第94話 連絡多し
シャワーを浴びている間に、チャットアプリに大量の着信が。
「……ひーなー」
本当にブロックしてやろうか。
『おにいちゃん』
『ありがとう』
そして〝ありがとう〟と文字の動くお礼スタンプ。
『ルナマリアさんから返事もらった』
ひなにはルナマリアで通してるのか、佐々木よ。
『可愛いでしょ』
『絶対似合うと思うの』
ここに佐々木のデザイン画の画像が貼られていた。すでにデザイン直で見せられたよ。
『毛皮よろしくね』
そしてウインクしてるスタンプ。一応返事を返すか。
『勝手に約束すんな。今度帰った時覚えてろよ。それと連投うざい。ブロックするぞ』
ついでに怒りのスタンプも送信しておく。
ピロンと着信音とともに返事が返ってきた。
『可愛い妹に、ひどいことしないよね?』
そしてここに照れてるスタンプ。なぜ照れるのか意味わからん。
そして今度は着信。
「もしもし」
『お兄ちゃんが三人分の素材送ってくれるっていったら、佐々木さんが「中学生の女の子ならこういうのがいいんじゃ」って、デザイン画見せてくれたんだよ。そんで「よかったらこのデザイン娘がしたものなんで、娘に作成させてもいいかな」って聞かれてお母さんとお婆ちゃんがオッケーしたんだよ』
怒涛の如く電話で捲し立ててきたので、ちょっとスマホを耳から離してしまった。
まあ責任は祖母と母にもあるのだろう。自分たちのを優先して作ってもらえることで、安請け合いというか、向こうの提案を飲んだのだろう。
「わかった、わかったから。三人分の毛皮は送ったけど、ひなのはこっちで佐々木さんに直でわたすから、母さん達には送った分は使っていいって伝えてくれ」
『わかった、言っとく。お兄ちゃんありがとう』
そして唐突に通話が切れた。ひなのトーク画面を閉じると他にも着信があった。
「えっと、これ佐々木か」
こっちも多いな。なんとなくひなと同じ匂いがしないでもない。ご同類なのかも。
開けるとそこには必要な素材の候補と数量の一覧がデータで添付されていた。
いきなりリストから始まったよ。
『鹿納先輩』
『おおよその必要な量と、その前に加工サンプルに必要な素材のリストを送ります』
『染色を試すための皮と紡績用の毛のリストです。よろしくお願いします』
添付書類を開くと、俺がリストにあげていた皮と毛がほぼ上がっていた。おいおい、なんだか多くないか。
『これ全部か? 結構な量になるんだが』
一応確認のため入力したのだが、こっちもすぐ既読になり返事が返ってきた。
『染色してどんな色になるかとか、試す必要があるので。試験には小さくカットしてやるので全部使うわけじゃありませんが、種類はある分全部お願いします。使ったことのあるものは外しました。よろしくお願いします』
言われてみれば学校で手に入るものは上がっていないな。ラビットや大坂ダンジョンの低階層ドロップも、近場ということで割と回ってくるからいらないのか。
『了解した。明日一部用意して持っていく』
『ホームルーム前に教室に伺います』
……はえーよ、二つの意味で。送信後すぐに既読になったと思ったら返信もすぐだった。
『明日は午前が実戦授業だから教室に行かないぞ。放課後に工房棟に持っていく』
今度は既読はすぐついたが、返事の方はしばらく時間が空いた。と言っても一〜二分のことだ。既読はすぐついたから、もしかして放課後までお預けされてショックを受けてたりするかも。
『わかりました。工房棟二階のB五号室でお待ちしてます』
そんな感じでやりとりが終わった。
「そういえばチャットは普通なんだ。通話だとどうなるんだろう?」
舌ったらずは通話でも治らないから、同じかなどどうでもいいことだなと、スマホを充電器にセットして寝ることにする。
布団に入るとタマが潜り込んできた。
ダンジョンじゃないから別にいいんだけど。あったかいからいいか。夏はダメだな。
翌日の火曜日は実戦授業だ。3回目だし今回は六階層までとした。
三年度生で八階層に到達しているパーティーは、上クラスにもいなかったのだ。上クラス最高が七階層である。いくらソロで移動速度が速いと言っても、流石にトップを追い抜くのはちょっとな。
それでなくとも個人別討伐数はトップなんだよな。
暗いのをいいことに時々タマも参戦しているんだが「弱すぎますにゃ。張り合いがないですにゃ」と言いつつ、子猫サイズから中型犬サイズ、いやこれは小虎サイズというのだろうか。大きさ縛りで戦い出した。
当然タマが倒した分のドロップは倉庫いきだ。
六階層からは出現モンスターが入れ替わる。
=【コモン・ロックフィスト】【魔石30%・牙10%・アイテム10%・なし50%】=
相変わらずのドロップ率の低さよ。
このロックフィスト、拳と言いつつバレーボールほどの大きさの岩で、こう真ん中がぱかっと割れて噛み付いてくる、口の中に牙がある岩だ。
なのでドロップに牙があるんだが、このアイテムの中に〝原石〟というのがある。原石というからには中には鉱物が含まれているわけで、時には宝石なんかもあって高額になる時がある。まあ、滅多に出ないけどな。
今回は他にも六階層まで行ったパーティーがいたが、個人討伐数はやっぱりトップだった。
┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼ ┼
私も軽い〝舌小帯短縮症〟というやつで、舌の下にある舌小帯が舌の動きを邪魔します。器用云々別にして物理的制限でさくらんぼの茎は結べません。
確か昔松田聖子が、最近では土屋太鳳が手術して話題になりましたね。
ひなにヘイト集まっててちょっと驚きました。少しフォローの文章追加。
後ろで祖母と母が「うふふ」「おほほ」と笑って誤魔化しているかも……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます