第142話 サポート科の状況
結局採寸が終わった後も、河中部長と葉山副部長となんていうこことのない話をした。
時々松本も混ざったりして、装備の話をしたり、素材の話をしたり。
四年度生はすでに一級免許を持っているので、試験明けの土日に素材収集に行く話をしていた。
学校内では素材は学校側に回収されるし何よりドロップ率が悪い。
それに育成科の生徒がいるからモンスターのエンカウント率も悪いらしい。
土日の使い方としては素材があるうちは制作に、なくなれば探索に出るらしい。
そこで自分たちの作ったものの試験というか使い心地を試したりもするそうだ。
三年度生はまだ一級免許を持たないので、他のダンジョンへ行くことはできない。
「三年度中に高卒資格を取っている四年度生は筆記試験にはダンジョン学系しかないから試験科目が少ないんだ」
「サポート科はその分、専攻の実技テストがあるけど」
その辺りは自分たちが作ったものを提出したりするのだが、今回俺が提供した素材のおかげで提出品に悩まなくて良いのだとか。
そしてその分、俺の装備作成に時間を割けるのだから、部長たちの役に立ったようであり、俺にも還元されている。
「WINーWINというやつね。できれば私のために来年もこうあって欲しいわ」
松本がシナを作りながらそう言ってきたが、来年どうしているかは、ちょっと自分でもわからない。
「でもそれって不公平じゃないのか」
「チッチッチ」
松本が人差し指を振る仕草がウザイな。
「職人は素材の仕入れルートを確保することも大事なのよ」
その辺りも評価の対象……って、それって金を持っている奴が有利じゃないのか。
「親の財力も利用しても問題なし、ただし仕入れ金に対して作成したものの価値が低ければマイナス評価。そこはダンジョン物作りは儲けを出してなんぼの世界なのよ」
どこかの胡散臭い
俺の考えを読んだのか? もしかして思考を読む系のスキルを、なんて馬鹿なことを考えたが、なんの反応もないのでそれはない。そもそもそんなスキル手に入れるのは《刀鍛冶》並の至難の技だ。
「じゃあ俺の素材提供って」
「鹿納君が持ち込んだ素材を十全に活かしたものが作れなければマイナス評価だね」
評価に依頼者である俺の満足度とかは関係ないらしい。依頼者とか購入者の評価は別として、出来上がったものの商品としての価値が評価対象だそうだ。
依頼者の評価が入ると、不正をしやすくなるからな。
そんなわけで河中部長を筆頭に四年度生と一般教科など屁でもないという松本に試験勉強は必要ないのだとか。う、羨ましくなんてないからなっ。
◆ ◇ ◆
「なんだか楽しそうですにゃ」
「ダンジョン探索がお預けでしたが、ごきげん麗しゅうございますワン」
アパートに帰ったら勉強道具一式を持って、マイボス部屋へ転移した。
ダンジョン内で勉強するために机と椅子の形の岩を作り出した。座面が硬いので、ネットで机と椅子を注文したのだが、配達は明後日なのでホームセンターで購入した方が早かったと、ちょっと失敗した。
そしてテスト勉強を始めようと数学の問題集を開いたところで、タマとポチが声をかけてきた。
「そうか? いつもと変わらないと思うけど」
もし良かったとしても、今から気分は落ちていくかもしれないが。
昨年は寮の部屋に置いていた教科書を破られたりしたので、今年も全部電子書籍にしようかと思ったのだが、一般教科の教科書は一部古本屋で購入した。
「ふんふんふん〜」
数学の問題がすらすら解ける。無意識に鼻歌が出ていたようだ。やっぱり俺、機嫌がいいのかな。
その後数学の問題集を一時間ほどやった後、次は日本史の暗記にかかった。
タマはクワッとあくびをすると、俺の足元で丸くなった。それを見てかポチも俺を挟んでタマの反対側で伏せの状態になり、そっと目を閉じた。
なんか静かな二匹も珍しいかもしれない。
二匹の鼻息と、俺が教科書を捲る音だけがする。静かだな。今度ミュージックプレイヤーでも持ち込むか。スマホが使えればヴィデオチューブでも再生するんだが。
時計を見ると試験勉強を始めて二時間ほど立っていた。ちょっと熱中しすぎたかな。本を閉じて肩をぐるっと回す。
「終わりですかにゃ?」
「んー、休憩してお風呂に入ろうか。ちょっと遅くなるけどその後夕食な」
立ち上がって《倉庫》から着替えの下着とタオルを取り出す。
「お供しますワン」
「お付き合いしますにゃ」
そう言って二匹は俺の後ろをついてくる。今日はダンジョン探索はなしなので退屈してないかな。
ダンジョンでは長く誰も訪れないこともあるし、この程度はなんてことはないようだ。
「マスターが安全圏におられるので、警戒する必要もないですからにゃ」
ゲートは閉じてるから
ま、ゆっくりしようっと。
今日は星空を投影して星見風呂にしてみた。
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
大和は死ぬほど勉強して座学の成績を上げましたが、忍ちゃんはちょっと勉強して上位をとる。医術コースも目指せる秀才ですが、彼は裁縫男子なのです。普通に裁縫することを両親は許しませんでしたが、ダンジョン職はまた別ということで許可をもぎとりました。
問題集がすらすら解ける、なんて思いしたことないです。そういう目に会ってみたいものです。最近言葉が思い出せないってことが多々発生しまして。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます