第113話 目当ては
転移オーブのある五と十階層の前後はどうしても探索者が多い。
十階層のマップが埋まっていないところで、人のいなさそうなところを少し探索してみた。
近い場所の採掘ポイントの空きは少ないが、離れたところで一箇所見つけることができた。
一応近くに探索者の姿がないことを確認すると、ポチが「護衛しますワン」といって辺りを警戒する。そこで周囲の警戒をポチに任せ、俺は掘りに専念する。
ここにきてようやくクロム鉄鉱石を手に入れた。
鉄鉱石に混じってクロムモブリデン鉱石も一つ。
二日目にしてようやく目当ての鉱石を一つずつだ。
「これじゃあ刀の材料としては足らないよな」
粟嶋先輩の資料より五階層以降の、採掘ポイントからのドロップが渋い気がする。
先輩が最後に
技術学部の一年先輩(卒業生)やクラスメイトと共に探索をして、素材を取りに行くのは技術学部の伝統(とまで歴史は長くないが)というか恒例になっているとか。四年度卒業生はその能力によってGかFランクかは違うみたいだ。
六階層から十階層までは二箇所しか採掘ポイントを見つけていないが、先輩は六階層以降で炭素鋼が取れるといっていたんだが。
『ダンジョンが成長したせいかもですワン』
「成長?」
採掘ポイントが奥まった場所にあったせいか、採掘中にリポップしたのか近付いてきたモンスターをサクッと倒して戻ってきたポチが説明してくれた。
ダンジョンの成長のさせ方は色々ある。
ある程度リソースが溜まれば一階層ずつ増やす場合と、五階層を一気に増やす場合。
多くは後者なのだが、どちらの場合も成長させたことですでにある浅階層のモンスタードロップや宝箱の中身などのランクを落とし、リソースの節約をする。
余裕があれば浅階層自体も改装してマップを変えたりすることもあるし、階層数はそのままで各階層を広くする場合もある。
『成長させたばかりか、現在成長させている段階かはわかりませんが、モンスターの配置も変わる可能性もありますワン』
そっか。俺の裏山ダンジョンは探索者を入れていないが、ダンジョンは成長時にゲートを閉じたりしない。ここのような炭鉱型は今まで行き止まりだったところに道が増えていたり別れ道が増えていたりで拡張させていくのか。
先輩の資料は五階層までのマップは埋まっているが、六から十階層までは全域ではない。俺も階段目指して進んでいたからさほど探索していないし。
十一階層までは思っていた以上に探索者が多かったせいもある。
「じゃあ途中は諦めて目当ての十五階層の中ボス目指すかな」
ここの十五階層の中ボスはミスリルゴーレムなのだ。
そう、ミスリル。ファンタジー金属の代名詞といっっていいあのミスリルだ。
今の俺の武器では不安が残るが、そこはタマとポチに協力を願うつもりだ。
今回の探索でたどり着けなくとも、放課後にくればいいんだがそうすると粟嶋先輩に渡すタイミングが問題になる。
できればこのゴールデンウイーク中にゲットしたいものである。
一時間ほどして中ボス部屋前に戻ると扉は空いていたが、ここを休憩所として使用しているパーティーというかクランのテントは張りっぱなしのようだ。
それを横目に十一階層へ降りる。
十一階層以降は粟嶋先輩の資料はない。先輩は十階までしか探索しなかったようだ。 ここからは自力で探索だ。マッピングとサーチ全開で移動する。
十一階層は若干天井が高い。そして今までとは違って坑道の要所要所に広い場所があるようだ。
十一階層にも探索者はいるが、数はぐんと減る。
出現するモンスターのサイズが大きくなるのだ。
「あれ。ブロンズゴーレム?」
最初に遭遇したのはブロンズゴーレムだった。ブロンズゴーレムは十階層から出てくるモンスターなんだが、ここは五階層ごとにモンスターが変わるタイプだったと思ったんだが違ったのかな。
しばらく探索を続けたが出てきたのはブロンズゴーレムだけだった。
下り階段を見つけるのに二時間かかってしまい、その間に五体のブロンズゴーレムに遭遇。そのうち三体はポチが倒したが、魔石三個とインゴットが一個ハズレ1だった。
十二階層に降りればブロンズゴーレムの他にマルテンサイトゴーレムが出た。
マルテンサイトって何? 銀色のピカピカしたゴーレムなんだけど。
=【レア・マルテンサイトゴーレム】【魔石40%・鉱石15%・欠片15%・インゴット15%・アイテム10%・なし5%】=
ブラスゴーレム以降は特殊ドロップはインゴットばかりだった。
突き出したエレホーンソードが弾かれた。ここまであまり使っていなかったが、エレホーンソードの雷属性発動! 刺突の瞬間パリパリっと雷が走る。
一瞬マルテンサイトゴーレムの動きが止まり、そこに〈ラッシュ〉を発動させることで何とか倒すことができた。
流石に脅威度が上がると攻撃が効きにくくなっていく。
雷属性纏わせすぎると、持ってる俺の手もちょっとピリッとくるんで連続使用に向かないんだよな。
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