生き別れの妹とダンジョンで再会しました 〜10年間ダンジョン内で暮らしていたら地底人発見と騒がれた。え、未納税の延滞金?払える訳ないので、地下アイドル(笑)配信者になります〜
第127話 何時燃え尽きるとも分からぬ業火
第127話 何時燃え尽きるとも分からぬ業火
油断の無い――その代わり気負いが強く、追い込まれた瞳だ。
燃えるような炎を宿す瞳と言うと、聞こえは良い。
だが燃えるようなそれは同時に――燃え尽きる運命を物語っているものだ。
生涯に渡り燃え続けるものなど……存在しないのだから。
適した時に
あの姉御でさえ本気で戦う時ほど――瞳の奥で
他者に直ぐ分かる程の燃えた瞳と言うのは、自己記録に挑むようなスポーツなら良いかもしれない。
でも駆け引きを要する格闘術や、戦闘においては――。
「始め!」
「ハァッ!」
「――分かりやすい。誘いやすい……ですね」
駆け引きが行いやすいものなのだ。
それとなく、わざとだとバレない程度に隙を見せれば――情熱と闘志の炎に
片手剣を受け流した俺は、深紅さんの背後に回る。
避けられたのを認め、サッとコチラへ身を
「――ぐぅッ!?」
俺は足を払って深紅さんを床に叩き伏せ、肩から腕にかけての関節技を決める。
うつ伏せで
「
「……ぐっ! がぁあああッ!」
「敗北を認めて下さい。この関節技から脱出するには――」
「――ぐっ! ぁあああッ!」
「なっ!?」
関節を外す必要がある。
そう
そんな事……人としてのリミッターが外れた人間じゃなければ出来ない。
痛みってのは、人を危険域に至らせない防御装置だ。
脱臼の痛みは――
それを完全に無視するなんて……。
髪色、瞳のように――苛烈な業火のような人だな……。
ブレーキなんてない、留まることをしらない雷火のようだ……。
でも――まだまだ荒い。
「――ぁ……」
「腕の上がらない側から、首への手刀。これで一本です」
「……参り、ました」
ガクッと、深紅さんは床に崩れ落ちる。
俺は彼女の外れた肩関節をゴキンっと元の位置へ戻し、治癒魔法をかける。
戻す時も激痛だろうに……。
僅かに顔を
負けて何もかもを失うのに、強い不安を感じているんだと思う。
この負けず嫌いな頑張り屋を、なんとかしてあげたいな……。
「燃えるような
「冷静さ……」
「そうです。溢れんばかりの情熱、怒りなど……。短絡的にならないよう、押し込んで冷静になること。それが深紅さんには今、1番必要な能力だと思いますね」
「……オーナーと同じ指導を、ウチにするんすね」
「え? 姉御と?」
「……いえ。ありがとうございました! 素直に受け入れ、改善に努めたいと思います!」
「あ、いえ……。ありがとうございました」
礼をして去る深紅さんに、俺も礼を返す。
己の弱さを受け入れる。
それは――深紅さんにとって、1番大変な課題でしょうねぇ……。
特に戦闘中は理性ではなく、深層心理や身に染みついた行動を取る。
そこから修正するのは、困難を伴う。
姉御も同じ事に悩んでいるんだろうなぁ。
こればっかりは、数をこなして心身に染みこませるしかない課題。
だけど、その課題――己の弱さから来る怒りや炎を認めれば……。
アイデンティティーを崩されるかもしれない、と。
ここに来て彼女の育った家庭事情の枷が重くなっている、とも言えるか。
「――さて、それでは全体練習に移ります! 皆さん流石は中等部から戦闘を学び、ダンジョンへ潜って努力しただけありますね! 基礎はかなり出来てます。致命的に足りないのは、
生徒たちは、黙って俺の分析を聞き入れている。
うわぁ……。
真剣なのは分かるけど、空気が重い。
視線の集中が――キツイってぇえええ!
「そ、それでは――
「全員、2人組で対面に並べ! しっかり
「はい!」
「教諭3人と一緒に、俺も指導して周ります。……あと
教諭に指示され、生徒たちがササッと散らばる。
未だ悔しさに歯を食いしばっているのか、口の端から血を流しつつも――深紅さんは冷静を心がけているいるようだった。
追われ、不安と恐怖を感じつつも――乗り越えようとしている。
そんな彼女が
冷静になれと、
反省と悔しさで余計に燃える深紅さんは――その後4回、俺の不意打ち攻撃で床へと沈んだ。
うん。
努力する気持ちは買うけど……命がかかっているからね?
殺すつもりで鍛え上げてくれって、高額スパチャで本人から頼まれてるのもあるからなぁ~。
それ程、
こんなの姉御のマンツーマン特訓に比べたら、優しい準備運動未満だけどさ。
メラメラと燃える深紅さんの闘気を感じつつも――1組目の指導授業が無事に終了した。
やっと1時間目が終わりかぁ……。
もっと指導したい……いや、するべき人だらけだった。
思ったより、タフで忙しい仕事になりそうだなぁ……。
―――――――――――
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