第41話 相談枠編(1)開拓者質問!

「――それでは、相談枠を始めたいと思います! 全ては読めないと思うんですけど……。読み上げ機能やコメント欄で気になったご相談に、俺なりの全力投球で応えたいと思います!」


〈8888888〉

〈飯食いながらファンと交流深めるの良いね〉

〈こっちは眠い。ドローンの光弱めてるから炎のあかりが良いかんじにねむけをさそう〉


 おっと、まぁそうだよなぁ~。

 時間も時間だし、かなり眠いだろうね。

 コメントや視聴者数も減ってるし、もしかしたら相談とか来ないかな?

 そうしたら、また企画倒れ? そ、それは嫌だなぁ……。


〈開拓者学園に通う開拓者です。どうすればそんなに強くなれるんですか? 地底人お兄様の実力の底が見えない動きで、堅実けんじつな方針が否定されたんじゃないかと友人も動揺どうようしています。ダンジョンに住む以外の方法で強さの秘訣ひけつを教えて下さい!〉


 まともな相談、きたぁあああッ!

 そうだよね、開拓者としては戦闘関係が1番気になるよね!

 良い質問だけど……。強さの秘訣と言われてもなぁ……。

 う~ん、なんだろう?


「ご相談、ありがとうございます。嬉しいです!……とは言っても、俺も開拓者歴が浅いので……。存在してる謎の力が魔力だと知ったのも、ここ最近ですからね。だから俺の分かる範囲で良いですか?」


〈あたおかが強い理由! 気になる!〉

〈理屈で説明出来るの、アレ?w〉

〈分かる範囲でも良いです。ヒントになればなんでも良いですので。どうか、どうかお願いします!〉


 分かる範囲で良いのか。

 よし、しっかりと考えて答えよう。

 俺の強さ、そして強くなる秘訣……。

 やっぱり根幹こんかんには天心無影流てんしんむえいりゅうの考え方、常在戦場じょうざいせんじょうがあるよな。


「俺の学んでいた流派、天心無影流の根本的な考え方なんですけど……『常在戦場』ってのがあるんですよね。ダンジョンに住んでいる時は確かに、俺の住んでいた道場は結界に守られていました。でも――この瞬間、結界が破られるかもしれない。そもそも結界をすり抜ける敵が現れるかも知れない。そうやって常に、どんな時でも幾通いくとおりとパターンを想定そうていして動き、脳内で体捌たいさばきを考えていました!」


 そうだな、やっぱりこれだろう。

 実戦に勝る経験は無いと言うけど、考えなしに実戦ばかりではダメだ。

 結局は基礎をしっかりと学び、脳内に理想を思い描いていないと成長幅が少なくなってしまうよね。


「実際に敵と遭遇そうぐうした時、予想外の動きをする事があっても最善の動きが出来たのは――そういった幾千幾万通いくせんいくまんとおりの考えと基礎鍛錬、実戦で得る経験の積み重ねだと思います!……これはダンジョンの外で暮らしていても一緒です。理想の自分を思考し、実際に動かす為の心身を得る。結局はそこかな~と!」


〈つまりダンジョンへ潜ってばかりじゃダメだと?〉

〈ダンジョンに潜って経験を積むと魔力が高まるから強くなりやすいんだろ?〉

〈なんか思ってた答えと違う。もっとモンスターを倒しまくる事ですって脳筋発言すると思ってたw〉


 魔力かぁ……。

 そこに関しては正直、災害でダンジョンに落ちて洞窟どうくつと勘違いして――生きる為にモンスターを倒しまくってた経験からも、嘘では無いと思うんだけど……。


「俺と姉御は――魔力を降って湧いた力で、自ら体得たいとくした物ではないと話した事があります。……勿論もちろん、俺自身がダンジョンで生活してた時に、モンスターを倒して魔力が高まって戦術の幅や威力が上がったのは間違いないですけどね。……ただ、大きな力をコントロールする緻密性ちみつせいやイメージも大切かなぁ~と。それを体現たいげんするのが体術たいじゅつである、と思ってます。……ちょっと分かりやすく説明すると、大きな面攻撃めんこうげきで百の力を使えば、ぺしゃんこに出来るはちがいるとします。でもそんな事をしたらすきが多くて、他のはちに刺されますよね? だから体術たいじゅつなどで敵の急所きゅうしょを狙う最小の動きを使い、次にそなえる。こういった動きが出来るようにイメトレと型練習かたれんしゅうも取り入れてみては? パワーを得るモンスター討伐、コントロールを得る体術、みたいな。……どうでしょう、参考になりましたか?」


 分かりにくいだろうか?


 そもそも力の言語化って凄く難しい。

 格闘技のチャンピオンや陸上競技のトップ選手も結局は練習の積み重ねだし……。あと如何いかに無駄なく効率的な努力を積み重ねるか。

 型とかフォームも、その一要素いちようそだと思う。


 相手を研究して自分を知り、自分の強みを活かしたイメージトレーニングをするのが大切でしょう。まずは自分を知る事からってね!

 いきなり眼前の相手だけを見て血眼になっても、自分の能力を把握してないんじゃ対処も成長も出来ないはず!


〈参考になりました。一生懸命に努力をするだけじゃなくて効率的な身体の使い方とイメトレも頑張りたいと思います!〉


「おお、参考になったなら良かったです! ご相談、ありがとうございました!」


 上手く答えられたみたいで良かった~。それにしても、低姿勢で丁寧な方だったな。良い人だ。


 料理をまた口に頬張ほおばりつつ、次の質問を待つ。


 この時間にもコメント欄で『強くなる方法』について様々な議論が巻き起こっている。

 視聴者さん同士で議論する事も大切だし、良いと思う。


 思い出すなぁ~……。

 ジジイや姉弟子、兄弟子と食事をすると――常に食事を囲んで議論に発展していた。

 ああやって様々な議論をしながら探求をして行くのが大切だったんだなと感じる。

 懐かしいなぁ……。


 姉弟子の口からは――兄弟子たちの話は不自然な程に出ない。

 開拓者としての噂も、耳にしない。

 という事は……おそらく、ジジイと同じだ。

 災害で亡くなったから口にしたくない、という事なんだろうな……。

 決して戻れない日々だからか、思い返すとまるで宝石のように美しい日々だったと感じる。


〈ターゲットや周囲に気付かれずモンスターを捕らえるにはどうやれば良いですか?〉


 お、次の質問っぽいコメントが流れてきた。

 ちょっと特殊だな……。


「えっと……この質問は、料理する為に生け捕りをしたいと言う解釈で合ってますか?」


〈地底人みたいにモンスターを喰うつもりか? 腹壊したら報告よろw〉

〈身の程知らずだけど知識なしで大怪我するより良いなwww〉

〈具体的に言うと目的は違いますが、手段としてはほぼ同じになると思うので問題ありません〉


 ちょっと違うけど大まかには合っているらしい。


 基本的には身体の一部をって来るけど……。

 例えば卵を産む鳥の群れがダンジョンに居て、1匹だけを生け捕りにして家の近くで飼いたい場合なら、そうだなぁ……。


「う~ん……。すきを狙えるなら急所を突いて気絶きぜつさせますが……。後は、しびわなとかは有効でしょうね。たまに落ちるアイテムで神経毒しんけいどくみたいのがありましたので、それを使って動きをにぶらせます。後は周囲の邪魔なモンスターは排除するか、重力系で動きを止める。闇系の魔法で五感ごかんうばいつつ、気配を消して逃亡……とか?」


〈ありがとうございます! 成功するビジョンが明瞭めいりょうに浮かんできました!〉


 おお、良かった!

 咄嗟とっさに考えた有効そうな手段を提案してみたけど、かなり喜んでくれている。

 人の役に立てている感じがして、凄く気持ち良いッ! 

 この企画、良いぞ良いぞ~!


 その後も主に開拓者としての相談に乗っていたけど、段々と戦闘関連で聞きたい事も尽きて来たらしい。


大神向琉おおかみあたるさんが大宮愛おおみやあいにイジメられてて可哀想。……ってか胸くそ悪いんだけど。借金も法的に怪しいし、訴えれば?〉


 話題は俺の境遇きょうぐうや、俺を取り巻く人々にまで波及していった――。



―――――――――――

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