられてしまうけどね。

 一番は自分の手洗いとか飲み水にも使えるってところが良い。純水っぽいので美味しくはないが、ダンジョン探索に水は結構荷物なのだ。俺は《倉庫》があるけど、カモフラージュにも役に立つ。

 今ここでは使わず、窓口で鑑定してもらってから使うことにしよう。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る