第200話 難敵のおまけに、ボス退治!
「全員、俺が治癒魔法をかけます。近くに寄ってください」
俺が声をかけると、全員が近付いてくれた。
右手を俺の頭上へと上げ、範囲内の人物へ向けて治癒魔法をかける。
そうして右手に注意が向いている隙に――床を転がっていた自爆バンドは、回収させてもらった。
身に付けるだけで爆発するリスクがあるような物で覚悟を示したりリスクを犯すような場面じゃ、もうないからね。
「サイクロプスの最大の武器、棍棒はもうぶんどりました! 後は連携して――皆さんで倒しましょう! 大分遅れましたが、強敵を倒す為の教官からのアドバイスです!」
俺の枠では指導が出来なかったからね。
こうして、ここで強敵を倒す指導をしよう。
まぁ……既にかなりのダメージを与えて弱らせちゃってるんだけどね?
それでも――今のトワイライトではまだ、ちゃんと連携をしなければ厳しいと思う。
「旭社長と涼風さんは、敵の攻撃範囲外を動き周りながら
俺の指示に涼風さんと旭社長は頷き――サイクロプスに向かって構えながら、イメージ練習を始めている。
「あんな
「うん、了解。お兄ちゃんの指導を信じる。……でも、その加工筋肉の化け物から棍棒を奪って殴り倒した――」
「――深紅さんは作戦の肝ですよぉおおお!? 深紅さんは爆撃魔法が得意ですからね、弾に乗せず連発しながら機動力も用い
「はい! 父さん、美尊、連携よろしくね!」
「あ、ああ! 深紅、やろう!」
「……うん。お兄ちゃん、逃げたね?」
お、俺の動きは……真似しちゃいけません。
視聴者も言ってたけど、有害図書みたいな扱いなんだもん。
教育に悪いらしいからさ、俺は。
だからこそ今回は、万が一の時を除いて動かないようにと自分に言い聞かせてるんだからさ!
これは深紅さんたちが乗り越えなきゃいけない試練!
手を出したくて身体が
〈うおお! クライマックス頑張れぇえええ!〉
〈サイクロプスが立ち上がったぞ! 止めさせぇえええ!〉
〈大宮愛以来のAランクボス攻略、ここまで来たならやっちまえぇえええ!〉
サイクロプスが
重心位置が高まると言う事は――それだけ、足下が不安定になると言う事。
「――作戦、開始です!」
「社長さん、行きます!」
「はい、那須さん!」
「ウチは左から、美尊は右から
「了解!」
各自が動き出し――サイクロプスの1つ目と足に集中して、攻撃が叩き込まれていく。
最大の武器――長い射程を持つ棍棒も、俺に奪われて後ろに転がしたまま。
高い重心位置と低い重心位置の同時攻撃。
その防御の厄介さにサイクロプスは防戦一方で、やがて――。
「――片脚崩れた!」
「ナイス! もう片方もやってから、デカイ爆撃行くかんね!」
前方でしっかりと冷静に指揮を執りながら――助け、助け合いの動きを深紅さんは展開している。
その成果が、サイクロプス攻略にも現れている。
みるみるうちに、サイクロプスの足は削れていく。
美尊が遠隔からの氷魔法で、皮が弾けたサイクロプスの骨まで凍らせ――炎魔法の繰り返し。
真冬、冷たく凍ったガラスに熱湯を掛けると割れてしまうように――温度が上がって
そこに爆撃魔法までぶち込めば――如何に強靱なサイクロプスとて、何れ削れる。
骨が破損し始めて来れば――もう後は、止めの一撃の準備だ。
その時を察した深紅さんは――爆撃魔法を乗せる銃を撃つ旭社長の隣へと降り立った。
魔力を右手へ、貯めに貯めている。
そして――。
「――私は、ね……。深紅に大きくした旭プロを渡したかったんだ。
「あ……」
旭社長が苦笑しながら語る言葉に――深紅さんは、ハッとした表情を浮かべた。
昔の……親子にしか分からない思い出話かな?
そして深紅さんはゆっくり、思い出した儚い記憶の一部を
「――ねぇ父さん。ウチ……小っちゃい頃、『なんでお金持ちなのに母さんを救えなかったの』って聞いて、追い詰めたよね?」
「……そんな事があったかね? もう、私もいい歳だ。覚えていないな」
「嘘吐き」
「…………」
「ウチ、小学校1年生の頃に『どうして父さんはお金持ちなのに救えなかったの? 父さんは助けてあげなかったの? ねぇ、なんで父さんは母さんを見殺しにしたの。
「……長年悪の道を進んでいると、そのスタート地点なんて分からなくなるんだよ。――私が何故、悪の道を進んで来れたのか。そんなものは、悪の道を進む気質的な才能があったからだ。……幼い深紅に、金が大きな力を持つと教えてしまった
死闘の間に
その瞬間を、俺は肌で感じた。
いよいよ美尊が脆くなっていた足の骨に爆撃魔法を打ち込み――サイクロプスが、足の支えを失い崩れ落ちる瞬間が来た。
全員に聞こえるように声を張り上げ――。
「――今です! 弱点である目玉にどぎついの、叩き込んで下さい!」
「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおッ!」」
旭社長が撃った弾が着弾する時に爆ぜるよう、深紅さんは貯めに貯めた爆撃魔法を乗せた。
親子が放った銃弾の1つは――サイクロプスの大きな1つ目に着弾。
まるで対戦車ロケット砲が着弾したかのような爆撃音を、大空間に響かせた――。
―――――――――――
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