Ⅵ章

第133話 休み明け

 本作がカクヨムコン6現代ファンタジー部門で特別賞を受賞しました。

 書籍化に向けて改稿作業に入っております。

 執筆速度が遅いもので、改稿作業終えてからⅥ章の投稿をするにも月単位でかかってしまいそうなのでぼちぼち進めていこうと思います。

 一応週2(月金)更新予定にしております。

┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼


 連休が終わり(多少世間一般とのズレはあるが)8日の金曜日から通常通りの授業、というわけではない。

 上クラスはゴールデンウィーク前半だったので休養をとれたが、下クラスの宿泊研修は昨日までだったので、そのあたりを踏まえ連休明けて金土日の実技授業はない。授業は座学だけだでさらに日曜は午前のみの半ドンになる。

 教室で過ごす時間が長いと絡んでくる奴がいるかと思ったが、休憩時間になると新職業の話題に熱がこもって、それどころではないようだ。


 そして大きな変化が一つ、朝のホームルームに担任の只野先生から知らされた。


「えー、Hクラスの副担任、担当指導教官の三田教官が一身上の都合で辞職されました。急なことで後継が決まっていないので、しばらくはGクラス担当教官の佐山教官が兼任します。みんなには────」


 机に肘をついて適当に聞いていたが、思わず只野先生の方を注目してしまった。

 その時一瞬だが只野先生と目があった。


 ああ、そうか。

 一身上の都合で辞職と言ってるが、事実上はクビなのかもしれない。

 第五校の教師の不祥事が取り沙汰されていたことで、教官の採用条件が見直されるというニュースも見た。


 俺の中では三田はもうどうでもいい存在になってる。奴が居ようがいまいがなんら問題はない。実戦授業もソロでやるからマイク越しでしか教官と接しないし。


 なぜか前橋が俺の方をチラチラ振り返ってるんだが。

 三田の辞職については俺は無関係だ。


 ……面接の時に只野先生にチクったことになるのか? まあいいや。


 そんな出だしで一日が始まったが、取り沙汰すようなこともなく平穏に一日を終える。下クラスの面々は今日の放課後の鍛錬や部活は休みとなっている。俺は宿泊研修に参加してないがほとんどの探索科生は参加しているからだな。

 早々と帰宅していく同級生を横目に俺は工房棟へ向かった。


 昨日粟嶋先輩からチャットアプリに連絡が来ていた。



粟嶋>鹿納君、宅配受け取りました。

   連休中に受け取れるとは思ってなかったよ。

   一応試作品的なものが出来上がったので8日

   の放課後A二号室にいるから顔出して。


                         <大和

       ありがとうございます。

       知良浜ダンジョンの素材もあるので

       放課後顔出します。


 

 返事に書いたように知良浜ダンジョンの売らずにおいたドロップ品を詰めてきた。

 ロングセンチピードやキラーマンティスの大顎にトゥースリザードの爪牙棘だ。

 ブラックポーキュパインやリザードとか十四階層までのモンスターの素材は、繊維系以外売ってしまったので、十六階層以降のドロップ品になる。


 その他バックパックには手入れをお願いしようと思って持ってきたエレホーンソードとマチェットも。


 繊維系は服飾クラブに作って欲しいものがあるので、そっちに渡す予定だがクラブ員がいるところに行きたくないんだよな。


 河中部長に連絡入れるか。しかし学内では携帯電話は使えないので直接逢いに行った方が早いか。

 サポート科四年度生は一般教科の授業はない。三年度で高卒資格を得ているからだ。

 まだ迷高専が通信制を採用していたころからそうだったらしい。

 北海道にある第一校はいまだに通信制なので、単位を取れば3年かからず卒業資格が取れるのでそっちがいいというのもいる。


 三年で高校卒業資格が取れなくとも医術部と薬術部以外は進級できる。この二部は四年度から提携大学への編入があるから卒業資格がなければ通えないからな。まあ高卒資格がとれないようなやつは鼻からこの二部にはいないけど。


 河中部長はちゃんと三年で高卒資格を取っているので、今年度は専門授業だけだと言っていた。

 

 河中部長の専攻は織物ファブリックらしいがマテリアル造りから生地テキスタイル造り全般を学んでいるとか。うん、よくわからないが糸から布や革とかの生地も含めて全部ってことだろう。


 一時限目終了後、休憩時間に技術部織布専攻の作業場へ急ぐ。

 場所がわからず、途中で尋ねながら目当ての教室へたどり着いた。

 中はミシンとかも置かれてて家庭科室みたいだった。


 ちょうど扉のところにいた生徒に河中先輩を呼んでもらう。


「やあ、鹿納くん。ちょうど連絡を入れようと思っていたところだったんだよ」

 

 なんでもズボン用の皮の鞣が終わったので、サイズを測りたかったそうだ。

 それは放課後ということで、俺は要件を伝える。


「実は作って欲しい物があって、クラブだと落ち着いて話ができそうにないので、昼か放課後に河中部長とだけ話ができないかと」

「ははは、まあこの前みたいなことはないと思うけど。だったら今日の放課後に君の教室に行くよ」


 わざわざきてもらって申し訳ないが、その約束を取り付けて俺は急いで二時限目に間に合うように戻った。


 鍛治工房に行くのは河中部長との話の後でいいか。それほど時間はかからないと思う。


 俺が作って欲しいのは探索用のバックパックだ。普通のバックパックじゃなくって前の方にも荷物が入れられるようにタクティカルベストのような感じにできないかと思っている。

 あまりやりすぎると戦闘時は邪魔になるが、そこは脱着しやすいようにしてもらえればいい。

 なんせソロなので、荷物はおおくて当たり前なのだ。あまり荷物が少なすぎても変なので見せるためのものでもある。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る