第124話 開拓学園の設備、やばくね?

 職員室へ入ると、高等部で教頭を務めていると言う人物の元へ案内された。


 紹介するなら、校長じゃないのかなと思ったけど……。

 校長は来賓らいひんおとずれたりイベントでも無い限りは、ギルドやダンジョン庁に居る時の方が多いそうだ。


 学園へは出向しゅっこうという奴なのだろうか?

 実質的に現場のトップが教頭で、校長は名誉職めいよしょくな可能性もある。


 開拓者の歴史自体が浅いのに、学内で長年教鞭ながねんきょうべんった――あるいは開拓者として偉大いだいな実績を残した者であるみたいな権威けんいも何も、ないだろうからね。


「この度は急な臨時講師役りんじこうしやくのお話を受けていただき、ありがとうございます」


「い、いえいえ……。こちらこそ(美尊と一緒にいられる)貴重で素晴らしい機会をありがとうございます」


 白髪頭の教頭先生の鼻頭を見詰め――にこやかに挨拶をする。

 人の目を見るのが1番なんだろうけど――俺にはハードルが高い。

 嘘か誠か。


 人の鼻頭を見ていれば、相手からは目が合ってるように見えるらしい。

 そして……その戦略は今のところ、成功しているようだった。


「ここが職員室、大神先生に使っていただくパソコンはコチラになります」


「パ、パソコンも使わせてもらえるんですね~!」


「はい。時代はデジタル化の時代ですからな。私のように高齢な者には取り扱いが難しいですがねぇ……。当校はマルチバース社による支援の元、最先端のシステムを導入しております」


「マ、マルチバース社って、何でもやるんすね」


「ええ。特に開拓者に関連する事は、ですな。学生は1人1台、学園からタブレット端末を支給されております。授業の変更や学内のローカルネットから、教師が個別に連絡をする事もありますな」


「ひ、1人1台!? ほわぁ……凄い時代」


「はは、全くですよ……。用いているシステムには、最先端AIも搭載されております。頻回に学生の能力や希望で、クラスやグループ分けを行ったり……。他にも開拓活動や芸能活動で授業が遅れれば、補填ほてん相応ふさわしい課題も勝手にAIが用意してくれるのですよ」


「ほへぇ……。俺も少しパソコンの授業を受けましたけど……。ちょっとレベルが違いますね」


「詳しくは情報担当の教諭が知っているでしょうが……。一時的な教職員用のIDはこちらになります。職員通用口の開閉やパソコン、タブレット端末のログイン時にお使いください」


「あ、ありがとうございます!」


 IDが書かれたカードを教頭先生から受け取る。

 これがあれば、俺もパソコンを使えるのか。


 先生方もこちらに興味はあるのかもしれないが、俺が人見知りを考慮こうりょしてくれているのだろう。

 挨拶などを朝礼で行う場も設けられず、俺は学内の施設を案内される。


 もの凄く巨大な学園の施設を次々に回っていき――。


「――ここが、大神先生がこれから詰める場になりますね。第1訓練場――別名、錬成館れんせいかんというメイン訓練場です。天井や壁はマルチバース社製の対魔法、対物理攻撃素材で覆われています。凄いですよ、自己修復機能もあるのですからな」


「……ほへぇ、凄い大きさ。これは体育館というより、超巨大なアリーナとかドームですね……」


 案内された会場に入ると、そこは俺の知る体育館とは、随分かけ離れて立派な建造物だった。

 観客席に、巨大モニターの数々。


「サッカーコートが丸々2面は余裕で入る面積ですからな。東京ドーム半分か、3分の1ぐらいの面積らしいですよ」


「ほ、ほへぇ……」


 東京ドームとか行った事がないから分からないけど、サッカーコート換算はイメージしやすい。

 学校の校庭に1つ、サッカーコートがあったイメージ。

 それが2つか、もうちょいのサイズって……凄いな。


「直に生徒がやって来ます。開拓者希望のコースでもAIが実力を測定し、グループ分けは済んでおりますので、人数が多くても実力に合わせた指導が行いやすいでしょう」


「も、もうですか!? こ、心の準備が……」


「ははっ。時間がいくらあっても足りませんからなぁ……。我が校の高等部2500名のうち、開拓者希望コースを選択している者は2000人弱と行った所です」


 凄い人数だ。

 一斉いっせいに居る姿は想像もつかないけど……。

 でも5分の1以上は資質があっても開拓者にならないと、学生段階で決めてるんだな。


「他は外部進学や就職希望ですからな。今回は不参加です。一先ず、こちらで立てたプログラムでは50人1クラスを3組ずつ……。ゼッケン番号を付けた150人の指導を1時間で行っていただく予定です」


「1度に150人……。6時間授業があっても、1日で900人ですか」


「ええ。2日でやっと全員の指導が1度は終わる予定です。それを2周、最終金曜日のプログラムはお任せします」


「お、お任せですか?」


 思ったより自由度が高い。

 俺に与えられた裁量さいりょうというか……。


 でも、やっぱり人数が多くて――1人1人に割ける時間は、少なそうだなぁ。

 それはちょっと、嫌だなぁ。

 折角せっかく、楽しみにして強くなりたいと願ってる生徒もいそうなんだから。


「この5日間、最優先はこちらの授業ですからね。勿論、やっていく中で変更したい部分が出て来るでしょう。その時は直ぐにAIへ相談して下さい。多少、無茶なプログラム変更でもAIが翌週の課題授業時間かだいじゅぎょうじかん柔軟じゅうなんに対応が出来るようにしてくれます。変更があれば、関連生徒や職員にチャットが飛びますから」


「え、AIが? それは……ねがったりかなったりですね」


 本当に便利だ。

 お願いの実現可能性も検討してくれて、その後の報連相ほうれんそう補足対応ほそくたいおうもしてくれるとは……。


 凄い時代になっているものだ。

 いや、マルチバース社が飛び抜けて凄いのかな?



―――――――――――

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