第53話 生狛ダンジョン中層④


 朝から昨日の残りの肉を食べた。野菜はないが、コンビニおにぎりはいくつかストックしてある。今日の帰りにまた買わないとな。


 そして日曜の午前は九階層の探索で費やした。

 この階層の罠は転巨石ローリングボールダーだった。

 この罠は罠というより仕掛けだな。スイッチとかはなく勝手に転がってくる。

 少し傾斜のある通路を上の方から定期的に、でも不規則に転がり落ちていく。最後は壁面にぶつかって、砕け黒い粒子に変わるのだ。ある程度身を潜められる隙間が通路のそこかしこにあるので避けることはできるが、なんせ不規則に転がり落ちてくるので通路を進むのに時間がかかった。


 おまけに九階層の登場モンスターがビープシープである。

 タイミングを図っているときに、ビービー煩くないてモンスターを集めるのだ。近くにいたリトルドッグとリトルウルフが集まってくる前にだまらさないとと思って戦闘に突入。

 戦闘しやすい場所に移動して、ビープシープを倒したと思ったらリトルドッグとリトルウルフがやってきて転巨石のタイミング測り直しとかね、どこのアクションゲームだよもう。

 ビープシープがありがたいようでありがたくない。

 けれどスクロールがドロップしたんだからありがたいのか。


=【レア・スクロール】《裁縫》=


 あんまり嬉しくはない。だが《裁縫》はR星3なのでそこそこ高額取引されるスクロールではある。


「調理だったら習得したんだが、裁縫は別にいらないかな」


 寮を出てアパート暮らしなので、朝夕は自炊するべきなのだ。ある程度簡単なものは作れるがやはり、もう少し料理ができた方がいいと思うんだ。

 今のところほぼコンビニだし。


 そして二つ目がドロップした。


=【レア・スクロール】《魔力強化》=


 うーん、微妙。欲しいっちゃ欲しいスキルではあるのだが、今まだ魔法スキルは《ライト》以外取得してないからな。《ライト》じゃあ魔力強化してもんまり代わり映えしない。


「これも取得保留だな」


 ようやく十階層へ降りる階段を見つけた時には昼を回っていた。


「タマ、昼飯食べに戻るぞ」

「承知しましたにゃ」


 あたりを探っていたタマが、俺の影に沈んだのを確認してマイボス部屋に転移した。


 流石に三食続けての肉は……アリだな。醤油で味変しよう。

 ステーキはやめて細切れにして砂糖も少し入れてすき焼き味だ。



「ハァ〜食った食った」


 謎の換気システムで肉の焼いた匂いや煙も、いつの間にかなくなっている。

 普通の洞窟なんかじゃ火を使うと二酸化炭素が充満してヤバかったりするがダンジョンではそれはない。モンスターも一応呼吸が必要なのだ。

 この二酸化炭素なんかもリソースへ変換されている。そしてリソースを使って生物が生存可能なを生み出しているのだ。


 ダンジョンマスターになってそういうを知ることができたが、それがどういうシステムで行われているのかはわからない。


 学者がこのダンジョン環境システムを解明して地球環境の改善に応用できないか研究しているそうだが、多分無駄になるだろうな。


 ダンジョンマスターの知識にもないのだから再現なんて無理だろうな。


「さて、じゃあボス戦に向かうか」


 邪魔な荷物は置いていくが、腰のポーチの中のポーションを確認する。

 ローヒールポーション三本、解毒ポーション1本解麻痺ポーション1本だ。

 レンタルのアイアンソードはボス戦に役に立ちそうにないので、エレホーンソードと刺身包丁を装備する。

 親父たちにもらったリザードシリーズのベストのベルトを締め直し、生狛ダンジョンの九階層へ転移した。




 階段を降りると真っ直ぐな通路を十メートルほど進むと、石の扉が鎮座していた。


「ここまではまだ誰も来たことがないのかな?」


 扉に手を当てそっと押すと、あとはゆっくりと勝手に扉は開いていった。

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