第99話 鍛治師粟嶋先輩
とりあえず、こちらは俺が使う刀だから、表向き提供できるものは全て詰め込んできた。防具のほうは今のところ充実しているが、武器の方は喫緊の用件である。
ドロップ素材の爪と牙は大体同じランク設定がされており、買い取り価格も同じものが多い。
リトルドッグの爪と牙C☆
リトルコヨーテの爪と牙C☆
リトルリカオンの爪と牙C☆☆
リトルウルフの爪と牙C☆☆
ハウンドドッグの爪と牙R☆
ミラージュリカオンの爪と牙R☆
ヘッドバットゴートの角C☆☆☆
スキップゴートの角R☆☆☆
ライズアップシープの角R☆
ビープシープの角R☆
カシミールリンディアの角R☆☆☆☆☆
爪と牙はそれぞれ二〜三本ずつで角は一本だ。爪と牙はビニール袋に小分けしてマジックでモンスター名を書いておく。角は皮と同様にシールを貼っている。
表向きは十二階層まで行ったことにしてあるので、ミラージュリカオンの素材までと思ったが、村正にカシミールリンディアの角の名前を出してしまったんだよな。持っていると言いながら入れないのもアレなんで入れてある。
正村が総合服飾研究クラブのとある人のようになってもいやだったし、先輩の情報がなかったからだが、全然タイプの違う人だったよ。
「すごいね。僕も昨日話を聞いた後、生狛ダンジョンの情報を検索したよ。ここと違って階層ごとの脅威度上昇が早いダンジョンだね」
「いつか使えないかと思って、素材は少しずつ手元に残すようにしてたんで」
ちょっと待って。生狛ダンジョンの情報検索したら、最終到達階層ばれてる?
嫌な汗が流れてくるも、粟嶋先輩は階層については触れることはなかった。
粟嶋先輩と正村は素材を手に取り、中身をみてはビニール袋に戻していく。
素材を見る目が真剣だ。
「頑丈さを求めるなら角、刺突性能を求めるなら牙、切れ味を求めるなら爪がいいとは言われているけど、必ずしもそうとは限らないんだよ」
エレホーンソードは角だけど刺突特化だな。粟嶋先輩は一通り素材をチェックした後、俺に向き直る。
「でもまずは君がどんな武器が欲しいかだね」
刀と一口に言っても色々ある。
本物の日本刀でいえば〝太刀、大太刀、短刀、打刀、脇差〟など。長刀や長巻も入るが、今回俺の希望には入っていない。
「基本は太刀かな。大太刀もいいけどダンジョンは狭い洞窟タイプも多いし」
「刀を使った経験は?」
「中学の時剣術道場に通ってました」
「剣道ではなく?」
「はい」
中学生の頃には探索者になりたかったので、両親に無理を言って通わせてもらった。
当然近くに剣術道場があるわけじゃないので、両親祖父母に車で送迎してもらったのだ。
「まったくの素人ってわけじゃないんだね。よかった」
見た目だけに憧れて使えもしない刀を欲しがる連中には辟易してるんだと、ちょっと黒い笑みを浮かべる粟嶋先輩は、顔がいいだけに冷たいものが背筋をはった。
「ちょっと待ってね」
あわしま先輩は立ち上がると、さっきまでいたサンプル保管室から数本の刀を持ってきた。鞘どころか鍔もなく木刀かと思ったが木製ではないので鉄刀?
「これはサンプルというか模造刀みたいなものだよ。刃もないしね。でも打撃武器として使えるくらいの攻撃力はあるよ。ちょっと振ってみて」
俺は中からサイズと形状が太刀に近い一本を手に取り正眼に構える。太さが全然違うからそれなりの重さがあるようだ。だが今の俺にはそれを支えるだけの身体能力が備わっている。
以前なら上段に持っていくだけでふらついたかも。
そのまま振り下ろせばビュンッと風切音がなる。次は八相からの振り下ろし。
やっぱりエレホーンソードよりブレがない。
あれ刀身ネジネジなので振り下ろすと風の抵抗があるぽいんだ。
「うん、素人ってわけじゃなさそう」
「それじゃあ先輩」
正村が立ち上がって、粟嶋先輩の方に身を乗り出す。
「うん、まずは試作品からかな」
そういってにっこり笑う粟嶋先輩は、やっぱり雑誌モデルばりの美男子だった。
俺は鉄刀を置いて頭を下げる。
「よろしくお願いします」
それで用事は終わりだと思ったが、しっくりくるバランスを探るためその後30分くらい色々な鉄刀を振らされた。
今日は生狛ダンジョンの十三階層でカシミールリンディア狩をしようと思っていたんだが、また時間は短くなった。
今日も探索時間は一時間ほどしか取れなかったが、目的のカシミールリンディアの肉をゲットできた。
=【レア・可食部】《カシミールリンディアの肉》摂取することで一時的に特殊効果を得ることがある=
やはり肉も特殊効果付きだった。ただこれと合わせるのが睾丸しかないのがなあ。
あ、カウ肉とか生乳と合わせてみてもいいかも。うんそうしよう。
そして一時間ちょいでカシミールリンディア七体、ライズアップシープ四体、ビープシープ五体と昨日の記録を上回るものの、半分以上タマに取られました。
そしてビープシープから《裁縫》に続き二つ目のスクロールをドロップした。
=【レア・スクロール】《紡績》糸を作る=
ビープシープはアレか、自分のドロップ品を活用して欲しいってことなのか?
このスキル欲しがる人の顔が一瞬チラついた。いやただで渡すことはできないし、一人だけって不公平だし。
なんとなく薄寒いものが背筋をはうような、そんな錯覚を感じながら十三階層の探索を終えて帰路についた。
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刀が手に入ります。でも完成はまだ先ですな。
サポート科の面々を書くのがたのしくってずいぶん助けられました。
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