第97話 妹とアフタヌーンティー!

「――よし、習い事は終了! 1回、寮へ戻ってシャワーと着替え!――そして、いよいよ美尊とのアフタヌーンティーだ! うわぁ、楽しみだなぁ~」


 今日は学校が休みの土曜日だが、美尊は午前からお昼過ぎまで予定があるそうで現地集合にしたいと言われている。

 なんだか、デートの待ち合わせみたいでドキドキする。

 大神家へ養子入りした後、両親や美尊と偶に面会が出来る日と同じ感覚だ。


 シャワーで丁寧に身体を洗い、髪型もなんとなく調べてセット!

 姉御にもらった洋服に身を包んで――準備完了!


白星はくせい、どうかな?」


『良いのではないか? 知らんけどな』


 俺が口で問いかけたからか、白星も念話ねんわではなく声で返してくれた。

 刀から声音が出るのも、不思議な気分だけど……。


「知らんけどって……。そう言えば、最近は白星喋ってないけど……どうしたの? ダンジョンに落ちてた時は、殆どずっと話しかけてくれてたのに」


『向琉は人の世に戻ったのじゃぞ? わらわとは10年間、存分に話した。今は人の世とのえにしを結び直す時。妾が邪魔をするべきではない。そうじゃろ?』


 白星……そんな事を考えていてくれたのか?

 確かに、俺はまだまだ地上で生きていた人たちとコミュニケーションが不足している。

 白星の言う通りかもしれない。


『それに、ネットに侵入してゲームをやるのも楽しいからのう。正直、話しかけるな。妾はネットゲームとソーシャルゲームで忙しい』


「ねぇ、それどういう原理なの? 俺のパソコンやスマホにゲームが勝手にインストールされてたのって、白星の仕業?……おい、黙るなよ!」


 照れ隠しなのか、本気なのか……。

 まぁ良い。

 素直に好意と思って甘えておくか。


 時計を見れば、時刻は午後1時40分。

 待ち合わせ時間にはまだ余裕があるけど、ゆっくり街を歩いて先に待っていよう!

 そうして、俺は待ち合わせ場所に1時間前に着いた――。

 待つ事30分。


「あ、お兄ちゃん!」


「おお、美尊!――うわぁ、可愛い。制服も似合うけど、私服も良いね! やっぱスラッとしてるからかな?」


 お出かけだからか、部屋着よりもオシャレしてくれてる!

 朝、登校前にご飯を食べる時は制服姿だし……これは新鮮だ!


「褒めすぎ。お兄ちゃんこそ、凄くオシャレ。身長高いし、身体も引き締まってるから格好良い」


「そ、そう? やっぱり、筋肉は需要があるのかな?」


「う~ん……。私は嫌いじゃないけど……」


 あ、あれ?

 なんか気まずそうな顔をしてる。


「昨日の配信みたいに筋肉を強調するのは……偶にぐらいが良いかも?」


「え、ダメだった!?」


 昨日、フィジークみたいにしたのはメッチャウケたと思ってたのに!


「ダメじゃない。私はお兄ちゃんの筋肉は歴史を感じて好きだけど……。女の子だと、盛り上がった筋肉は怖くて苦手って子も多いから」


「そ、そっか……」


 怖くて苦手な子が多いなら、無視は出来ないな……。

 確かになぁ。

 最近人気なアイドル系を検索すると、中性的な細い身体をしている人がヒットする。

 一部には凄くウケるけど、大多数には苦手だと思われる事は沢山あるからなぁ。


「言いにくい事を言ってくれてありがとう。気を付けるよ。……それじゃ、そろそろ時間だし行こっか?」


「うん。お店の予約、ありがとう」


 微笑みながら、お礼を言ってくれる美尊と隣り合い、カフェへ向かって歩く。

 道中、他愛もない雑談に花が咲いた。


 毎朝、話せているとは言っても――まだまだ足りない。


 朝のほんのちょっとの時間しか話せていないし、空白の時間を埋めるには時間が足りなすぎる。

 そうしてカフェに到着し、席へと案内された。

 お高い店なだけあって、凄く落ち着くし綺麗な内装だ。

 ケーキスタンドに乗った軽食を食べながら美尊と世間話をしてお茶を飲む。


「お兄ちゃん。折角だし、一緒に写真撮らない?」


「写真? 良いね!」


 俺たちがインカメラで写真を撮ろうとすると、ウエイトレスさんが気を遣って「お撮りしましょうか?」と声をかけてくれた。


 俺と美尊はオシャレなケーキスタンドや、お茶の乗ったテーブル上で顔を寄せカメラへ向かい微笑む。

 ウエイトレスさんが撮ってくれた写真を見ると、美尊も俺も凄く良い笑顔で写っていた。

 撮り方も上手いのかな?


「これ、俺にも送ってくれる?」


「うん。今送るね。……あ、SNSにも載せて良い?」


「俺は良いけど……大丈夫なの? ファンの反応とか」


「うん。今は皆、理解してくれてるから。さっきも『これからお兄ちゃんとデート』って投稿したら、楽しんで来てってコメントばっかりだったし」


「そっか……。良かった」


「これも全部、愛さんのお陰」


 美尊には、姉御が俺たちの為に憎まれ役を演じてくれた流れは説明してある。

 複雑な胸中ではあるが、姉御が傷ついてまで作ってくれた関係を無駄にしてはいけない。


 許可する流れが途切れない間に、兄妹が仲良くしている写真を投稿して、この在り方が当然としておくのは大切かな?


「じゃあ、一緒に投稿しようか。俺も同時に投稿するよ。一言添えてね」


「うん。それ凄く良い」


 美尊から送られて来た写真に一言添え、写真を投稿する。

 すると、直ぐにコメントが付いた。『2人とも良い笑顔! 兄妹仲良く出来て良かった』、『本当に幸せそう。美味しそうな物も食べられてて良かったですね』など……。


 俺たちの幸せ。姉御に搾取されて辛い思いをしていないかと案じていたけど安心した。

 そんな内容のコメントが多かった。


「姉御はさ、俺や両親が居なくなった後……美尊の親代わりになってくれたんだよな?」


 ダンジョン災害で亡くなったであろう両親の事は、1度ちゃんと話さないといけないと思っていた。

 中々、慌ただしい朝食の場でその話は切り出し難かったんだけど……。

 この場なら、じっくりと話せるだろう。


 両親の話が出ても、美尊はもう苦しみを乗り越えたのか、悲痛に顔を歪めるでもなく儚げに微笑んでから口を開いた。



―――――――――――

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