第166話 永岡天満宮ダンジョン二日目④
ミラーカープからドロップしたスクロールを鑑定した。
=【エピック・スクロール】《製織の知識》布を作り出すことができる=
……この辺りの専門知識はないが、説明に布を作り出すとある。織工とはまた違うのかな?
スクロールは倉庫に入れ、廊下をめざして先に進む。
さっき伊吹教官たちが入ってきたところから出ると、同じような部屋だったがモンスターは現れなかった。
「倒されたばかりかな」
その後三部屋ほど通過したが、やはりモンスターは現れず、廊下に出た。
ここまで思ったより時間がかかっていたため、十九階層の探索は諦め二十階層へ向かう。
今までよりも幅が倍ほどある回廊が真っ直ぐ伸び、一軒の大きな神殿造りの屋敷へと繋がっていた。
屋敷の正面には大きな観音開きの門があり、この門がボス部屋の扉になっているようだ。
低層のボス部屋のように、前で待つ人影はなかったが。
「門が閉まってる?」
ここ永岡天満宮ダンジョンのボス部屋の扉が閉まっているのは、中で戦闘中ということだ。
「伊吹教官たち、じゃあないか」
さすがに二十階層ボスはエピック最上の脅威度12あたりのモンスターが出ると思われる。
開くまで待つことにして、門の前で休憩することにした。
しかし十分が過ぎ、二十分たち、三十分が経過しても扉が開く気配がなかった。
「マジか。これなら十九階層探索してればよかったかも」
「どうしますかにゃ」
「まだ待ちますかワン」
影に潜んでいたタマポチが顔を出す。
サーチは扉が閉まっているボス部屋の中は使えないというか、探れない。
塔型のボス部屋は他と違って、閉まらないとボスが出現しないから他のダンジョンのように、逃げられるよう扉に楔をかますなどの手段が取れない。
だから攻略が進まないっていうのもあるし、力試し的なトライもできない。
唯一の逃げる手段として逃走用の迷宮道具があるが、逃走用の迷宮道具はモンスターのレアリティー毎に存在するから五種類ある。
ボスモンスターのレアリティーと同等以上の道具でないと効果がないから、ここなら多分エピック以上の迷宮道具が必要だ。
コモンとレアくらいなら俺でも購入できる金額だが、エピックからは金額が跳ね上がる。
まさか二十階層のボスに挑もうとする探索者が、事前調査や準備もしないはず、ないよな。
俺だってろくに調べてないから、人のことは言えないけど。
「ちょっとだけ、チラッと見るだけ。さすがにこの階層のボスは俺らには無理なんわかってるって」
「絶対やぞ。言うこと聞かんかったら二度と連れて来んからな」
「龍兄。オカンが心配してるし、ぼちぼち帰らんと」
階段からはかなり離れているのに、聞き覚えのある三人の声が聞こえてきた。
伊吹教官に俺が二十階層ボスにソロアタックしようとしているところを見られたくないと、咄嗟にマイボス部屋に転移した。
「あの連中ではなかったようですにゃ」
「むう、今日はもう諦めますかワン」
マイボス部屋に転移したことでタマポチが出てきた。
「あー、そうだなぁ。もうあそこに戻れないかな」
塔型は階段では他の探索者に出会す率が高い。
十五階層以上は探索者が少なかったが、あの三人はあの後帰るようなことを言っていたしな。
階段と出入り口以外で転移できるのは、昼休憩をとるために十八階層でマーキングした場所だけだだ。
塔型は中で夜営するやつは少ないが、いないとも限らない。結局十八階層に転移して戻ることにした。
せっかくマイボス部屋にきたんだから、ドロップの整理をしてからにしよう。
羽に鱗や鰭は錬金術の合成素材に使えるので、それぞれ二個づつは葉山副部長に渡すか。
サマースカーフの合成に使ってたのも鱗や羽だったし。
各種肉は食べるとして、ミラーカープのはどうするかな。
ミラーカープも肉というか身? を落とした。肉同様謎の葉に包まれていた切り身だ。
500グラムから1キロくらいとドロップによって大きさはまちまちだった。
一番小さいものを開けてみたが、大きさを考えたら魚の形はしてなくって柵状に加工されていた。まあ肉もそうだしな。
開けたものは勿体無いのでポチタマにあげたが、どっちも美味そうに食べていた。
でも鯉なんだよな。
鯉も食用のものがあるのは知っているが、俺は淡水魚はちょっと泥臭くって好きじゃない。
甘露煮とかにすれば食べられるけど、甘露煮なんて作れないし。
今度帰省した時にばあちゃんにでも頼んでみるか。よってミラーカープの切り身は倉庫に入れておこう。
シーホースとかサハギンは肉は落とさなかったが、もしかして落とすんだろうか。うーん、あんまり食べたくはないなあ。
それにシーホースがドロップするなら馬肉か魚肉のどっちなんだろう。
皮をドロップする獣系が少ないと荷物が嵩張らないな。魔石も半分は売って半分はリソース行きだ。
あとはスクロールだな。
《加工》は一つは自分で使って残りは《縫合》とか総合服飾研究クラブが欲しがりそうなものがある。
これは今後の交渉材料に使えるので売らない予定だ。
「こんなものかな。じゃあ十八階層に転移してそこから出口を目指すか。タマポチは廊下に出たら隠れてくれな」
「わかりましたにゃ」
「承知しましたワン」
アパートに帰りつくの、何時くらいになるかな。
学校に内緒でダンジョンマスターになりました。 琳太 @Rinta-ha-Rinda
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