第114話 新たな武器


 朝早くから探索を始めたものの、地図のない階層は探索に時間がかかる。

 十三階層への下り階段を見つけ、ようやく昼食をとる。


 探索を進めたいのでマイボス部屋には戻らず、食べ終わると階段を降りた。

 できれば今日中に十五階層の中ボス部屋にたどりつきたい。


 もし、ミスリルゴーレムが倒されていたらリポップを待つつもりでいるが、タイミングが悪ければ今回は諦めるしかないかな。


 探索を進めるか、採掘をメインでするかを決めなかったが、境ダンジョンはどちらかに絞ったほうが良かったかな。


 そして十三階層ではスチールゴーレムが出た。

 さすがにエレホーンソードでは厳しきくなってきた。まだなんとか倒すことができたが、戦闘時間が徐々に伸びてきた。

 とは言っても一体単体なら五分もかかっていない。


 スチールゴーレムのドロップ率にも珍しいものはなかった。固有ドロップもインゴットだし。


 黒い粒子が消えたあとに、今までにない大きなドロップ品が現れた。


「えっとこれは欠片……じゃないのか」


 そこにあったのはスチールゴーレムの片腕に見えた。


=【レア・ウエポン】《スチールアームハンマー》スチールゴーレムの腕槌/スキル《アームインパクト》=


 武器だった。

 スチールゴーレムのぐーを握った腕の形をしたハンマーだ。

 

「ハンマーは嬉しいんだけど、形がなあ」


 ハンマー武器はありがたい。ありがたいんだがこれ担いでる見た目はなんというか。

 そこにマルテンサイトゴーレムが近づいてきた。


「吾輩が行きますワン』

「ちょっと待って」


 迎え撃とうと飛び出しかけたポチを引き止める。そしてスチールアームハンマーを抱えた。


「結構な重さがあるけど、扱えないほどじゃないな」


 これが春休み前の俺だったら持ち上げることもできなかっただろう。

 試しに数回振ってみる。さすがに片手じゃ無理だけど。

 そしてマルテンサイトゴーレムが坑道の角を曲がって姿を表すと同時に走り出す。


「ッセイ!」


 マルテンサイトゴーレムの頭めがけて振りかぶる。真横からグーパンで殴ってるように見えるハンマーだが、その威力はたいしたもので、マルテンサイトゴーレムの頭が吹っ飛んだ。

 まだスキルは使っていないのだが、レア武器にしては威力があるかも。


 しかし頭がなくなっても活動休止しないのがゴーレムだ。

 多少動きが遅くなるくらい。


  ハンマーと戦士職スキルの〈ラッシュ〉との相性はどうなんだろう。試しに使ってみる。


「〈ラッシュ〉」


 ゴゴンと衝撃音が坑道内に響く。マルテンサイトゴーレムの胸部が陥没したがそれだけだ。

 エレホーンソードでは五撃だった〈ラッシュ〉は、スチールアームハンマーだと二撃しか出なかった。

 まあ重さもあるし、使い方が違うからな。でも発動はするのか。さすが戦士職スキル。

 どの武器にも対応できるところが器用貧乏と言われる所以だが、さまざまなタイプのモンスターに対応しおうと思ったら、それにあった武器を選ぶのも探索には必要だ。


 よろつきながらも向かってきたマルテンサイトゴーレムに、スチールアームハンマーのスキルを試す。


「〈アームインパクト〉」


 ハンマーの拳が、狙った場所に吸い込まれるかのように振り下ろされる。そしてマルテンサイトゴーレムの胸部に命中した。


バギャン!


 若干黒板を引っ掻くような、神経を逆撫でする感じの混じった衝撃音がして、マルテンサイトゴーレムの全身に、ハンマーの衝突部から放射線状にヒビが走る。

 全身にヒビが入った状態で動こうとしたマルテンサイトゴーレムは端からぼろぼろと崩れだし、黒い粒子へと変わっていった。


「いやこれゴーレム系に特化したスキルじゃないか?」


 魔石を拾いながらそう呟く。


「お見事ですワン」


 手を出したそうにしていたポチは、今までと違ってすぐに終わってしまった戦闘に対して賛称してきた。


「うーん、武器の能力のおかげだしなあ」


 そうは言ったが。


「その武器が誰でも扱えるわけではないですワン」


 悩んだ結果、《刀術》の武術スクロールではなく、《戦士》の職業スクロールを選んだのは正解だったかも。

 まあ刀型武器が手に入ればいずれ《刀術》も取得するつもりではある。

 武術スキルは該当する武器がないと、マイナスに作用することもあるという話だ。

 最終的には《武士》の職業スキルが手に入ればいいが、これも早々見つかっていない職業スクロールではある。


 そこそこ戦闘をこなしつつ下り階段を目指す。

 途中で採掘ポイントを見つけたので、スチールアームハンマーで採掘できないかやってみた。

 採掘ポイントをスチールアームハンマーで殴りつけると、コロコロと二つほど鉱石が落ちた。金槌よりは効率はいいかもしれないが、一回打ちつけるための労力が。

 疲れにくくはなっているとはいえ、さすがに繰り返すと疲れる。


 試しにスキルで殴ってみればどうだろうか。


「〈アームインパクト〉」


 バコッとハンマーの拳が壁にめり込み、ゴーレムに比べれば圧倒的に少ないものの、亀裂が走る。

 ハンマーを退ければゴロゴロゴロゴロっと鉱石が結構崩れ落ちた。


「これだと一回でいっぱいとれそう」


 屑石も多かったが、タングステン鉱石やニッケル鉱石ダマスカス鉱石が手に入った。

 数は少ないのでどれも刀を作るには量が足らないっぽい。


 しかし合金の鉱石が取れるってやっぱりダンジョンって変だよな。




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 スチールアームハンマーは某ロケット○ンチに柄がついたような形を想像してください。















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