第54話 開拓者アイドルって何?
「
「そうです。
でも……そうか。
視聴者の皆が俺を尊敬してくれているかは別として――なんらかの
「世の中、学校だろうと社会だろうと……現実はストレス社会です。アイドルとは――夜空のように暗いストレス社会で、人々に
「川鶴さん……」
そうか……。
自分が
そこで俺は――ずっと、命の
そんな俺なら……地下深くで生き抜いた俺なら、他のアイドルとは
それが人に愛され、人の世で生きる事に繋がるのならば――。
「――分かりました。……俺、歌ってみます」
苦手も、いつかは克服しなければいけない。
それが今――やって来ただけだ。
「ありがとうございます。それでは、カラオケに移動しましょう。実際に歌を聞いてもらってから会議をした方が会議も
「はい!」
俺は
苦手意識を
そうしてカラオケへと到着し、今回一緒に楽曲作りをしてくれる人たちへ、リモートで挨拶をしてから――実際に歌った。
魂を込め、気持ちを音に乗せ、腹から全力で声を出して――。
「――川鶴さん、生きていますか?」
返事がない。
いや、それどころか……リモート会議で繋がっていた方々も全員が伏せている。
ドッキリ?
俺が全力で歌い始めてすぐ、皆がこんな感じになってしまった。
「大神、さん……。声、大きいですね」
「はい!
「……全部、私が悪かったです。本当に失礼だとは思うんですが――今回は、今日中に曲を完成させなければいけないんです」
「え!? 今日中!? 俺の歌で、行けますか!?」
「……ごめんなさい。今回は、無理です。すいません、私が
「……ハイ」
だから言ったじゃん!
俺、歌が苦手だって!
そりゃ
でもハウリング音に負けないぐらい、気合いを込めて大声を出したのに!
「――え? あ、分かりました。では皆さん、その方向でよろしいでしょうか?……それでは、直ぐにお
リモート先から音声が返ってきた。
話の流れとしては――歌は今回ボーカロイドに任せてセリフパートを多めに入れ、そこを俺が担当するという流れになったようだ。
元々、姉御にこのような事態も可能性としてはあると言われていたから、セリフを多分に取り入れて楽曲として成立させる原案は出来ていたようで……。
これからボイトレでセリフ部分だけを
ボイス音声を組み込んで――曲は完成。
今夜の配信で、イメージソングのお
「大丈夫ですよ、大神さん。演技力は、最初にミノタウロスへと挑んだ時に見てますから。素晴らしい演技力でした。……気合いを入れすぎて大声を出し過ぎなければ、きっと上手く行きます」
ミノタウロス戦の演技って……。ああ、俺が白熱する戦いを演出しようとしたやつか。
成る程、演技は……
「さぁ、ボイトレスタジオへと移動しましょう。ふひっ……
中学時代の同級生は……俺が歌い出すなり、部屋から逃走した。
それでも川鶴さんは――最後まで、部屋に残っていてくれていた。……それだけでも、なんだか嬉しい。
今だってマネージャーとして、現実的な解決案を考えてくれている。
脚が震えているけど……。そんな素振りを見せたら失礼だと思っているのか、グッと力を込め歩こうとしているのが、
「分かりました! 全力で頑張ります!」
こんなに頑張ってくれるマネージャーが居るなら、俺は全力で応えたい!
それから配信の直前までボイストレーナーに猛特訓してもらった。
地上に上がってから
―――――――――――
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