生き別れの妹とダンジョンで再会しました 〜10年間ダンジョン内で暮らしていたら地底人発見と騒がれた。え、未納税の延滞金?払える訳ないので、地下アイドル(笑)配信者になります〜
第197話 120点のうちの100点は、やり終えるだけを指す
第197話 120点のうちの100点は、やり終えるだけを指す
そう、120点と自分で認める為に――過剰なまでの完璧を求めてしまう。
それが深紅さんの心を、誰よりも厳しく締め付けている。
「深紅さん。……人見知りで10年も人間関係から遠ざかっていた俺ですが……少し、思った事を言わせてもらいますね?
サイクロプスは余程棍棒の攻撃が効いたのか、まだ横たわったまま。
相当長く気を失っているなぁ。
モンスターに脳があるかは知らないけど、
本当はこの隙で、楽に止めをさせるんだけど――正直、サイクロプスを倒すだけでは片手落ち。
真の勝利は――深紅さんが自分の過去から課している
深紅さんの本音に触れ、深紅さんを過去の呪縛で雁字搦めになっている状態から解放出来るチャンスは――普段は隠した心を
だから俺は、まるで教官のように
自分の事を棚に上げ――理想とする綺麗事を。
教官や教師だって、
でも生徒に語り聞かせて説教をするのは――そうした方が良いという綺麗事を知っているからだ。
だから俺は――この頑張り屋で自分に厳しい子に、教官らしく綺麗事や不完全な生き物としての説教をする。
「なんで何時も、深紅さんは120点の戦闘や配信をしなきゃって気負っているんですか?」
「そうしないと、全てをなくす気がするから……。誰よりも頑張って、今の実力が足りなくても、少し先の未来では何者にも負けない。奪われない強者になっている。そう有る姿勢を貫かないと、見捨てられちゃうからです……」
そう言う過去があったんだろう事は、
でも――世の中の心配毎の8割が現実には起きないように、大いなる思い込みもある。
「そんな事はないんですよ? 気負わず元気な深紅さんを、ファンは視聴しに来ているんです。――元気に目標に向かうぞと、笑って映像に映って無事に終えるだけでも100点の満足。残りの20点は、ちょっとした成長やら気付き、ハプニングを乗り越えるスパイスで十分なんですよ」
〈そうだよ! 頑張ってる姿は素敵だけど、弱味も見せて欲しい!〉
〈適当に生きてる姿は見たくないけど、そういう深紅ちゃんじゃないって分かってるから。目標に向かって頑張って動いてるだけで満足。過度に気負って追いこまれてるのは、見てて辛い〉
〈ワイは元気に笑ってる姿を見られるだけで十分。生きててくれて本当に良かった〉
「そんな……。でも、ウチは責任を……。もう、失わないように完璧でないと……」
「誰も一切の弱味を出さない完璧さなんか求めてないんですよ。そんなものを求めている人がいたら自分の事を棚に上げすぎか、スーパーマンのどちらかですね。実際、それだけストイックな深紅さんなのに、トワイライトの中では一番個人チャンネル登録者数が少ないのは何故です?」
「そ、それは……。ウチのがアイドルとして可愛くないから、とか……」
「いや、それはないですね。みんなそれぞれ個性が違う可愛さ抜群ですよ。当然、深紅さんもメッチャ可愛いです。……それ程に気負われると心を許して弱味を見せてももらえないのかなと……。かえって悲しくなって点数も自ずと下がるのが、近しい人なんですよ?」
大企業の雇用主とか、数字しか見なくて社員の顔すら知らない利害関係の人なら別だけどね。
友人だとか、家族だとか、ファンだとか……。
そう言う関係の人が自分に完璧を追い求めすぎて自己肯定感が低くなっていたら、凄く悲しいよ。
「ウチは……実際に邪魔者扱いされて来たんですよ。厄介者扱いされたり、逆に親切を装うお節介で、自分の思うとおりにしようって人とか……」
「そう言う人に、自分の意見を伝えて助けて欲しいと言いました? 世の中は善人ばかりじゃないですけどね。でも……意見を伝えた人たちの中に、ちゃんと深紅さんを助けてくれようとした人は、誰もいませんでしたか?」
「ウチも意見を伝えて来ました! でも、結局子供だからって――……。ぁ……」
深紅さんは最初、混乱したように否定していた。
でも何かを……誰かとのエピソードを思い出したのか、尻すぼみに声が小さくなり――。
「――オーナーは……私が助けてって言うのを、待っててすらくれました。どう言う気持ちだから、どう助けて欲しいのかって……。結局、弱くてお荷物扱いされて、捨てられるのが怖いから、一方的な『助けて』は……。
意見を言って、それでも今の関係がある。
そこまで気が付けてれば、もう充分かな。
だって――実はもう、『助けて』と言う意思表示は出来てるんだから。
―――――――――――
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