第100話 十五階層ボス




 木曜の昼休みは誰の訪れもなく終わり、放課後まで総合服飾研究クラブも正村からも何も連絡がなく、十四階層の探索ができた。

 そして時間ギリギリに下り階段を発見することができた。


「ようやくだ」

「行きますかにゃ」

「今日は時間がないから明日だな」


 そう言ってマイボス部屋に転移する。

 今日はアンゴーラカウの肉と生乳を手に入れることができた。なんだかスクロールがドロップするよりうれしがっているような。いや特殊効果て大事だよな。

 カウ肉とリンディア肉でシチューを作って効果の検証だな。


 気配隠蔽を使用しながら第三校ダンジョンに戻り、帰り支度をしている時にチャットアプリの着信音がなった。


 佐々木からだ。


『まだ校内にいらっしゃいますか? 染色見本ができましたので確認されますか』


 その下には小さくカットされた革がパステルカラーに染められたものの画像がアップされていた。

 早いな。火曜日に渡して三日で仕上がったのか。


『ひなのコートの分だったら、あいつに見せてやってくれ。俺はいい』


 入力するとすぐ既読がついて返事がきた。


『ひなちゃんの方には郵送するように準備してます。先輩用の方はまだかかりそうなのでお待ちください』


 俺用のレア素材は水曜日に渡したところだしな。

 スマホをしまい、急いで帰り支度を済ませた。






 そしてついに金曜の放課後、十五階層ボスに挑戦である。

 と、その前に十四階層で肩慣らしと身体をあったるため、30分ほど探索をする。


 八体ほど倒し、身体もあったまったので扉の前へ。装備は指輪とケープ以外フルで装着。


「一応手出しは無しな」

「私はガーディアンですにゃ。マスターに危険があればそれはできませんにゃ」


 今までと違った返事が返ってきた。タマ自身今までは俺に危険はないと思っていたからか、手出し無用の言葉に了承したが今回はそうじゃないのか。


「できるだけギリギリまで、危ない時は頼む」

「了解しましたにゃ」


 そして巨大化したタマを後ろに、ボス部屋の扉を開けた。


 毎度ドーム状の部屋に謎の明かりが灯る。中心に座していたボスが立ち上がり、その姿を見せた。


 タマはボス当時牛サイズだったが、それより一回り大きな黒い狼。


【エピック・ブラックウルフ】【魔石30%・皮20%・牙10%・爪10%。アイテム20%・上アイテム10%】


「ガオオオォォォン」


 ブラックウルフが吠え、そして突っ込んできた。それをすかさず避けながら刺身包丁を振り下ろす。だが向こうも素早く横に飛んだ。





 流石に十五階層のボスである。十階層ボスの白虎より数段強かった。正直舐めていたかもしれない。今の俺ならやれると。

 十階層とはいえダンジョン制覇して、特殊なスキルを手に入れたし、エピックウエポンも手に入れた。

 体力も身体能力も上昇し、十五階層ボスくらい倒せるくらい強くなったと


 ろくに戦闘ができ無かった二年度生の時と比べりゃ、当然だ。学年最弱の俺の身体能力が多少上がったとして、せいぜい数クラス上くらいの戦闘能力だったんだ。

 スキルだって戦闘用のものは持っていない。ようやく手に入れた《ウォーターボール》は研鑽不足で全く使いこなせていない。


 ダンジョンボスは中ボスとは別格だ。タマが心配するはずだ。


「くそ! ミドルポーション二本目か」


 ミドルポーションは残り二本。幸運だったのは黒狼がバフやデバフを使ってこない力押しタイプだったってことか。一撃を喰らうごとに、タマがジリジリしている。いっそ助けてもらうか? いやここまでくれば意地だ。

 相手は防具のない場所を的確に狙って来る。ズボンが爪で裂かれてズタズタだ。


「おりゃあああ!」


 俺を丸呑みでもしようと大きく開けた顎門に向かって、気合を込めて刺身包丁を突っ込んだ。

 腕をやるわけにはいかないが、ここで終わるわけにはいかない。伸ばした腕を力一杯引き戻す。

 バキンと勢いよく刺身包丁が折れる音がして、手元には持ち手しか帰ってこなかった。


「クッソ、爺ちゃんの……」


 満身創痍で武器をなくした右手を見る。そういえばエレホーンソードはどこだ?

 黒狼に弾き飛ばされて……探そうと前を向くと、黒狼が粒子に変わっていくところだった。


 見るとおれた刺身包丁の刃先が黒狼の頭の上から突き出していた。吻合する力が強すぎて自滅したっぽい。


 カランと折れた刀身が地面に落ちる。


「た、助かった」


 そのまま俺も地面に落ちるように倒れ込んだ。


「マスター、寿命が縮みました」


 タマが寄り添ってきて額をざりっと舐めた。傷があったようだ。本当に心配をかけたようで、語尾に「にゃ」をつけ忘れているし。


「わるい。ちょっと意地になった。ていうか寿命ないだろ」


 なんだかんだ言いながら危なくなればタマが助けに来ると踏んでいた俺は、狡いと思う。



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100話です(((o(*゚▽゚*)o)))♡

ま、1話の文字数少ないですから。

そしてⅣ章は次話で終了です。なんか区切り悪いね。100話で終わるようにかけたらよかったんだけど、四章は全体書き上がる前に投稿したので。

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