第21話 初開拓配信!(7)いざボス戦!

〈おぉ~ミノタウロスだ!〉

〈ってかボス部屋前で誰かと合流しないのか?〉

〈ボスまでソロ攻略とか……あたおか〉

〈普通、狭いダンジョン内は別行動で広いボス部屋でパーティメンバーと合流するよなw〉

〈さっきの戦闘見てると平気だと思うが、一応気をつけて! 一撃喰らうのが致命傷になるかもだし〉


 成る程ね……。

 洞窟のように狭いダンジョンだと、パーティである利点は薄い。でもこの部屋のようにボス部屋は広いのが当たり前なら――パーティを組んだ方が安全だろう。


 まぁ10年間ダンジョンで孤独に生活していた『友なし』の俺とパーティを組んでくれる人なんていないけどね。美尊も同じ事務所の子と『トワイライト』ってパーティを組んでるみたいだし……。


 良いさ、俺には――白星が居るからさ。


 さぁ……熱血漫画展開、やるぞ白星! 


 ――無駄じゃと思うがなぁ……。


「くっ……あれは、なんて強大な力なんだ。これでは……今の俺の力ではッ!――白星! その力を、俺に貸してくれ!」


 俺は必死に白星を鞘から抜こうとするが――やはり、鞘から抜けはしない。……まぁ元々、抜こうとしてないんだけどね。


〈なんか寸劇始まった?〉

〈いや、割とガチなんじゃね? やっぱ素手はキツいみたいなw〉

〈地底人、がんばえー!〉


 一部にはバレてるけど、続行だ。

 今更後には引けない。……若干、恥ずかしくなって来たのは秘密。


「――くっ……。白星、今の俺が持つ覚悟では……君は手を貸してくれないと言うのか!?」


「ふ、ふん……。妾の力が欲しいか?」


「欲しい……。俺は――力が欲しい!」


「――ならば、妾に覚悟を示してみよ」


「……良いだろう。見ていろよ、俺の覚悟!……ミノタウロス、俺は逃げない! うぅわぁあああッ!」


〈草〉

〈演技力高いな〉

〈白星先生、完全協力w〉

〈でも、素手でミノタウロスに突っ込んでったぞ?〉

〈マジのシリアスなのか戸惑うんだが〉


 まだ視聴者は懐疑的らしい。


 でも――ここで俺がミノタウロスの強靱な肉体が振るう斧に敗れれば、見る目は変わるはず! そして覚醒する俺! うん、完璧なシナリオだ!


 ミノタウロスは直線的に駆け寄る俺に、斧を力一杯振り下ろしてくる!

 無謀にも俺は、その斧に己が拳を打ち付け――。


「――ぇ……」


 バガァンッと。

 大きな破砕音を残し――ミノタウロスの斧も、ミノタウロス自身も魔素となって霧散してしまった。


 余りにもダメージ量が大きかったのか、魔石すら残っていない。更に運悪く、ドロップアイテムすら落ちていない。


「えぇ……」


 ――じゃから妾は言ったのに……。こ、今回は、妾は悪くないよな!? 何もしておらんよな!? イジメられんよな!?


 思わず、あんぐりと口を開き呆然としてしまう。


 いやいや、仮にもボスじゃん? Dランクダンジョンとは言えさ……。返してよ、俺の渾身のシナリオと熱意、演技を返してよ! 視聴者だってガッカリしちゃうよ!


〈草www〉

〈これはヒドいw〉

〈寸劇でアレだったけど、ボス瞬殺はエグい〉

〈待て待て、ボスが魔石もドロップアイテムも無いの!?〉

〈えぇええええ! ボスは超高ドロップ率だろ!? 何も落とさないの、初めて見たw〉

〈不憫が過ぎるw〉

〈返済が遠のいたぁあああwww〉

〈あの……地底人とか、あたおかとか呼んですんませんした。大神向琉さん〉

〈いや、やってることは『あたおか』で間違いないw〉


 もう……。なんでこうなっちゃうんだよ。

 俺、一生懸命にやったじゃん!


 ガクッと四つ這いになり落ち込む俺がおかしいのか、コメント欄は更に盛り上がる。


 うぅ……。まぁ見てくれた人が楽しんでくれたみたいだし?……それで良いよ。


「…地上へ帰ります。もう全速力で帰ります」


〈あからさまに凹んでるw〉

〈笑っちゃ行けないんだろうけど、すんませんw〉

〈可愛いw〉

〈元気出せよ! 今、SNSで『#あたおか』がトレンド入りしたぞ!〉


「え? トレンド? なんですか、それ?」


〈知らんのかw まぁ地底に住んでたからなw〉

〈今、流行というか話題になってるよって事です〉


「俺が流行!?――うわっ本当だ! 皆さん、僕の視聴者数、4万人を突破しているじゃないですか! 登録者数も、6万人!?」


 今日の配信開始時点では、登録者2万人だったはず!――と言うことは、この配信中に新たに4万人もの人が登録してくれたという事だ! ナニソレ、ちょっとした市町村を飲み込むレベルじゃん!


「やったぁ! じゃあ、ご機嫌に帰りましょう!」


〈おめ〉

〈おめ〉

〈おめでとう〉

〈機嫌直ったw〉

〈お兄様可愛い。ハァハァ〉


 僕はルンルンで地上へダッシュして戻った。

 視聴者の絶叫マシーンのようだとの反応が嬉しく、かなりアクロバティックに無駄な動きも入れ――あっという間に、地上ギルドへと通じる階段前広場へと到着した。


 リサーチの結果、多くの動画で恒例となっているコーナーがあるらしい。


 そこで僕も同じように、『今日の戦果コーナー』をやってみる事にする。



―――――――――――

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