生き別れの妹とダンジョンで再会しました 〜10年間ダンジョン内で暮らしていたら地底人発見と騒がれた。え、未納税の延滞金?払える訳ないので、地下アイドル(笑)配信者になります〜
第119話 握手券付き写真集? まるでアイドルじゃ……あ、そうだった
第119話 握手券付き写真集? まるでアイドルじゃ……あ、そうだった
美尊と同じ学園に通えるという事で、一も二もなくダンジョン庁からの依頼――
明日からの急な話だろうと、美尊がいるなら断れない!
断れる訳がない!
クソ、俺の心を
社会の上層部に居る人たちは、なんて
「……まぁ良い。仕事をしっかりしてくれれば、兄妹が仲良く過ごすのは私の望む所でもある。
「マジッすか!? 最高の報酬! 黄色い龍の情報に匹敵するレベルっすよ!」
あの龍の情報は、
流石に1日2日でなんとかなるとは思ってないし、そっちは首を長くして待つよ。
「そうか。臨時講師の詳細は、後で書面を寮に届けさせる。美尊だけでなくトワイライトとも関係を深めてくれれば、以前話していた
「仲良く出来るか不安なのは、俺の方なんですけどね? 女子校生とか、別の生き物みたいですもん。……正直、モンスターより恐ろしいっすよ」
天井を仰ぎつつも、姉御は
姉御も、いい歳だからなぁ……。
俺と同じような感情を抱いた経験もあるんだろう。
「そこは……上手く行くよう、トワイライトや高等部に通う開拓者へ私からもメッセージを送っておこう。……あと2つの仕事――こちらは、シャインプロでの開拓配信者関連だな」
開拓配信者関連の仕事って、何だろう?
今まであったのは……公式イメージソングの作成ぐらい?
「地底人チャンネル登録者数50万人突破のお礼に、写真集の発売と
「しゃ、写真集!? 握手権付き!?」
ナニソレ!?
まるでアイドル――あ、俺……アイドル売りしている開拓配信者だった。
色々とあって、すっかり忘れていたよ。
「うむ。本来なら登録者限定参加可能なシャインプロ、ハロウィンフェスへ向琉が参加表明などでも良かったのだが……。フェスはもう来週末。歌は……流石に間に合わんだろう?」
姉御が気を遣うように尋ねてくる。
なんだろう、普段優しくしない人がする優しさって……心に来るよね?
決めつけない優しさは感じるんですけどね、ザクザクと心を
でも――俺の歌が兵器なのは事実だ。
俺の歌は……Cランクモンスター程度なら、余裕で倒せるレベルなんだから。
涙なんて流してないからね!
クリスマス、お正月……。
い、いや……。
来年の夏フェスとかには、間に合うように頑張るもん!
「分かりました! 写真集に
「調整は最終段階なんだが――出来れば明日だ」
「明日!?」
なんでこう、姉御が持って来る仕事は全てが急なアポイントメントなのかな!?
ビックリなんだけど!
「
「マジッすか……。姉御、どんだけ俺が売れると信じ込んでくれてたんすか」
それって、地上に上がった初期だよね?
姉御の言う武器弾薬――お金と権力を存分に振るうなぁ~。
「出版社にも正式に依頼はしてあるが……。流石に、写真のデッドラインは明日だそうだ。……週末のフェスで、握手付き即売会を絶対にやらせたい。ファンからの生の応援の声を向琉に聴かせてやりたいし……。登録者50万人をかつてない速度で突破した
「な、成る程……。バックダンサーとか良いな~っって思いますけどね!」
「本来は、その可能性も考慮に入れていたが……。メインを喰うバックダンサーは、ダメだ」
「お、おおう……。ま、まあ良いですけど! 俺も客席からトワイライトの……美尊のライブを見たいですからね! 後ろ姿じゃなくて!」
「……分かった。関係者席を確保しておこう。その様子なら問題ないとは思うが、改めてシャインプロとして頼みたい仕事は2つ。写真撮影とフェスでの即売会。そしてコンサート後のトワイライト会場の警備だ」
え、警備?
トワイライト自体が高ランクの開拓者なのに?
あ……成る程。
「向琉には
「戦闘? 列整備とかじゃないんすか?」
「それはアルバイトや事務所スタッフがやる。……旭プロの仕返し。これが怖い」
「な、成る程……。握手券付きを外せば、危険も減るのでは?」
「私たちもそうしたいのだがな……。イベント運営は、シャインプロだけで行うものではない。既に決まっていたイベントを消すとなれば、イベント会社やプロモーター、スポンサーの説得が必要になる。……違約金を払ってでも中止にしたいのだが、金の問題では無く、信用の問題だと聴かんのだ」
大人の世界って、本当に大変だなぁ……。
大きなイベントだと、沢山の人が動くだろうしね。
「現状では犯行声明が出ている訳でもなく、スタンピード後の反応を見たこちらの憶測だからな……。1週間前になって急にプログラム変更は出来んと言われたら、あちらの方が筋が通った言い分だ」
「それはそうなんでしょうけど……。妙な話ですね? 俺の握手券付き写真集発売は、すんなりねじ込めたのに」
「それは向琉が地上に上がって来た時から、時間と会場は抑えてあった。何をやらせるかまでは、未定だったがな」
偶に思うんだけどさ……。
姉御、俺への期待値がエグくないかな?
当時は『人類の脅威』と言われてた俺だよ?
そんな奴を信じ込んで、色々と企画を動かすとか……。
「そ、そうなんすね……。ちなみに襲撃犯で最悪の場合はなんですか? 万全を期す為にも、最悪に備えておきたいので!」
「可能性は限りなく低いとは思うが――
そっか……。
今回のスタンピードの一件、旭プロとしては
それで怒り狂った社長副社長――
「でも……深紅さんは社長にとって実の子供、ですよね? そこまで
「以前も言っただろう? 深紅は現在17歳。……
それなら……反省して話し合えば良いのに。
姉御が過去にどんなやり方をしたのか、詳細は旭深紅さんの許可が無いと説明してはもらえない。
それでも強引に娘を取り返して――気持ちまで奪えるとは、
「旭プロはスタンピードの件で突き上げを喰らっているからな。それがどの程度かは、分からん。だが冷静な判断が出来なくなるぐらい、ギルドや世間……内部で責められている可能性もあり得る」
「成る程……。追いこまれて暴走する危険がある、と?」
「そうだ。武術と同じだよ。――止めの一撃は、最も隙が生じやすい。……
そっか。
色々な背後関係が重なった結果、冷静な判断を下せなくなっている可能性も考えられる。
高くない可能性でも……無視は出来ないって事か。
この厄介な仕事を敢えて俺に回すのは――姉御は俺なら、何かされても、どうにか出来ると信じてくれていると言う証だと思う。
「分かりました! 姉御の信頼に応えられるように警備しますよ~!」
「うむ。
うわぁ……。
信頼が重いなぁ。
でも、大好きで大切な人たちからの信頼なら――応えたい!
それが人情というもの!
臨時講師、写真撮影に握手会、警備!
やってやりますよ~!
―――――――――――
ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!
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