第55話 いざ、Cランクダンジョン!

 SNSでチャンネル登録者数10万人突破感謝にサプライズを用意していると告知こくちし、配信開始の時間を待つ。


 もうすでにダンジョン出入り口の階段前におり、後は予告している時間が来るのを待つだけ。

 そんな時間に――スマホが震動した。


「ん? 美尊みこと?」


 自分の配信が終わったんだろうか?

 女子校生たちは、学校が終わると代わる代わるに配信をしているようだけど……。

 今日は美尊の配信を見られなくて、残念だったな~……。

 その代わりに――視聴者を楽しませる事が出来るイメージソングを完成させられたはず。

 そう考えながら、美尊からのメッセージを開くと――。


『10万人突破おめでとう。サプライズを楽しみに視てる。今日の配信も頑張ってね』


 簡素かんそではあるけど、心がもった言葉が目に入った。


 俺たち兄妹が仲良くするのをこころく思わない世間の声があるから……美尊とは、いまだ十分に話す時間を作れていない。

 でも、俺がみんなにもっと認められたら……。

 その時は――心から視聴者にお願いをすれば、きっと想いが伝わるはず。

 認めてもらえるはずだ。

 だから――。


「――お兄ちゃんも、頑張るからな」


 まずは、俺が人の世で認められなければ!


 俺が地上に出て直ぐに姉御が発注はっちゅうしてくれていた――公式イメージソング。

 時期尚早じきしょうそうにも程がある。


 相当に信じていてくれないと有り得ないような、楽曲制作陣へのスケジューリング。

 その無理を通す為の――割増料金わりましりょうきん


 つまり、この10年で姉御が手に入れた銭闘力せんとうりょく

 でも――お金だけじゃない。


 この仕事をやって良かった。この瞬間に立ち会えて良かった。そう思って欲しい。

 俺は――そうやって、皆の期待に応えたい!

 自分の時間を裂いて視に来てくれる皆と――愛し、愛されたい!

 お金は二の次! 

 今日の配信――新たなダンジョンの開拓かいたくと、公式イメージソングのお披露目ひろめ

 ダンジョンで大袈裟おおげさなぐらいの演出をして、ド派手に盛り上げて行こう!


 よし、気合いが入った所で――配信の時間だ!


「――皆さん、こんばんわ! 大神向琉おおかみあたるです!」


〈あたおかぁああああああ〉

〈神配信の予感!〉

〈10万人突破おめでとううううううう!〉

〈お兄様ぁあああああああああ〉

〈おお! 今日は違うダンジョン!〉

〈突破記念サプライズ何やんの!?〉


 おお!

 配信開始と同時に、早速コメントがガンガン来てる!

 盛り上がる下地は既に出来てるぞ~!


「早速ですが――今日は登録者数10万人を記念して、シャインプロと豪華制作陣が丹精たんせい込めて作り上げた俺の公式イメージソングを披露したいと思います!」


〈うぉおおおおおおおおおおお〉

〈ちゃんとアイドルしてる! 地底人だった頃が嘘みたいだw〉

〈早過ぎだろwww〉

〈クリエイター陣、地獄スケジュールで涙目w〉

〈サプライズの発表早いってwww〉

〈もう披露ひろう!? 引っ張れよw〉

〈お兄様は打算抜ださんぬきでイケメン。CD100枚買います!〉


 発表が早いって突っ込み来てる!

 ふっふっふ……。

 流石に俺だって考えてますよ?

 こんなダンジョンの出入り口で――折角せっかくのお披露目ひろめをする訳がない!


「流石に俺でも、ここでいきなり曲は流さないですよ~!」


らしかぁあああああああああああああああ!〉

〈制作日数、数日だろ? 実はしょぼいんじゃね?w〉

〈ああ、お兄様に焦らされた。最高〉

〈あたおか信者もちゃんと、あたおかだなwww〉

〈良かった~あたおかなら、やりかねないと思ってた〉


 え?

 俺って……そこまで演出が分からないアホだと思われてたの?

 流石に心外しんがいなんですけど!


「えぇ~……っと。曲の方は、すっごく格好良いです! 例えるなら、戦国時代せんごくじだいをモチーフにしたパチンコが大当たりした時に流れる音楽、戦闘BGMみたいな? 俺はパチンコやった事ないから良く分からないですけど……そんな感じです!」


〈説明下手かwww〉

〈あ、一昔前からずっとある、傾奇者かぶきものの?w〉

〈あぁ~イメージいたわwww〉

〈CRあたおかフィーバー?w〉

〈分からん。その例え全く分からん!〉

〈分からんヤツはパチンコカスになれ。それかネットで音源聞いてこいw〉

〈よっしゃあ! 分からんから行ってくるわ! おとこやしてくる!〉

〈↑お前は絶対分かってるだろw もう金をかすの止めろwww〉


ただ……まずは、すいません!」


 バッと、カメラに向かい深々ふかぶかと頭を下げる。


 俺の頭に着いてるカメラで視ている人がもしいたら……アングル的に地面が映っているだけになるけどね。

 流石にこのタイミングでは、少し離れたドローンに着いてる、広い範囲を映せるカメラ視点で視聴しているだろう。


〈お? なんの謝罪?〉

〈完成は間に合わずに、とりあえず発表だけとか?〉

〈スケジュール的にそうだろなw チャンネル作ってたった3日だぞw〉

〈お兄様に頭下げられた。可愛いなでなでしたい〉

〈あ? テメェキャラ被り止めろ。私のお兄様を取るんじゃねぇよ。最古参さいこさんなめんなよ?〉

同担拒否勢どうたんきょひぜいが喧嘩始めたwww〉

〈それで実際、なんで頭を下げてんの?〉


 謎の勢力が喧嘩をしているようだけど……。

 コメントの雰囲気的に、ここは触れない方が良いようだ。

 話を進めよう。


「あ、はい……。実は、俺……。音痴おんちでしてね? その……俺のイメージソングに、歌声を入れられなかったんです」


〈草www〉

〈歌下手アイドルなんていくらでもいるだろw〉

〈加工しろよw〉


「あ、当初は機械でなんとかって話もあったんですけど……。その、機械でもどうにも出来ないレベルでして……」


〈最先端技術が、あたおかに負けたwww〉

〈俺も歌下手の民だからな、分かるよ〉

〈可愛い。お兄様好き!〉

〈ダンジョンの下には音楽ないんだから当たり前だろ。お前ら鬼か?〉

〈一般人とアイドル活動してるヤツを一緒くたに語るな〉

〈結局、歌えなかったならBGMだけって事?w〉


「い、いえ! それではひどすぎるので……。豪華制作陣が作った格好良いボーカロイド曲に、俺のセリフを挿入そうにゅうさせていただきました!」


〈お兄様のセリフ? 買う!〉

斬新ざんしんなスタイルだなwww〉

〈どうせ姉御とかシャインプロが無理なスケジュール組んでかねしぼって酷使こくししようとしたんだろ?〉

〈あたおか応援するぞぉおおお!〉

〈歌えないアイドルとか……。もう事務所退所じむしょたいしょ。アイドルの看板降ろして開拓者一本でやればいいのに〉

〈良いんじゃね?w まだ地上に戻って数日なんだから、歌は次回以降への楽しみだろw〉


 う、う~ん……。

 視聴者が増えたのは良い事だけど……。

 人数が増えた分、批判ひはんする人も目立つ。

 早くコメントが流れていっても、同じ人がいくつも批判しているのはバッチリ目に入るんだけど……。


 いかん、落ち込んでばかりじゃダメだ!


 俺を応援してくれる人――曲の制作に関わってくれた人、支えてくれた人、視聴してくれる皆の為にも……うつむいちゃダメだ!

 前向きに――笑って配信を続けよう!

 それが――人の世に認められる事に繋がると思うから!


「歌に関しては、俺の努力不足で……。その失態しったいくつがえためにも、今回はおのれに高いハードルをします!」


〈ハードル?〉

〈おい、何やらかすつもりだ?〉

〈あたおか、無茶すんなよ? お前は絶対になんかやらかす男だろ!?〉


「今日の配信目標はズバリ! ここ、『Cランクダンジョンを踏破とうはすると同時に、モンスターの大軍と激闘げきとうする最中さなかでの楽曲がっきょく披露目ひろめ』です!」



―――――――――――

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