side 大宮愛(2)
「遅かったな、大宮ダンジョン庁長官。早く座りたまえ」
「……はっ。失礼しました」
大宮愛の着席を待ち、この中で最も発言力が高いであろう人物が司会で――非公式の会議が始まる。
それから始まった内容は、
言葉遊びで上手く覆い隠しているが……。
「ダンジョン災害から奇跡の生還を果たしてくれた者は、国民の希望です。ですが思想が不明で危険、という声も無視は出来ません。そこで――
「いえいえ。10年分の常識が失われている者を、いきなり学園に通わせては
そんな
「――大神向琉は、我が社の所属として正式に契約を結んだ。契約書もある。無視しないでいただきたいですな」
極めて不機嫌な声で、
「大宮長官。そのような
「――私は黙れと言っている。貴様らの好きにはさせん」
口を挟もうとする輩に――
まるで
しかしそこは、
「……大宮長官。口を
冷や汗をかきつつも、簡単には引き下がらない。
「ほう、それは書類上の行き違いがあったのかもしれませんな。あれだけの災害で戸籍情報から安否から何から……。全てが錯綜していた中での手続きでは、そんなヒューマンエラーが起きるのも、やむを得ないでしょうな」
「白々しい事を! これから調べを進めれば、不正は明らかになるぞ! 本来、彼が支払うべきだった税金もどうせ、後見人の君が代わりに払って存命なフリを――」
「――そもそも私の勝手な一存、と言い切れますかな? 向琉の
「な、なに?」
「Aランク開拓者でも、自衛隊や軍では手を焼く人外の存在。ましてやSランクは、
「な、なめるな! 貴様のような若い者に政治の何が――」
「――その若い者が、罪の呵責から
「ぬ、ぐ……」
「私も国内に2人しかいないAランク開拓者。……あなた方の
含みを持たせた大宮愛の言葉に、
「な、まさか……。本当に亡命する気か!?」
「まさか
会議室に
「――黙れ、
声に本気の神通力を込め、威圧する。
「どうやら、私の言葉を
「は、はい」
大宮愛の激しい怒りに、
それでも、その場にいる全員へと書類を配り――。
「――なっ!?
「ええ。私を
「こ、この金額……
「
「馬鹿な……。ここに居る全員に、それ程の大金を?……大宮長官、あなたにとって大神向琉とは、それ程の人物だと言うのですか?」
書類に目をやりながら、とある男は意を決して口を開く。
「……分かった。
「助かります」
愛はそれだけを言うと、全員から書類を受け取る。
我先にと委員会室を去って行く面々の背を見送り、愛は瞳を閉じて――。
「――手段は選ばん。この
次の会談相手――国内大企業の
タクシーの中、愛は掲示板で自分を叩く声が更に
そして窓からダンジョンのように暗い夜闇を見やり――。
「――今夜からは、乏しくなった弾薬の調達を加速させねばな」
司法書士とのアポイントメントもあるし、眠らせていた計画を急ピッチで稼働させねば。
これから、寝る間も惜しい程に忙しくなる。
「シュア――いや、シャインプロを発足させた真の意義が、遂に……」
呟くように小さくも、弾む声音が車内に響く。
「堪らんな……。血湧き肉踊っていかん」
愛は、ドクドクと沸き立つ心臓を抑える。
興奮に
―――――――――――
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