第215話 羅針盤との顔合わせ!

「ここっすか……。デカくない?」


 やって来たのは、都内の閑静な住宅街。

 羅針盤は国内トップの一流開拓者パーティだから、狭い家じゃないだろうな~とは思ってたけど……。


 家の前に警備員が常駐しているとか、聞いてない。


「あの……。今日からここに住む予定の大神向琉なんですが……」


「大神向琉様ですね。お伺いしております。どうぞ、こちらへ」


「あ、はい」


 ビシッと動く警備員さんに、人見知り発動!

 ギクシャクしながら、厳重な門を通る。


 ほえ~……。

 高い塀の中だから、無機質な景色かと思ったけど……。

 植物が植えてあって、綺麗だなぁ。

 庭は大きくないけど、建物は3階建てかな?

 かなり大きい。


「こちらが玄関になります。引っ越し業者も到着次第、内線でお伝え致します」


「あ、はい。あの、ありがとうございました!」


 頭を下げる俺に頭を下げ返して、警備員さんは門の前で再び直立不動になった。

 う~ん。

 プロフェッショナル……。


 それにしても、引っ越し業者の車より早く到着しちゃったかぁ。

 緊張して電車に乗ってられないから、神通足で空を飛んできちゃったけど……。

 中には、羅針盤の面々もいるのかな?


 うわぁ。

 ひ、人見知りが……。

 入りたくない!


「――ほら、どうしたの? 大神くんだよね? 早く入りなよ?」


「ひ、はい!」


 玄関の前で立ちつくしていると、突然ドアが開いた。

 出て来たのは……イケメンだ。


 紫色の髪ってことは、毒系統の魔法が得意なのかな?

 と言う事は、この人が羅針盤のサポーター兼、ヒーラーの……。


「あの、失礼ながら……。な、南条さんでしょうか!?」


「お、僕のことを知ってるの? 嬉しいなぁ、人外の力の持ち主と話題の超新星、『アタオカの餓狼ガロウ』に名前を知ってもらえてるなんて」


「俺、そんな2つ名があるんっすか!? もうちょっと格好良い名前で!」


「そ、そうは言ってもね……。2つ名は、視聴者が勝手につけるから! 他にも『白金プラチナ餓狼ガロウ』とか……。ちょっ、揺すらないで! なんだ、これ! モンスターにタックルされたような衝撃が!」


 はっ!?

 やってしまった!

 思わぬダサい2つ名に、心を取り乱した!


「すすす、すいません! 大丈夫ッすか!? 首が変な方向に!」


「だ、大丈夫……。治癒魔法」


 変な方向に首が曲がって固定されていた南条さんが、治癒魔法を唱えると、直ぐに症状が回復したようだった。


 さすが、全員が単身でBランクの開拓者パーティだな。

 毒と薬は表裏一体だから、相性の良い魔法属性だけど、かなり高い魔力を感じた。


「ふぅ……。凄い力だね。心強いよ。改めて、僕は南条海。皆、共有リビングで大神くんを待ってるからさ。挨拶しよっか」


「は、はい! ありがとうございます!」


「硬いねぇ。色々と互いに思う所はあるだろうけど、これから共同生活をするんだよ? 肩の力、抜いていこう?」


 俺の背後に回り、肩を揉む南条さん。

 ふっと、優しく諭す声に混じった息が首筋に当たって……。

 ゾクッとしました。


 色気も凄いけど、何となく背後を取られたくないというか……。

 いや、これは武人の性だ!

 背後を取られたら、落ち着かないアレだ!

 南条さんに先導され、立派な玄関を潜る。 


 そうして広々と解放感のあるリビングルームへ入ると――。


「――あ、来たな!? 俺は東条陽太! 羅針盤の前衛アタッカーだ! よろしくな!」


「ワイは西条慶斗。歳も近いし、気軽にいこか!」


「……ワシが北条康政。タンクをしている」


「は。はわわわ!? お、大神向琉です! ソロばっかりで、何処でも何でもやります! どうぞ、よろしくお願いします!」


 知らない人が……沢山!

 歳が近い、知らない人が!?

 戦うんなら安心なんだけど、仲良くしなきゃって思うと……緊張ががが!


「ははっ。なんでそんな、下働きに来たみたいになってるんだい? 僕たちは先に家に入って寛がせてもらっていたけど、大神くんも早くゆっくりしよう? 大神くんの部屋は3階、リーダーの隣だよ。……僕の部屋の、真上でもあるけど、ね」


「は、はい……」


 なんだろう。

 南条さんは優しいんだけど、色気のある瞳に警戒心が高まってしまう。


 やっぱり、毒使いだけあって、暗殺者的な素養があるのかな?

 俺の本能が、なんか危険だと告げている!


 羅針盤のパーティ名の由来である、東西南北を勤める人たちに挨拶をした。


 と言うことは――。


「――俺が羅針盤のリーダー。一針正樹だ」


 広々としたソファに腰掛け、片目を眼帯で覆った中年の男性。

 整えられた髭に、渋い声。

 残った片目から、深い闇のような雰囲気を漂わせ――同時に、寂寥感を感じさせる男が、一針正樹。


 動画で見ていた姿より、更に渋いイケオジという感覚だ。


「初めまして、大神向琉です。早速ですが――黄色い龍の情報、教えてもらえないですか?」


 目的のことを考えると、嘘のように人見知りも消えた。


 俺が訪ねた瞬間、和やかだった室内に重苦しい空気が満ちた――。



―――――――――――

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