第35話 始業式の午後

  

 タマの言う通り、レア度だけで言えば《暗視》の方が《サンダーボール》より上だ。

 星はあくまでも人間側、JDDSが探索における有用性とか使い勝手とか需要があるとかから総合で判断しているものだ。《ファイヤーアロー》も《聴力強化》もどちらもレアでトレジャーボックスの設定は同じ。必要リソースも同じだ。


 イラつきつつ、《灯り》と《暗視》の二つの入力をする。《暗視》はR☆☆で【特殊スキル】の中の身体強化系と言われる部類に入る。

 どちらも光源のないダンジョンを探索するには、有用性は高いものだ。


 あれ、最後の最後にレアが残ってたし、レアのスクロール思っていたより多いな。

 というか、本当に残り物に福があったのかも。俺が《灯り》を持ってさえいなければ、絶対喜んでいたはず。

 佐山が「入力を終えたらカリキュラム申請の説明と、あと相談がある奴はその申請も今しておいてくれ」と説明を加える。

 今日から一週間の間に担任副担任と生徒の三者面談が行われる。親のない三者面談である。


 そこで今後の戦闘スタイルとか、カリキュラムに無理がないかとか個別の指導も入るが、その前に副担に相談時間もとってもらえる。


 俺はFクラスなので三田になるから、相談なんてしないがな。二年度で奴に相談しても無駄だってことは嫌というほど思い知ったから。


 迷高専の担任は一般教科の教師で高校の教員免許と、探索者免許(最低Fランク)を持っていないとなることができない。

 しかし副担任は違う。高校の教員免許が必要なく(持っていればなおよし)探索者ランクがD以上の元探索者か、現役の探索者だ。


 担任が一般の高校としての、副担が探索者としての教育担当になっている。


 三田は教員免許を持っておらず、ランクDの現役探索者だ。教師というより指導員なので、先生と呼ぶのはちょっとあれだ。



 現役だろうがなんだろうが、探索者が迷高専の教官を二年以上務めると、協会から希望するスクロールやアイテムを優先的に回してもらえるというメリットがある。オークションよりも格安で手に入るのだ。


 給料もちゃんと出るので一時的に探索をやめて教官になるものや、生徒同様休日にダンジョンに行ったりして探索者活動を続けている者もいる。

 中には引退したが、スクロールを手に入れて復帰を狙っていたり、教職を続けて手に入れたスクロール等を売りに回すものもいる。

 

 三田は今年が教官二年目の、引退を考えていた現役探索者。教官をして有益なスキルを手に入れ探索者を続ける予定らしい。

 この副担任だが、当然Aクラスの方が教官としての適性も探索者ランクも上のものがつく。


 Hクラスの副担任というだけでその能力が協会側からどう思われているか、自ずと知れるだろう。

 去年までのHクラスの副担任は担任にもなれる教員免許持ちがつくこともあった。

 放課後の一般教科の補講も受け持ってたし、普通科に近い体制だったことで、三年卒業を視野に入れて指導しているんじゃないかと言われていた。

 学校側は否定してるけど、実際三年卒が多い。


 今回三田がHクラスの副担なのは、前年度の事件のせいじゃないかと生徒間で囁かれていた。


 そんなことは俺にはどうでもいいが、そうだとしても俺の責任じゃないからな。





 午後の授業は自分が得たスキルを試すために当てられる。

 普通科にスキル付与はないし、サポート科のスキル付与は三年度末なので時期が違う。


 AからDクラスまでは実践授業として三階層以降に降りて行くため、他のクラスの担任副担任も付き添いで借り出される。

 そのためEクラスからHクラスは自習となる。


 自習と言っても、教師がつかないだけで、ほぼ全員が鍛錬場や、魔法スキルが使える練習場などに行き、取得スキルを試すのだ。


 だが俺は一人ダンジョン外施設へ移動し、図書室のPCで協会のダンジョン情報を検索した。

  俺の取得した《暗視》は明るい鍛錬場では使えないから、できることないんだよ。


 この図書室のPCは協会のデータベース検索用で専用サーバーにしか繋がっていない。すなわち、一般は見ることのできないやつだ。こういうの見れるのも迷高専に通う利点だな。




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途中【Ⅱ】のスクロールの話を挟んだらまた伸びました。

【ⅠとⅡの間】は14話になりそうです。

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