第33話 スクロール配布

ⅠとⅡの間と言いながらⅡのスクロールの話がここに来てしまいました。

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「────であるからして、貴君らのより一層の精進を期待する」


 普通の高校とは話の内容は違っても、校長の話が長いところは一緒だ。

 ようやく始業式が終わり、この後はカリキュラムの選択だ。

 と言ってもほとんどの生徒はこの春休み中に決めている。


 一般教科は数クラス合同で授業を受けるため、それぞれの教科教室へ移動する。三年度以降普通科以外は自教室というのがないため、ホームルームなどは割り当てられた教室で受ける。


 探索科ABが日本史教室、CDが世界史教室、EFが地理教室、GHが現代社会教室をホームルームに使っている。社会科教室が三年だな。


 ちなみに四年度はABが物理教室、CDが化学教室、EFが地学教室を使い、五年度はABが国語教室、CDが数学教室を使っている。といっても五年度生はほぼ実践授業なので教室にいないが。


 サポート科の教室は医術薬学は治療院、魔素学と技術部は工房棟にある。結構あっちこっちに散らばっている。


 鍛錬場での始業式が終わればスクロール授与、その後は各自カリキュラム申請になる。

 カリキュラムとは戦闘スタイル別に組まれているので、剣士を目指すなら剣技、槍使いを目指すなら槍技という風に分かれる。

 だいたい希望は決まっているのだが、このスクロール授与で志望を変えるものもいるのだ。

 魔法スキルとか手に入れられたら、そっちに行ったりな。



 この初回のスクロール授与のスキルは、身体強化や単一魔法で職業や知識系は入っていない。それは自分で手に入れないといけないのだ。


 今この教室にはGHクラス合わせて四十一名いる。席順は当然二年度最後の進級試験の成績順。

 俺は最後列に一人飛び出す形になっている。

 教室はどこも横八列に机が並んでいるからだ。本来は五行だがたまにこういう端数があるし、三クラス合同の時もあるのでので八行六十四名まで座れるようになっている。


 二年度の俺の班は成績があまりよろしくなかったようで、ほとんどがこのクラスにいる。

 教師が来るまでは皆席を立って思い思いに話しているが、俺は席について端末を操作していた。


 この端末は机に固定されており、学生証を差し込むと起動する。

 23インチの有機ELDモニターの起動画面からパスワード入力の画面が現れた。


「あれ、なんだ大和、教室間違えてるんじゃないか。普通科は一般教室だぜ」


 前橋が俺を見つけてギャハハと笑う。

 そんな笑い方する奴、まじでいるんだって驚いたよ。て言うかお前らもGクラスで大して変わらないじゃねえか。


 俺はそんな前橋たちを無視して、カリキュラム選択画面を開く。


「おい、無視かよ」

「最下位くんは耳も悪くなったんじゃないのか」


 そんな風に揶揄ってきたが、ちょうど教師が入ってきたため、前橋等は慌てて席に戻った。


「ほら、席につけ。出席とるぞって、席が埋まってるから全員出席だな」


 点呼を省略しやがったのはHクラス副担任の三田だ。その後ろにGクラス副担任の佐山。二人ともスクロールの入った箱を抱えていた


「三年最初の授業はお待ちかねのスキルスクロールの配布だ」


 その言葉にクラスに歓声が上がる。佐山の方は箱を置くと慌ただしく教室から出て行った。


「何が当たるかは運だ。運も実力のうちというから何が当たっても文句はなしだぞ」


 そう、スクロールのドロップは運だ。ドロップするかどうか、何がドロップするか。ダンジョンによって傾向はあるが、過去統計を取ったがそこに明確な定義は存在しない。


 結果、探索者本人の運によると言われている。


 そりゃあ設置する方でも選べないシステムだからな。トレジャーボックスの内容が選べないように、ドロップ品に関してはドロップ率と種類の割合(スクロール、アイテム、魔石、素材の割合)しか選べないので、何がドロップするかダンジョンマスターにもわからないのだ。


 三田は二つの箱を教壇の上に、さらに一つの箱を教壇の下においた。上二つの箱の中を混ぜるようにかき回した。


「箱は二種類、左右のどちらの箱を選ぶかも、運のうちになる」


「まずは1番杉野からだ」

「はい」

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