第62話 Cランク初の換金!

 そうしてやって来た、ダンジョン出入り口前の広場。


「――さあ、それでは早速ですが……。今日の戦果せんかコーナーです!」


〈うおおおおおおおおおおお〉

〈レアなの来いイイイイイイイイ〉

〈流石にあるだろ裏ボスまで倒したんだぞ!?w 魔石と同時ドロップでもおかしくない!w〉

〈頼む、むくわれてくれぇええええええ!〉

〈報われなかったら姉御を恨んでしまう。あたおかが望まないと分かってても、法的に救済きゅうさいしたくなる……〉

大神向琉おおかみあたる、良いのあたるぅううううううう! 神引きこいぃいいいいいいいいいいw〉

〈↑ガチャみたいに言うなw 物欲ぶつよくセンサー働いたらどうすんだwww〉


 物欲センサー……。

 確かソーシャルゲームとかで欲しい物当たれと願っていると、かえって当たらなくなる現象の事だっけ?


 そうは言っても……もう落ちた物は手元にあるからな。

 物欲センサーが働くなら、モンスターを倒す時だろう。


 さて、エンタメとして盛り上げつつ――成果物せいかぶつをカメラに映そう!


「それでは、ドローンに積んである収納箱を取り出して――中身をバァン!」


 箱を逆さにすると――ジャラジャラと魔石が転がって行く。


〈おおおおおおおおお〉

〈大漁だぁあああああああwww〉

〈すげぇえええええええええええええ〉


「これは凄い量ですね~! 横に広げても、数が分かりません! あ、この2つは他の魔石より倍ぐらい大きい! これがダンジョンの表ボスと裏ボスの魔石でしょうね!」


〈おお、確かにデカイ!〉

〈これは期待度高い!〉

〈そうは言ってもグラム売りなのがCランクまでの辛い所w〉

〈え、待ってまって。アイテムは?〉

〈いやいや! あの量のモンスターを倒してアイテムドロップ無し!?〉

〈アイテムドロップなしは当然。だって魔石に変える為にオーバーキルしないようにしてたんだからwww〉

〈力加減の調整がそんな上手いのはヤバいのよwww〉

〈逆にアイテムドロップしてたら、あたおかが設定した挑戦は失敗〉


「今回はドロップ無しですね! コメントにもあるように、今回はイメージソングのお披露目ひろめが目標で、課した縛りも全モンスターを魔石にするでしたから! つまり――企画は大成功! はい拍手!」


〈8888888888〉

〈スゲぇ技術だけど、金にならないことやってんなw〉

〈良いんだよ、今日の目標は大成功なんだからw ワイはあの曲大好きになったぞ!〉

〈お兄様、お給料貯めてCD買います!〉

〈収益化申請が通ればなぁ……。俺も、あたおかにスパチャしたいんだが……〉

〈それな。まぁまだ申請してから2日しか経ってないからwww〉


 そうなんだよなぁ……。

 色々とありすぎて忘れるけど、まだ収益化の申請から2日しか経ってないんだよなぁ。

 姉御が直接交渉しているって話だけど……口には出さない方が良いか。

 またコメント欄で議論が紛糾ふんきゅうするのは目に見えているしね。


「それでは、この魔石を再び収納箱に戻しまして……」


〈自分でドバァアアアッてやってしゃがみながら戻すの可愛いwww〉

〈なんか甲子園こうしえんの土を集めてるみたいw〉

〈あああお兄様が尊いいいいっ!〉


 ジャラジャラと集めて、全部収納箱に入れた!

 よし。後は確か……このボタンでミュートにして、換金に行くんだよな?


「それでは、換金に行くのでミュートにしますね! しばらく無音で結果予想をお楽しみください!」


〈おけ〉

〈いてら~〉

〈楽しみだぁああああああ!〉


 ミュート設定ボタンを押して、こちらの音声は聞こえなくなったはず。


 階段を上り、ギルドで手早く換金を済ませ――領収明細りょうしゅうめいさいを手に戻って来た。


 ドローンはギルドの構造上こうぞうじょう低空飛行ていくうひこうをしていたから俺の手元は映っていないはず。

 よし、ミュートを戻して――。


「――お待たせしました! ちゃんとミュートに出来てましたか!?」


〈バッチリ〉

〈成長したなwww〉

〈うおおお黒字来いいいいいいいいいい!〉


「それでは、今日の成果を発表します!――この明細をご覧下さい!」


〈魔石の重さ3100グラム!?w〉

〈やばwww〉

〈合計153個ってw〉

〈この数時間で153体をキルする開拓者とかwww〉

〈それも、あの激アツな曲のお披露目も合わせてだぜ?w〉

〈指じゃまぁあああ! 早く手取りを教えてw〉


「実は配信ドローンのエネルギー用魔石に4個を補充へ回したので、157体倒したようです! それで魔石1個が約20グラム! Dランクの2倍! 更にボス級は40グラムと、もう倍プッシュでした!」


 ギルドの受付さんも、かなり慌てていた。

 これ程の魔石を1度に持って来る人は、どうやら稀らしい。


「そして――魔石買取額は、31万円! 1割が手元に残るので、3万1千円! 俺が望んだ最新配信機材のリース料金3万円を引いても――なんと、1千円のプラスでした! 念願ねんがんの、赤字脱却あかじだっきゃく~ッ!」


〈うおおおおおおお! おめでとう!〉

〈31万円が千円にしかならんの!? えぇ……。姉御、マジでクソだな〉

〈政府のメールフォームからも大量の苦情入れてやる。日本に居られないぐらい徹底的に叩く〉

〈シャインプロにもな? 周りで助けないで詐欺に加担かたんしてる人間も同罪どうざいだから〉

〈おい、『あたおか』が悲しむから姉御の悪口は専用の掲示板でやれ?〉

〈おけ。あたおか、絶対に詐欺師から解放してやるからなぁあああ!〉

〈弁護士ですが、明らかにおかしい状況です。お力になれると思うので、良ければご連絡をください〉

〈今日も大宮愛おおみやあいを叩く掲示板が盛り上がるな。あの詐欺師は絶対に許さん〉

〈黒字おめでとううううううううううううう!〉

〈楽曲の収益と収益化申請が通ったら、もっともうかるぞぉおおお!〉


 非難轟々。

 まぁ、そりゃそうだろう。

 額面からこれだけ引かれれば、インパクトはデカい。

 俺を応援してくれる人からすれば、もの凄く苛立ちを覚えるはすだ。


 こんな単純な感情の帰結は、姉御なら予見してたはずなのに……。

 あの姉御が、目先の小さな利益を求めて――本当にアホな契約をするのかなぁ?

 う〜ん、なんか掌の上で踊らされているというか……。


 言いようのない違和感がある。

 例えるなら、12ラウンドの試合で序盤から中盤に自分が攻めてると思ってたら――実は勘違いでした。

 スタミナ切れさせられた終盤で、一気にひっくり返されるような違和感に似てる。


 これが姉御の戦略だとしたら――何を狙ってる?


 まぁ……考えても分からない!

 それなら、考えないのが良いね!

 下手な考え休むに似たりって言うけど、考えてるよりドカ〜っと休んでた方が疲れが取れるんだから!


「皆さん、ありがとうございます! 俺がまだ高校生だったとしたら――1日で千円のお小遣いは、かなり贅沢ぜいたくです! 上手く使いたいと思います!」


〈泣けてきた〉

〈俺、自分の借金ちゃんと返すわ……〉

〈↑それはちゃんと返せ?w〉


「ギルドカードの方は……流石に、まだEランクですね! 次のDランクまでは、80パーセント近くグラフが残ってます。――しかし! しかしですよ、Cランクに上がったばかりで黒字! こっからB、Aランクと上がって行けば……もっと収益も上がります! 伸び代ですね!」


〈前向きだwww〉

〈確かに、Cランクで黒字が可能と分かったのはデカイw〉

〈飯テロには使えないダンジョンで残念だったなwww〉


「アイドルらしく、元気に笑って行きますよ~! 今日、お披露目した俺の公式イメージソング『陽の当たる道を征く』やグッズ展開に関しては、また超絶優秀なウチのマネージャー社長が詳細をお知らせしてくれると思います!」


〈川鶴マネージャー社長かw〉

〈あの人も同罪。シャインプロのスタッフは全員詐欺師集団〉

〈地底から上がってきたばっかだけど、あたおかもSNS慣れような?w〉

〈おけ。楽曲買ってパチいくわ! 勝てる気がするw〉

〈万が一勝ったら、あたおかに還元しろよ?www〉


「ありがとうございます! 色々と頑張ります! それでは皆さん、またお会いしま~しょうっ!」


 カメラに向かって手を振り、コメント欄にも「お疲れ様」といったコメントが滝のように流れていく。


 この切り時が毎回、悩む……。

 しかし何時までも手を降り続ける訳にも行かないので……。


 最後に深々と一礼。

 腕時計を操作し――配信を終了した。


「ふぅ……。上手く出来た~……」


 今日のメイン――楽曲の宣伝と盛り上がる縛りを無事に達成出来た安堵から、ドッと疲労がおそってくる。


 流石に疲れたな……。

 重い足を動かし、俺は再び足早にギルドへと戻る。


 さっきチラッと見えたけど、夜も遅いのに川鶴さんが待っていてくれたから――。



―――――――――――

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