第211話 俺の別荘地!?

「な、なので……。ですね? 信頼――信じて頼り合える関係まではいけなくても、です。信用――信じて用いてもらえるぐらいの関係性には、ならないと……。一針正樹さんから、俺の欲しい情報を託してもらえなさそうでして……。信用関係を築くには、やはり私生活も~って……」


 もう、息切れをしながら説明をしました。


 美尊と深紅さんは、阿鼻叫喚。

 涼風さんは、コメントでも白目を剥いているんだろうことが察せられた。

 コメント欄の皆様は、再び錯乱。


 地上にいるであろうマネージャー社長の川鶴さんが、慌てて内容を纏めた緊急声明をSNSと公式サイトにアップしてくれたようで……。

 そこに目的と、シャインプロへの帰還条件も記載されていたことで、ようやく沈静化の兆しが見え始めた。


 とは言え、美尊や……同じ寮に住んでいる深紅さんに関しては、まだ認めていない様子。


 深紅さんが、こうなってしまったのも……俺に責任がある。


 弱った女の子に手を差し伸べておいて、立ち直ったらサヨナラ。

 うん、クズだ。


 寮に戻ったら、ちゃんと説明と謝罪を……。

 シャインプロへ帰って来たら、手土産の1つでも――深紅さんなら、武術の教練とか、かな?

 しっかり、お詫びをしなければ。


〈改めて纏めを見て、理解はした〉

〈まぁ元々ソロで配信してたのが、今度からはパーティとかの配信もやるってことっしょ?〉

〈羅針盤のゲスト枠で配信をするか、あるいはソロ枠はソロ枠でやるのか〉

〈お兄様が幸せに活躍する姿が見られるなら、どっちでも最高ですぅううう!〉

〈腐った旭プロに改革を起こしてくるとか、格好良いじゃん〉

〈¥10,000

なんかトラブルが起きるに、1万円かけるわwww〉 

〈賭けが成立しないのはノーセンキューw〉


 ねぇ……。

 皆さ、酷くない?

 俺の事、トラブルメーカーだと思ってるよね?

 多分、白星が不幸を招く特性があるから、イベントが起きまくってるだけだよ?


『…………』


 ほら。

 心当たりがあるからか、白星も反論をしてこないしさ。


 俺にも白星にも、悪気はないんだよ。

 だから、そんな冷たい言い方をしないでください。

 俺も少し自覚があるだけに、胸がチクチクなのよ。

 お願い、許して……。


「と、取り敢えず! ご報告は終わったので、お腹を満たします! 気疲れ……って訳じゃないですが、エネルギーを身体が欲しています!」


〈まぁサイクロプスを投げ飛ばす身体だからなw〉

〈むしろ、普通の食事でそんなエネルギー取れないだろ。やっぱり、モンスターって栄養爆弾なのか?〉

〈人間の身体のエネルギー変換効率にも限界あるだろうけど、あたおかだからなぁ〉

〈↑その一言、万能過ぎるw〉


 うぅ……。

 ドンドンと人外扱いをされていく。

 人の世で、人を愛し、人に愛されて生きろ。

 ジジイの遺言にして、天心無影流の教えに逆らわないように気を付けねば!


「――という訳で、ボス部屋! 愛すべきミノタウロス君、ちょっとだけお肉を頂戴!」


 最早、慣れ親しんだ別荘――Dランクダンジョンのボス部屋。

 その重々しい扉を開け放つと――中央に牛頭の怪物、ミノタウロスが立っていた。


 怖がらせる趣味はない。

 傷はいずれ回復するだろうし、ちょっとだけ生きる為にお肉を拝借!


 サッと、手刀で片側の腿から下を頂戴する。

 残酷なようだけど、食った食われたは自然の常!

 ちゃんと残さず、美味しく頂きますからね!


「よし、これだけ大きな肉があれば、腹も膨れ――あぁ!? 間違えて倒しちゃった!?」


 肩に重々しい肉を担ぎ上げたが――魔素になり霧散。

 ミノタウロスを見れば、魔石を残して消えている。


「与えるダメージが、大きすぎた?」


 おかしい。

 今までなら、これぐらいの力で良かったはずなのに。


「もしかして……。俺、強くなってる?」


〈これ以上、強くなるとか……地球でも壊すの?〉

〈魔王でも倒せそうだけどw〉

〈いや、上には上がいるんだろ。世界のSランク開拓者とか、姉御とかw〉


 コメント欄も、別の意味で盛り上がっている。

 茫然自失ぼうぜんじしつとする俺は置いておいて、だ。


 う~ん。

 心当たりがあるとすれば、Aランクダンジョンで正確かつ最短に、大量の敵を倒す。

 その死線を越えたぐらいだろうか?


 Sランクダンジョンに居る時は、兵法へいほうを使って一対一か、自分が有利になる状況を作る事にも余念がなかったからなぁ。

 当然、攻撃が拡散せず鋭くなったり、局所へ浸透しんとうするように使い方が上手くなれば、自ずと威力も向上する。


 嬉しい悲鳴、と言えるだろね。

 食材がゲット出来なくなったのは悔しいけどさ。


「く……。し、仕方ないっすね。食料庫で、オーク肉を大量に狩ってきましょう!」


 ボスを一度倒すと、暫く復活しない。

 ボスの間を眺めていても、当然のように復活する様子もない。

 それなら、別の食材を探すしかない!


 ここには食糧採取に、うってつけの場所がある。


「俺の食材の宝庫! 着きました!」


〈魔素の吹き出し口、モンスターの食料庫なwww〉

〈あたおかの食料庫と言っても、最早過言ではないw〉

〈自然の摂理って残酷だなw〉

〈養殖場みたいに言うなwww〉

〈俺が突っ込んだら、逆に食われる自信がある〉

〈↑Cランクパーティでも、そうなる可能性は高いから安心して〉


 そう、ここは魔素がダンジョンから吹き出て――絶えずモンスターが生まれ落ちる場所だ。

 俺が最初、多数対1でタイムアタックチャレンジをした場所でもある。


 嬉々として、モンスターの姿を探す。

 もう、空腹でギュルギュルと鳴っている。


 だが――。


「――え? な、なんで!? なんっじゃ、こりゃぁあああああ!?」




―――――――――――

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