第167話 お花摘みぐらいしたくなるわよ、人間だもの

 そうして時は過ぎ――。


「――う~ん……。皆さん、そろそろ帰って来ましたね。学教やお仕事、お疲れ様です」


 そう、時刻は――月曜日の午後10時を超えていた。


 もうね、丸々24時間以上も耐久してますよ……。

 とは言え、ちまちまと……1時間に1体。


 合計でまだ24体しか倒してない。


 普通の開拓者より低い確率――不運と白星のダブルパンチの俺では、出ないのも当然だった。

 流石にお腹が空いたなぁ……。


「――ドローンに積んである水、心もとなくなったなぁ……。あ、そこに水があるじゃん」


〈それ神聖な水じゃないの?w〉

〈流石に1日も経つと突っ込み疲れ〉

〈人間が飲んで平気……。そうか、あたおかはモンスターを喰う奴だ。検証にならんなw〉


 酷い言われようだ。

 でも、これは――モンスターの血肉と似ている。

 魔素を中心にしているけど、他にも色々と混ぜた水な気がする。


 俺が落ちていたダンジョンとは、また違う成分っぽい匂いと味だな……。


「うん、軟水ですね! 口当たりが柔らかいです!」


〈そう言う事を聞いてないwww〉

〈神聖な水を飲むという神々しい光景の筈なのに、なんでこんな雑多なボトルに突っ込むかなw〉

〈折角の聖なる泉が、その辺の川扱いかwww〉

〈しかし案の定出ないなぁ……。気持ちは分かるけど、白星を1回預けてからチャレンジすれば?〉

〈↑確かに。義理は十分に通したからなぁ……。気持ちは分かるけど、受付に1回預けに行く選択肢もそろそろ考えるべき〉


『……妾だって好きで不運にしている訳じゃないもん。……そんな、酷い』


 あぁ~……。

 ちょっとイジられ過ぎたのと、本人も何気に不運をまき散らしてるの気にしてるのよね。

 責任感じて、本格的に落ち込んじゃった。


「俺は――このチャレンジは、白星を持っているからこそ意味があると思います! 白星も俺たちの仲間なんです! トワイライトの面々を守るアイテムを一緒に取るチームなんですよ!」


『あ、向琉ぅううう……。お主、お主ぃいいい!』


 うちの御神刀ごしんとう人情脆にんじょうもろいと言うか……。

 よく泣くよね。


「白星にはドッペルゲンガー戦でも助けられてます。困った時の神頼み――普段から身の丈に合わぬチート神器にポンポン頼れちゃ、俺が成長しないっすよ。とは言え……この1時間スパンが空くのは暇ですね……。流石に話題も尽きて垂れ流し配信みたくなりつつありますからね……」


〈そうねw〉

〈幻想的な風景でも、ここまで代わり映えしないとなw〉

〈戦闘も正直ユニコーンは飽きて来たな。まぁ職場に居る間は視てないんだけどw〉


 視聴者さんも飽きつつある。

 実際、同時接続者数もかなり減っている。

 耐久って累計は多くなりやすいけど……同時接続者数は減るよなぁ。


 それはそうか。

 何時出るか分からないアイテムをずっとディスプレイの前で視ているより、後で編集された動画を視れば良いと思うだろう。


 いい加減本当に、アイテムをドロップさせたいんだけどなぁ……。


 マルチバース社の技術開発局長も、そろそろ日本に到着しているだろう。

 なんか急行して向かうとか言ってたらしいし……。


 ユニコーンの一本角をゲットしても、俺が東京に戻るのに12時間ぐらいはかかる。

 飛行機料金は、まだスパチャや広告料金が入ってないから手持ちが無いし……。

 帰りにそれだけを目的に魔石を狩るのもなぁ……。


「……あれ? と言うか――漠然ばくぜんと待ってないで、1時間スパンの間は普通に攻略してれば良かったんでは? そうすれば、結構な収入を得られたのでは!?」


〈体力温存してるのかと思ったw〉

〈気が付いてなかったのか!? 東京から知床まで空を駆けたらしいから、体力を温存してるんだと思ったw〉

〈今更感が凄いw もう同時接続者減っちゃってるよw〉


 そうだよねぇ……。

 気が付くの遅れちゃったなぁ~。


 まぁ、いっか。

 今回のメインはあくまで――ユニコーンの一本角。


 色々と要素を詰め込んで効率良くやるのは、カメラが回ってない時で良いさ。


「……ん?」


 あれ、なんか――お腹が痛い?

 なんか1度そう思うと――メッチャ痛い!


「あの、なんか……。水に当たったかも? お腹、メッチャ痛いっす!」


〈え、マジで!? やっぱ特別な水が合わなかったのか!?〉

〈マジかよ!? ここに来てピンチ!? スゲぇ地味だけど海外とか衛生状況が変化すると深刻な問題よなw〉

〈治癒魔法は効かないの!?〉


 治癒魔法をかけているんだけど……効果がない。

 と言うか、効いてるんだろうけど――体内に原因が留まったままだから、身体が原因に適応するまで、痛みが繰りかえしてる感覚がする!


 どうしよう……。

 やむを得ない事だと思うんだけど、カメラが回ってるからと1日我慢していたし――。


「――トイレ、めっちゃ行きたい」


〈ワロタwww〉

〈でも開拓配信者も偶にあるらしいからなw 人間だもの〉

〈他の開拓者は一時的に画面を切り替えて用を足してるぞw〉


「い、良いんすかね? 俺、配信中にトイレするの初めてだから……。凄い抵抗が……」


〈ミュートと画面切り替え忘れるなよ?w〉

〈音声と映像が流れたらBANも有り得るからなw〉

〈こういう時、最新の高性能ドローンが難いw〉


 うう……。

 配信中になんて、抵抗があるけど……。

 ミュートはなんとか分かる。


 でも――画面切り替えとか、どうやるの?

 その操作方法は知らないよぉおおお!


「う……。そうだ! 俺には魔法がある! ドロン!――では、ちょっと失礼!」


 俺は岩肌を触り、ドーム状の空間で覆う。

 ドローンについてる収音マイクはミュートにして、と……。

 これで映像は岩のドームを映しているはずだ。

 自然の摂理で出た物は、岩の奥深くに埋めて置けば良い!


〈こんな魔法の使い方初めて見たw〉

〈トイレ事情の革命w〉

〈あたおかならではだなw〉


 左手の配信リンク式腕時計からは、音声が流れている。

 でも俺サイドから出る音声はしっかりとミュートになっているみたいだし……良いか。

 水魔法で清潔に洗って、汚れたものは穴に埋めて――っと。


〈あたおか! あたおかぁあああ!〉

〈ヤバい、これはヤバいってぇええええええ!〉

〈なんじゃこりゃああああ!〉


 え、なんか視聴者の様子が――おかしい?

 まさか、俺のセンシティブシーンが見えてる!?



―――――――――――

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