第149話 初のライブ会場!

 そうしてササッと食事を済ませ、関係者として舞台裏へ向かうと――。


「う、うぉおおお……。めっちゃ揺れてる!」


 丁度、ライブが始まった所だった。


 今日の設営でもやっていたように、カタパルトで最初の開拓配信アイドルパーティがステージに跳び出たようだ。


 それに呼応し、会場は地響きと音が半端じゃなく轟いている!


 彼方此方にあるモニターで会場を観ると、色とりどりのライトや明かりの芸術をバックに、歌って踊っている。

 これぞまさにアイドル――って感じだ!


「これは……観客席で観てみたいかも? ライブとか行った事がなかったんだよなぁ~」


 舞台裏は兎に角、スタッフさんが慌ただしく動いている。

 これでは俺が何をするにも邪魔になってしまうし……。


「あの、川鶴さん。すいません――」


 俺は忙しそうな川鶴さんにお願いをして、ライブ会場の警備員に割り当ててもらった。


 そうして警備服に身を包み、赤い警備棒を手に――暗いライブ会場へポツンと立つ。


「ウィッグもしたし、変装は完璧。辺りは暗いから、バレようもないもんね」


 会場が一体になってサイリウムを振っている光景は、まさに圧巻の一言だ。

 誰もが楽しそうで――誰もが良い笑顔で、ライブを楽しんでいる。

 シャインプロの所属開拓者アイドルたちは、何曲も持ち歌があるらしく――。


「――それでは次の曲に行く前に、改めてメンバー紹介をします!」


 マイクパフォーマンスと言うのだろうか?

 まだまだ開拓者としては低ランクで、ファンはこれから増えて行くだろうと言う娘たちが、立派にパフォーマンスをしている。


 魔法も用いた幻想的な光景は、普通のアイドルライブではない楽しみだろう。


「これは――俺も一発、ぶちかましますかね?」


 メインとなるスタジアムで、俺の出番はない。

 今の俺の歌唱力では、どうにもならないし……。


 持ち歌が1つでは、直ぐにステージから消えるしかないと分かった。

 でも俺とて、シャインプロ所属のアイドル。


 何処かで――盛り上げてやりたい。


 そうして時が進む事、約2時間。

 ライブは順調に盛り上がりながら、終演時間である15時30分まで残り30分を切った時――。


「――ネクストアイドル、トワイライトォオオオッ!」


 ステージから会場を魅了していたアイドルが会場内に響き渡る声で、次にステージを彩るアイドルグループの名前を呼んだ。


 その声に合わせ――ステージに、3Dホログラムの太陽が出現した。

 やがてそれは、日暮ひぐれのような演出になる。


 日暮ひぐれは黄昏時たそがれどき


 別名――がれ


 巨大スクリーンに映し出された3つの人影に顔は無く、名前もない。

 そこから人影は夜闇に溶け込むように、消えていく。


 月と星々ほしぼしいろどられた夜が来て、再び――は昇る。


 あかつき東雲しののめあけぼのと徐々に明るくなって行き――朝霧あさぎりも立ち上る、幻想的な朝焼あさやけ。


 日の出の――彼誰時かわたれどき


 闇夜では見えなかった何者かが、姿を現世うつしよに現す時間。

 それは闇夜を抜けた人間かもしれないし、産まれ変わった誰かかもしれない。


 朝焼けを背景に――3人の少女たちがステージ上を闊歩かっぽする。


 3万人の大歓声に包まれ、割れんばかりの盛り上がりをみせる会場。

 そして朝日を背景に、顔が見えない3人の少女が――1つの太陽を持ちあげる。

 すると――涼風さん、美尊、深紅さんの表情が、茜色に照らされ顕わになる。


「凄い……。ホログラムの太陽なのに……。まるで本当に、そこに太陽があるかのようだ……」


 現代の科学を用いたライブパフォーマンスに、驚愕が隠せない。

 そして太陽を持ちあげた3人の少女たちは――陽の光を取り込み、ステージから客席にまで輝きが届くよう歌って踊り出す。


「うぉおおお……。夜明けが来たぞ! 朝だぞとばかりに、バックダンサーも大量出現~! これは盛り上がりますね~!」


 数十人のバックダンサーを背に、美尊が輝いている!

 勿論、涼風さんや深紅さんも!

 うわぁ~面白そう!


 沢山の人がダンスパフォーマンスをしている中、3人はきらびやかな服装で特に目立っている。

 他のダンサーは、3人ほどではないが綺麗な服装。


「――これ、俺もやっちゃう? やったら怒られるかな?」


 沢山のダンサーが居るし、バレないんじゃね?

 俺もステージに上がって、さりげな~く踊ってたら……怒られるかな?

 なんか、テンション上がって――抑えられなくなってきたんですけど!

 ウズウズしちゃう!


 いや――ダメだ!

 いくらなんでも、勝手にステージに上がるのは良くない!

 それがバレたら、メインの人たちを喰ってしまうし……。

 きっとダンサーの配置だって、綿密めんみつな打ち合わせや練習をして来たはずなんだ!

 俺が入ったら、おかしくなってしまう!

 ここは我慢だ!


 我慢して――ステージの下。

 観客席との境目で踊る分には、邪魔にならないよね?



―――――――――――

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