第15話 初開拓配信!(1)

「――では、行って来ます!」


「はい。くれぐれも気を付けて!」


 俺は川鶴さんにそう告げ、ダンジョンに降りる階段へと繋がる金属製扉を開いた。


 奥に行くにつれ暗くなっていく階段。


 視界30メートルぐらいは配信用ドローンのお陰で昼のように明るい。50メートル先からは徐々に薄暗くて見えにくいかな?


 階段を降り、適度に広い場所へと降りる。


 時刻は配信予告をした18時に丁度なる所。タイミングはバッチリだ。


 ――いよいよか。向琉あたる、しっかりせいよ? 妾をスターにするのじゃぞ?


 うん。白星はくせいをスターにするはさ、わけからんのよ。……でも人気配信者になって借金62億円を完済! まずは登録者5千人を達成して、配信の収益化を目指すぞ!


「……あれ?」


 み、見間違いかな? 腕時計から配信しようと思って自分のチャンネル覧を見ていたら――『地底人チャンネル。登録者数2万人』とか書いてあるんだけど……。


「収益化、もう出来るじゃん……。あ、後で川鶴さんか美尊みことに聞いてみよう。地底人チャンネルって名前も変えたいし。気を取り直して――配信開始!」


 いよいよ、第1回目の配信が始まった!

 皆、観に来てくれるかな?

 うわぁ~、緊張する!

 予定では往復1時間半内で行ける所まで行くとなっているけど、心臓持つかな?


〈1こめ〉

〈きたああああ〉

〈地底人開拓者!〉

〈1コメ取られたぁあああああ〉

〈うおおおおおおお〉

〈楽しみ!〉

〈イケメンお兄様!〉


 うわっ、来た! いきなり凄いコメント数! えっと、下調したしらべした内容だと、まずは……。

 そう、挨拶あいさつだ! 人間関係でも、まずは挨拶! 挨拶に始まり挨拶に終わるは基本だよね!


「み、皆さん、こんばんは! 大神向琉おおかみあたるです! 決して地底人じゃありません! 今日はそれだけでも覚えて帰って下さい!」


〈草〉

〈おおかみ、あたる? 知らない人ですねぇ〉

〈地底人のインパクトが強すぎるw〉

〈地底人か借金王だなw〉

〈www〉

〈緊張し過ぎ可愛いw〉

〈配信始まった瞬間、帰って下さいw〉


 しまった。

 視聴に来てくれた瞬間に帰って下さいは失礼だった! 芸人さんが登場する時、たまに言っているのを真似したんだけど……。いきなりミスった!


「ああ、帰らないで下さい! さ、早速ですがダンジョンに来ています! 音とか映像、大丈夫ですか?」


〈だいじょぶ〉

〈画質と音声、スゲぇ良いな。VRまで対応してるじゃん〉

債務者さいむしゃ配信の癖に、配信環境良過ぎるw〉


「配信機材は全て、事務所が用意してくれました! 社長兼マネージャー様々ですね!」


〈企業所属ってズルい〉

〈いいなぁ。多分、最新機材だろ? いくらしたんだろ〉

〈うらやましけい〉


 なんか配信環境の自慢みたいになってしまった。

 エンタメとして、これは良くない。折角せっかく、視に来てくれた視聴者を楽しませなければ! 川鶴さんともポイントや流れを打ち合わせしたけど、まずは……攻略場所の紹介だ!


「本日、開拓攻略するのは、既に攻略済みのダンジョンです! まぁFランク冒険者なんで当然ですね。高いランクの未到達ダンジョンには、そもそも潜れませんから」


〈それは仕方ない〉

〈初配信だしな〉

〈10年ダンジョンで生きぬいたんだろ? 物足りないんじゃね? Eランクぐらい挑戦すれば?〉

〈そうやって自分のランクより上に挑んで死亡する開拓者が急増するんだわ〉

〈シャインプロは手堅く堅実に成長させるからな。無理させんだろ〉


「正直俺は、魔物の危険度ランクとか良く分からないんですけど……。エンタメで皆さんを楽しませるには、スリルとスッキリ感が大切と聞いて――今日は都内のDランクダンジョンへと来ています! 今の俺が来られる最高ランクですね!」


 俺がにこやかに紹介すると、コメントの流れが一瞬止まり――。


〈はああああああ!?〉

〈初で2階級上のダンジョンにソロ!?〉

〈いやいや! 堅実はどこ行ったw〉


「おお! 皆さん驚いてくれていますね! これは中々、エンタメとして幸先の良いスタート! それでは早速、進んで行きましょう!」


〈待て待て! 死ぬぞ!?〉

〈そもそも、この地底人が発見されたのってSランクダンジョンだろ? 実は余裕なんじゃね?〉

〈でもそれは結界が張られてる敷地に隠れてたからってSNSに書いてあったぞ?〉

〈えぇ……〉

〈どうなるのか分からん! 美尊ちゃんに借金押しつけて死ぬなよ!?〉


 コメント欄が、かなり議論で盛り上がっている。


 良いね、良いね!

 こういう議論で盛り上がるの、エンタメっぽい!



―――――――――――

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