第149話 服飾クラブで

 アンダーウエアは完成しており、試着をしてそのまま着て帰ることになった。

 ダンジョン外でどの程度の効果があるか、体感でいいので感想が欲しいと言われた。

 河中部長のバックパックは普通の布地で作られており、細々とした修正などの意見を出し合った。

 そして……


「はい、刀型武器用の剣帯、横に刺すんじゃあなくって後ろ腰に装備するタイプと、背中に装備するタイプ。どちらも部長たちが今作っているバックパックと組み合わせられるようになってるわ」


 葉山副部長が差し出してきた二種類の剣帯は、どちらも黒く染められた革で鋲というか金属の装飾がほどこされている。


「てっきり武士みたいに腰に差すんだと思ってましたが」

「製作者のコンセプトは〝機能は当然だが見た目がカッコ良く〟だそうよ」


 ああ、誰がつくったか言われなくともわかった。部屋を見回すが目当ての人物が見当たらなかった。


「その厨二病を患っている彼女は今日はいないんですか」


 俺の言い方にクスリと笑う葉山副部長。


「ええ、ちょっと今週末実家に帰るらしくって、もう向かっているの」

「そうですか」

「じゃあ早速試着と行こうか、そこに粟嶋くんの刀が入っているの?」


 ウエポンケースはダンジョンの外に出てから協会事務所で鍵をかける予定にしていたので、開けて受け取ったばかりの刀型武器を取り出す。


「思っていたより大きい、というか太め?」


 出した向きを見て河中部長が感想をいう


「まだ中に入ってる?」

「ええ、今まで使っていたホームセンターで買ったマチェットと、ドロップ武器のエレホーンソードです。整備もお願いしてたので」


 他のクラブ員も興味津々で集まってきた。


「ええ、ドロップ武器まであるんだ」

「ちょっとエレホーンってエピックモンスターのサンダークラウドシープのドロップじゃ」

「いや、生狛の五階層ボスのスタティックエレシープからドロップした。あれはレアモンスターだったけど」


 これはちゃんと届けてあるので公にしても問題ない内容だ。


「すごいな、やっぱりボス個体からは一ランク上のドロップが出ることがあるって、授業で習うけど、周りでそれを体験してる人初めてかも」


 この迷高専ダンジョンは制覇済みなので、ボスドロップはレアリティ同等のものかそれより下のものしか出ない。

 それに五層ボスのパーティー討伐は三年度二学期の実技の期末試験になっている。これを倒さねば三学期の実技試験を受けることができない。

 三学期の試験は五階層ボスをソロ討伐か十階層ボスのパーティー討伐か選べる。

 この際のパーティー編成や倒し方、そして討伐タイムなどで成績が決まり、四年に進級できるかどうか決まるのだ。

 まあそれは置いておいて、現時点で四年生ではボス戦経験しててもここのだから、レアリティ上のドロップ経験があるやつはいないだろう。

 2、3年生は同学年にボス戦経験者はいない。


「え、鹿納くんソロで階層ボス倒したの?」

「五階層だよ。スタティックエレシープは脅威度……どれくらいだっけ」

「脅威度6だよ。魔石ランクは低いけど毛に属性を纏っているから攻撃手段が限られるから高めなんだ」


 何気に河中部長はよくご存知だなあ、と感心していると。


「素材、特に毛をドロップするモンスターについての知識に偏ってるけどね」


 葉山副部長に心を読まれた!


「あそここの前制覇されちゃったんだよね。他に近くでスタティックエレシープが出るダンジョンは「はいはい、そういう話は今はいいから」……はい」


「生狛は十五階層までしかなかったってされてるけど、十一階層以降のドロップ品も渡されてるんだから、五階層ボスくらいは倒せるでしょう」

「「「「言われてみれば」」」」


 葉山副部長の言葉に部長含め周りが頷く。


「生狛は残念だったよ。皮と毛のドロップが多いダンジョンだったから、一度行ってみたかったんだよ」

「部長、あそこは罠が多すぎて今の部長じゃ1階層だって無理でしたよ」

「ぼ、僕だって少しはレベルアップしてるんだよ」

「四年になってから、何匹モンスター倒しました?」

「え……」


 サポート科四年生の、というか生産職系の実践授業は、内容が戦闘ではなく生産の方に偏っている。それでも週に半日(二授業三時間)は時間割に組み込まれているが、これは申請すれば生産の授業でも単位がもらえるそうで、河中部長はほぼ生産の方に変更申請しているのだとか。


「レアリティ上の素材を扱うために、もうちょっとレベルアップしたほうがいいってわかってるんだけどね」


 授業では素材が手に入らないので、やる気が下がるんだとか。


「じゃあ今度どこかのダンジョンに素材取りに行きます? 加工にどんな素材がいるのか俺にはわからないんで、土日で行けそうな範囲で、欲しいドロップのあるダンジョン調べておいてください」

「……まじ?」

「え、いいの鹿納くん」


 河中部長と葉山副部長は驚いた顔で俺を見る。


「大勢は無理ですよ、いいとこ2、3人くらいですか。外のダンジョンなんで免許持ってる四年度生しか無理だし、学外だと学校の装備が借りれないから、その辺りもどうするか、そっちで考えてくださいよ」



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 ちょっと体調不良(夏バテでコロナではないです)冷たいもの飲み過ぎなんでしょう、ここしばらくトイレの住人なっている時間が長くて……

 ということで(何が?)いつもと違う更新時間です。

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