生き別れの妹とダンジョンで再会しました 〜10年間ダンジョン内で暮らしていたら地底人発見と騒がれた。え、未納税の延滞金?払える訳ないので、地下アイドル(笑)配信者になります〜
第13話 おはよう、地上の朝! ただいま、妹よ!
第13話 おはよう、地上の朝! ただいま、妹よ!
朝に目が覚めると直ぐ、顔を洗う為に
「……かつては当たり前だと思っていた文明の力が、こんな素晴らしい物だと思うとは……。10年間も地下にいると、価値観が変わるなぁ」
本当に感動した。
太陽の光で部屋は明るいし、
今までは水を自分で産み出して、風魔法で渦のようにして洗っていたからなぁ。あれ、肌がゾワゾワして気持ちが悪かったんだよな。
――そうじゃな。
「ごめんって」
まだプンスコと
お湯にボディソープ、シャンプーは偉大だ。
なんて……色々と文明の力に
家具一式に家電、更には当面の生活に必要な生活用品や食料まで備えられている。
おそらく、姉御や川鶴さんが揃えてくれたんだろう。
本当に頭が上がらない。
冷蔵庫に入れてあった食料をハムハムと囓りつつ、夕方まで配信やスマホ操作の勉強をして過ごす。
川鶴さんからは、16時30分に迎えに来るとメッセージが来た。知らないアプリに戸惑ったけど、なんとか『了解です』と返せた。ついでに1つ、俺からのお願いというか要望も自力で送れたし、大満足だ。
文明の進化って凄いね!
そんなこんなで16時をちょっと過ぎた時――。
「――お兄ちゃん。私」
インターホンが鳴ったので玄関ドアを開くと、そこには我が愛しの妹が立っていた。
「学生服……。そうか、成長したんだなぁ……」
ジンワリと、涙が込みあげてくる。そうかぁ、
「最後に会ったのは6歳だから、当然。……入って良い?」
「ああ、
川鶴さんが来る
聞きたい事も、あるしな……。
「ごめん、ペットボトルのお茶しかないんだけど……飲む?」
「要らない。お構いなく」
「いやいや、そうは行かないって」
「お兄ちゃんは借金が62億円もあるんだから。お構いなく」
「……はい」
すいません。
――
そうですね。
部屋には丸机、テレビ台にテレビ、後はベッドのみ。
座布団ぐらいは欲しいな……。俺、道場には法律で行けないらしいから取りに行けないしなぁ。早く金を稼ぐか、ランクを上げてSランクダンジョンへ潜れるようにならないと。
何時までもフローリングに美尊を座らせるのは、申し訳がない。
「それにしても……大きくなったなぁ。160センチメートルちょっとぐらいか?」
「うん。お兄ちゃんは、相変わらず大きい。180センチメートル半ば?」
「多分な。それで――……。その、聞きたい事があるんだけどさ……」
昨日、川鶴さんはこう言っていた。
俺のマンションは棟が違うだけで、美尊が住む場所の直ぐ傍だと。
俺の生家であり、美尊や両親が住んでいた家は……別にここからそれ程、離れていない距離だ。
それなのに高校生の美尊が寮暮らしをしているという事は――。
「――母さんと父さんは、死んだんだよな?」
「……うん。10年前のダンジョン災害で……」
「……そっか」
俺は両親と一緒に暮らしていた期間は、それ程長くない。物心ついてからは、本当に短い期間だ。
共働きだったから、俺が美尊の世話を任されていた。そんな関係で、血の繋がった家族の中では美尊と長く過ごす時間は長かったけれど、両親との思い出はさほど多くない。
それでもやっぱり、辛いもんだな……。
「2人の遺言は、お兄ちゃんのように強く生きてって」
「え? 俺?」
「うん。……お父さんもお母さんも、お兄ちゃんは凄く才能があるって言ってた」
それは……買いかぶり過ぎだなぁ。
俺なんて、ジジイに見捨てられるレベルの才能しか持っていなかったんだから。
「愛さんも、お兄ちゃんが死ぬ訳がないって口癖のように言ってた」
「え? 姉御が?」
「……うん。
「そっか……」
それはきっと、希望を失っていた美尊を
母さんの親がジジイ。つまり美尊は、
姉御は天心無影流の師範代として、美尊を絶望から拾い上げ強く育てようとしてくれたんだろう。
「でもね、何ヶ月、何年経ってもお兄ちゃんは発見されなくて……。
「だから開拓者になったのか?」
「うん。……『冥府行きのダンジョン』は、2階層までCランクだから。私はCランク冒険者だから、適正なランクだと思ってた。……ダンジョンにイレギュラーは付きもので、正直――もう、どうしようもない状況だった」
ああ、それはそうだろう。
ダンジョンは――人に牙を
美尊の場合はそれが
「いやぁ……。あの時、美尊を助けられて良かったよ。他の階層だったら、分からなかった」
つくづく、凄い
数多くの偶然が
というか……確かCランク開拓者って一流の兵士に相当するんだったよね?
知らぬ間に俺の妹がヤバい存在になっている。
喜べば良いのか、悲しめば良いものか……悩み所だ。
しかも、これでアイドル活動もしているんだよね?
う~ん……多才だ。――うん、うちの妹は天才なのかもしれない!
よし、喜ぼう! そして褒めちぎろう!
「あの時はね、色々とバタバタしてて言えなかったけど……」
そう口にしながら美尊は俺の胸に飛び込み、目を
「お兄ちゃん……。助けてくれてありがとう」
「うん、どういたしまして」
「……お帰りなさい」
「ただいま。――10年振りに、帰って来たよ」
堰を切ったように泣き出す美尊の頭を優しく撫でる。
美尊が泣きやむ迄、ずっとそうしているつもりだったけど――川鶴さんが来た瞬間、美尊はピタッと泣きやんでクールな表情へと変わった。
大人になったんだなぁ、とか胸に沁みる思いを噛み締めていたんだけど……。
インターホンをいくら鳴らしても俺が出て来ない事を不審に思った川鶴さんが、部屋へと踏み込んできた。
そして美尊を見た瞬間、目を剥いて「兄妹とは言え、アイドルの自覚はありますか!?」と怒鳴られた。
―――――――――――
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!
楽しかった、続きが気になる!
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