第204話 黄昏時を超え、彼は誰時を超えた先に

「お兄ちゃん、おはよう。あ、愛さんも居る。おはようございます」


 うん、合鍵を渡してる美尊が来るのは分かる。

 でも、ね――。


「――え、オーナーとお兄様が揃い踏み!? どどど、どうしよう!? 大好きが一杯!」


「お兄さん先生、どっちの前と後ろになるんですか!? いや、そもそも矢印が複雑に入り組み過ぎて、私はどうしたら!?」


「大神さん……。オーナー……。炎上というか事務所のメールも電話も賛否両論で、パンクですぅ~……。もう、私はどうしたら良いですか?」


 なんで深紅さんや涼風さん、それに川鶴さんが朝一で居るんですかね?

 全員、制服かスーツを着てるし……。

 俺の部屋は出勤前にフラフラっと立ち寄るカフェテリアじゃないんですが?


 それと、川鶴さん。

 本当~に申し訳がありません。


 正直、毎回いっちばん迷惑をかけて、申し訳なく思っている次第です。

 あっという間に騒がしくなった部屋に、姉御は軽く溜息を吐き――。


「――このように深紅が元気そうで安心……迄は出来ないが。しかし別の活力源を見つけたのは、深紅にとっては救いだったのだろうな」


「あ、姉御! 助けてくださいぃいいい!」


「ふん……。――行き過ぎは良くない。その言葉の意味を暫し、よく考えろ。……女心も分からぬ小童めが」


「姉御ぉおおお!? な、なんか機嫌悪くありません!?」


 そのまま姉御は、返事をすることなく玄関から帰って行った。

 普通の帰り方が出来るのに、なんで入ってくる時は一秒を惜しむように窓から来たんだろう。


「ぁあァ゙ア゙゙゙! もう、その嫉妬が……。てぇてぇ……」


「涼風さんは何を言ってるんですか!?」


「お兄様、ウチが朝ご飯作りましょうか? 別棟べつむねとは言え、同じマンションですし?」 


「必要ない。それは私とお兄ちゃんのローテーション。……ファンとは言え深紅は近づき過ぎ。男女の節度を保った距離感を――」


「――仲間であり、義姉ぎし、か」


「待って。私の顔を見て今、なんて言った?」


「ん、なんでもないよ?」


「嘘」


「ぁあァ゙ア゙゙゙」


「お兄様! ウチ、結構かなり、相当に尽くすタイプだと思うんですよ! どうっすか!?」


「大神さん、もう本当……。勘弁してください。いえね、大神さんに悪意もなければ悪くもないのは、分かってるんですよ? 大神さんに文句を言うのは筋違いだって。……でも深紅さんは熱病のように何を言っても聞こえてないし、今朝みたいに一緒に居ても開拓者パワーで振り切られてしまうし……。事務所でも対応に追われて、もう2日寝られてないんですよ。ははっ。……次、いつ寝られるんですかね、私……。結婚相手とか探す暇は、いつか出来るのかなぁ……」


「きょええええええ!? 色々な熱、一旦落ち着けぇえええ! だ、誰か――俺の事も、助けてぇえええ!……あと川鶴さんはマジですいません」


 ――わらわしか話す相手がおらず、寂しくてめそめそとしておったダンジョンでの向琉が嘘のような生活じゃのう。


 白星はくせいさん。それは秘密ですよ。……直ぐにジジイの復讐が叶わず、明るい世界に帰れないと分かったらメンタルもやられるって、そりゃさ。


 ――人の世で受け入れられたようで何よりじゃ。……妾が思うに、真に大変なのはこれからじゃろう。じゃが、先ずは己で手に入れた幸せを周囲と満喫まんきつせよ。今を全力で楽しもうとせぬ者の一生など結局、終生苦痛しゅうせいくつうのままに終わるのじゃからな。


 たま~に、ためになるような意味深な事を言うのはなんなの? ソシャゲとかネトゲとかア○チューンズカードとか言ってないで、普段からそんな感じなら周りからも御神刀ごしんとうとして敬意を抱かれるだろうにさ。


 兎に角――Aランクダンジョンにも潜れるようになって、ジジイの仇を討つ準備も着々と進んでる。


 多くの人に笑顔と希望を届けるアイドル開拓配信。

 諸々有もろもろあるけど――助け合いながら、これかも楽しんで頑張るぞい!


 明るい太陽が昇っていく朝。

 今日も俺の周りは、昇ったまま沈まない太陽の様に晴れやかな笑顔で一杯。

 ずっとにぎやかに輝いてます!



―――――――――――

ここまで読んで下さり、誠にありがとうございます!

これにて『夜明け前の黄昏編』終了になります!


掲示板回を挟み、『十人十色の本懐、仇討ち編』開始になります!


楽しかった、続きが気になる! 

という方は☆☆☆やブクマをしていただけると嬉しいです!

目下、カクヨムコンの読者選考、大苦戦中でして……(`;ω;´)


作者のモチベーションの一つになりますので、よろしくお願いします!

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