生き別れの妹とダンジョンで再会しました 〜10年間ダンジョン内で暮らしていたら地底人発見と騒がれた。え、未納税の延滞金?払える訳ないので、地下アイドル(笑)配信者になります〜
第150話 シャインプロのフェスだもんね!
第150話 シャインプロのフェスだもんね!
美尊たちのマイクパフォーマンスも、終わりが近付いて来た。
終演に向けてのラストスパート。
会場のボルテージもマックスまで高まっている。
そうして迎えた、最後の曲――。
「――少しだけ、少しだけだから」
ちょっとリズムを刻み、少しステップを踏む。
そうしているウチに――気が付けば、本気で踊りかねないレベルの衝動に襲われていた。
いくら俺でも、それはダメだとは理解している!
だから――。
「オタ芸って言うんだっけ!? これならオッケーでしょう!」
美尊たちの歌やダンスに合わせ、警備の赤い棒を振る。
多少オリジナルで、アクロバティックな動きも混ぜて!
会場をファンと一緒に盛り上げ、楽しむのだ!
するとステージ上の美尊が俺に気が付いたのか――ちょいちょいっと、
「……え? 良いの?」
いやいや、流石にそれは……。
まだ配信でトワイライトとコラボすらしてないんだよ?
俺だって某アイドル事務所のグループが一同に会してるステージで、たった1人異性が乱入したらどうなるか――想像ぐらいは出来る。
流石に、それは――ダメ!
オタ芸を打ちながらも、バッテンを作る。
すると美尊は苦笑しながら手を振り、立ち去った。
ふう……。
流石にマズいと、美尊も理解してくれたか。
危ない危ない。
テンションが高まる場だと……自分を抑えるのに苦労するね!
そうして最後の曲も終わり――トワイライトの面々は、再び沈み行く太陽をバックに消えて行く。
観客に手を振り、ステージから姿を消すも――盛り上がった観客のボルテージは、収まる所を知らない。
アンコールの声が鳴り響くのも、当然と言えた。
そうして数分、アンコールの声が鳴り響き続けても――誰も姿を現さない。
「あれ、おかしくない? こう言うのって普通アンコールの声が聞こえたら、すんなり出て来るもんじゃないの?」
3万人の観衆もおかしいと思っているのか、アンコールの声の中に悲痛な叫びが混じる。
「おいおい、マジでアンコールねぇの!?」
「嘘でしょ!?」
「待ってるぞぉおおお! もういっちょ、盛り上げてくれぇえええ!」
そんな声が響き渡る。
そうして、アンコールが聞こえ始めてから優に5分以上が経過した時だった。
「俺のスマホ?……川鶴さん?」
スマホが震動を始め……ディスプレイを見れば、通話だった。
なんだろう……。
凄く、嫌な予感がする!
出たら行けないような……。
でも、通話は鳴り響いたままだ。
と言うか……コール音が、会場の大音量スピーカーで流れてない?
観客も、一気にザワつき始めたんですけど……。
で、出るしかない……のか?
「も、もしもし? 大神向琉です」
もしかして、とは思った。
俺の通話が――マイクに乗せられている!
川鶴さんのスマホのスピーカーからか!?
「そ、そちらは会場で警備中の大神向琉さんですか?」
「そ、そうですけど……これは一体!?」
「もしもし、お兄ちゃん? 私、美尊」
「み、美尊!? ななな、何をしているのかな!? この通話は、みんなに聴かれているんですが!?」
音声だけじゃない。
会場のカメラも通話中の俺の姿を抜き――大スクリーンに、俺の姿が映る。
男女比で言えば、男の方が遙かに多いこの会場に――野太い大歓声が轟いた。
「ちょっ!? これ、聴いてないんですけど!? な、何をやらかすつもりなの!?」
あたふたする俺を観て「あたおかぁあああ」、「握手だけで終わるつもりかぁあああ」、「エンタメ提供しろぉおおお」、「お兄様ぁあああ」等と、観客は叫び声をあげている。
「あのね。お兄ちゃんに染められて――私たちも、『あたおか』になったみたい」
「――ふぁ?」
その通話音声が聞こえると同時、まるでパチスロに当たったような音楽――俺の公式イメージソング『
ステージ上には、シャインプロのこれまで出演してきたアーティストたち全員が出て来ている。
そして大スクリーンには――マジで公式MVになったのか、何時ぞやのモンスター
「さあ、お兄ちゃん。歌は私たちに任せて。――存分に踊ってね」
「はぁあああああああああ!?」
俺の驚愕の声と同時に、会場が割れんばかりの大歓声に包まれる。
俺を野次ったり、早くしろなどの声が飛び交っている。
これ、アンコールだからって――アドリブだろぉおおお!?
振り回されるスタッフさんたちに謝りなさい!?
その交渉と準備で、少し時間がかかってたのか!?
そうこうしているウチに、シャインプロ一同による合唱が始まる。
ええい、もう……行くしかない!
「ド派手にいくぞぉおおおおおおおおおお!」
す、ステージ上だから……派手に!
無駄に神通足を使い、空中で炎魔法と水魔法、風魔法を交えて舞踏を舞う。
種も仕掛けもないけれど、観客からすればサーカスの一幕のように見えているだろう。
あんまりアイドルと仲良くしているのを観られると、マジで命がヤバいのでステージから距離を取り――。
「――あたおかぁあああ!」
「お兄様ぁあああ!」
「ぅおおお!? マジで空を駆けてる! ワイヤーとかCGじゃねぇの!?」
観客席の傍を跳び回り、手を振って回る。
これでステージにいる娘たちとイチャついてるだのと言われずに済む!
そうして曲が終わるなり、観客席に何度も礼をして――俺は舞台裏へと逃げた。
―――――――――――
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!
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