生き別れの妹とダンジョンで再会しました 〜10年間ダンジョン内で暮らしていたら地底人発見と騒がれた。え、未納税の延滞金?払える訳ないので、地下アイドル(笑)配信者になります〜
第110話 悲しい光景と思えるのは、自分が恵まれているから
第110話 悲しい光景と思えるのは、自分が恵まれているから
旭プロの開拓者たちが口にする言葉に、
「ま、魔石ノルマ? 罰則?」
なんだ、それ?
そんなの――シャインプロでは、聞いた事もない。
すると俺の腕に抱かれた男性が、顔を暗くしながら口を開く。
「旭プロは……望めば、何処までも高ランクの装備が貸与されるんです。その代わりに課されるのが、魔石をいくら稼いだかのノルマです。ノルマを達成しつづければ、ボーナスも出て好待遇にもなっていく。ノルマに届かなければ、
「そ、そんなのって……。ノルマなんて、馬鹿らしい話があるんですか!?」
「芸能事務所でも、チケットノルマはあるでしょう? 売れっ子は別口として、役者やアーティストなら当然のようにノルマはあります。……旭プロでは、そのチケットが魔石に置き変わっただけなんですよ」
なんだよ、それ……。
命がかかっているのが、開拓者なんだぞ?
「私は学園卒業後、一般企業に勤めた出戻り開拓配信者だったんですが……。会社を存続させる為にノルマがあり、達成出来なければ賞与が削られる。どうせクソしかない労働なら、より高収入が得られるクソを選んだ方がマシ。まして高ランクの装備を借りてドンドンと高ランクへ登り詰め、高い報酬が得られるのならば、と……。その結果が、この左手を失う結果ですよ」
ノルマを課すことで会社としての利益とか、より必至になるとか
それは、良い事ばかりじゃないだろう!?
現に今、人が死に――民間人が襲われる危険にまで事態が発展しようとしてるじゃないか!
「俺も助太刀を――」
「――ふざけんな! テメェに魔石を横取りされてたまるか!」
「ダンジョンでは先に交戦を開始した者にモンスターと戦う権利がある! 一切の手出しは無用に願う!」
戦いの最中で殺気立っているのもあるのだろが、冷たくあしらわれた。
〈旭プロのやり方、マジでクソ〉
〈ふざけんなよ! テメェらの利益で国民まで危険に晒すな!〉
〈こんな異常なノルマや経営が認められるの? マジで最低〉
〈お兄様になんて口の利き方だテメェらぁあああ! 表でろぉおおお!〉
俺の左腕から、旭プロのやり方や開拓者パーティたちへの苦情が次々と機械音声で流れる。
だが戦闘音に紛れており、戦っているヤツらの耳には届いていないだろう。
そんな時、スマホが震動した。
「……川鶴さん?」
うちのマネージャー兼社長――川鶴さんからだ。
内容は『事後処理は事務所に任せて、人命を優先して下さい』。
「はは……。俺、シャインプロに拾ってもらえて良かったなぁ……」
改めて姉御に感謝しつつ――俺は、旭プロの囲いを突破しかけているモンスターを
ちゃんと魔石へと変わるよう手加減をして、だ。
「てめっ!? どういうつもりだ!」
ダンジョンのルールでは、確かに先にモンスターと遭遇した者に戦闘の優先権がある。
だけど――この状況でそんなルールには、拘ってられないだろう。
ダンジョンの中で開拓者が生き死にするだけなら……勝手にすれば良い。
でも、俺たちの後ろには――非開拓者。
川鶴さんや俺のサポーターのような民間人が居るんだから。
「俺は魔石の権利を主張しません! 危うくなった場所を手伝うだけです!」
「ま、マジか!?」
「分け前は要らねぇってのか!?」
そんな寂しい感情に胸が痛みながらも、俺は笑顔で答える。
「要りません! 俺がここまで担当した5カ所にも、
「お、おい。それは嘘じゃねぇんだろうな!?」
「よっしゃあ! そんな事を聞いたら、さっさとここを片づけちまわねぇと!」
「――ただし!」
俺は技をモンスターに叩き込みながら、言葉を続ける。
世の中は
シャインプロが恵まれすぎているだけで……。
それでも、1500体近い魔石に
「――今回の戦いで散ったパーティの仲間、重傷を負った人。その家族へ十分な
俺の言葉に、旭プロの開拓配信者たちは複雑そうな表情を浮かべる。
人情としては理解が出来るけど――飢えている自分たちの腹を満たしたい。
そんな動物的な欲求と、人としての理性が
「俺が倒してきたモンスターは1500体以上!
戦いに身を躍らせながら俺が続けた言葉で――その場の士気が上がった。
それならばと俺の参戦を了承して――武器を振るい、魔法を放つ開拓者たち。
優しさだけでは、人は食っていけない。
武士は食わねど
実際は……スラムなどの場では、
そんなのは海外のスラムへ修行に行った時に、理解していたつもりだったけど――。
「――悲しい光景っすね……」
事務所による
―――――――――――
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