第42話 リソース稼ぎ


 現在WDDSに確認されているダンジョンは世界中で千個以上あるそうだが、全てのコアがダンジョンの入り口を出現させているわけではないので、ダンジョンの総数は実は不明なのだ。


 ダンジョンコアがどこで生まれて、なぜ地球に入り口を出現させるのか。

 ダンジョンコアの権能を得て、ダンジョンマスターとなった俺にもその情報はない。無論タマにもだ。


 そんな考え事をしていたら、午前の授業が終わった。

 午後は昨日に引き続きスキルの実践。あー、やっぱ早退して生駒ダンジョンへ行こうかな。


 クラスメート同士で模擬戦闘をして、スキルの使用練度を上げるというのもできるが、まともに俺の相手をしてくれる奴はGHクラスにはいないんだよな。EFクラスにもいないけど。

 その言い方じゃあAからDクラスにいそうに聞こえるが、奴らは今日も下へ潜るので別行動である。

 この辺り見込みのあるなしで対応が違うところは通常の学校とは違うところだな。


 今日も出席をとったあとは、自習という名の放置、いや自由行動と言っておくか。自習だからといってサボるような奴はこの学校にはいない。何かしら自己研鑽に励んで、少しでもレベル上げを図るのだ。

 一般と違い、ダンジョン内で行動できるだけで経験値を得られるのだから。


 俺もダンジョンマスターになったことで理解した。

 ダンジョン内で何かしらの行動をすると、ダンジョンリソースという謎エネルギーがダンジョンに吸収される。その対価ではないが、リソースへと変化した際に生じる残りカスのようなものが、肉体と精神に作用し身体能力を向上させる。

 ただその向上した能力を発揮するには、ダンジョン内に漂う〝魔素〟が必要になるため、ダンジョン外では発揮できないのだ。


 俺やタマのように体内に魔素を貯められれば多少、外でも能力が使える。


 俺はダンジョンマスターとなったことで、体内に魔素を貯蓄できるようになったのだ。そう、外でも能力が使える……はずなのだが、俺自身の魔素貯蔵がまだ少なくてですね、レベル上げがひつようなんだ。




 皆が鍛錬しているのを横目に、一人学校を出る。学校のダンジョン外施設には、通常の協会業務を行う窓口もあるのだ。そこで武器登録、刺身包丁と鉈を自身の武器として登録する。

 包丁は殺傷能力があっても日用品、鉈はホームセンターとかでも取り扱うものなので、簡易ケースで持ち歩ける。

 ダンジョン黎明期にはバットや鉄パイプ、バールとかを武器にしていた探索者も多かった。

 だが持ち歩くには物騒だし、探索者のフリして暴挙に出る奴もいたことから簡易ケースに収納することを推奨されている。

 これ、学生だとタダで貸してもらえるのだ。

 生狛ダンジョンは、生狛山の遊園地近くに一ヶ月ほど前にできたばかりのダンジョンだ。


 遊園地のおかげで交通の便は悪くはないが、遊園地側は近くにダンジョンがあるのはよろしくないと、結論を出した。

 遊園地でダンジョンを管理経営するという話もあったそうだが、色々論じた結果、リスクが大きいとなったそうだ。

 遊園地は小さい子供が来るからな。


 で、なるべく早く踏破して消滅させる方向なのだが、このダンジョン人気がないのである。


 出現後すぐのスタートラッシュ(出現後のドロップ率が高い時期を指す呼び名)が終わった途端、探索者が激減したのだ。

 消失許可が出ると、喜んで突っ込んでいくクランもあるのだが、ここは手間の割にリターンが少ないと早々に諦めたらしい。


 なんせ洞窟型に見えて実は迷路型で、罠もある。五階層までは命に関わるような罠は少ないのだが(ないとは言わない)六階層以下は罠の凶悪さがまし、攻略を阻むのだ。


 スタートラッシュが終わり、ドロップ品もさほど出ないとなると上級者は見向きもしなくなる。

 現在は五階層以下を中堅どころが細々と回っている。

 迷路型はトレジャーボックスの出現率が高いからな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る