第7話 姉御ぉおおお!?(4)
「
「そうか? 身長は180センチメートルを超えていて、顔も整っていると思うが?」
「褒めても何も出ませんから」
「何より、
誰が地底人だ。
10年間ダンジョンの中で仕方なく暮らしていただけだろうに。
「ダンジョン配信は金になるぞ?」
「金は……普通に暮らせるぐらい稼げれば、それで良いですよ」
大金を手にしても、どうして良いか分からない。
それにジジイの
出来るなら、もうダンジョンに潜らずに人の役に立つ仕事をしたい。医療介護職とか、良いと思うんだよなぁ。
1つだけ――同時進行でも、果たさなければならない
「普通? 普通になるのが、どれだけ大変か……。貴様は自分の事を何も分かっていない」
「え? 普通なんだから、普通に頑張ればイケるんじゃないんですか?」
「客観的に貴様の履歴を
ダンジョンに道場ごと落ちたのが10年前。
10年前が15歳の高1だったから……。
「……25歳です」
「そうだ。25歳の中卒。10年間
「……ど、努力で実力を証明します! 肉体労働は得意ですから!」
「社会を舐めるな! 働いた事もない無職童貞が!」
姉御の
うおぉ……。今のはビックリした……。童貞は関係ないやん!
でも……そっか。無神経な発言だった。それは怒りもするよな。姉御も今でこそ防衛省ダンジョン庁長官とか、会社のオーナーとかやっているけど……。当然、その社会的地位を得る迄に苦労したんだろうから。
俺の舐めた発言に腹が立つのも当然か。童貞は関係ないけど。
「……でも、俺にアイドルとかは無理ですよ。戦うだけならイケると思いますが……」
思わず、しょんぼりしてしまう。
昔から俺、音痴だったしなぁ。
というか俺が25歳なら、美尊は今……16歳? 高校1年生ぐらいか?
ただ……。なんの仕事をするにしても、開拓者登録はしたい。
俺は――ジジイを殺した龍に、復讐を果たす。
その強い意思で、この10年間を生き延びて来たんだから。
「……アイドル売りする我が社に所属するのを貴様が断るのは自由だ。だが――その時は一生、
「――は? え? 刑務所? 俺が?」
「ああ。ダンジョンに閉じ込められた次は、
「な、なんでそうなるんですか!?」
「
「そ、それは……10年前だって高校1年生でしたし。それが何か?」
「
「……違反金、税金?」
ほえ?
なんですか、それ?
高校1年生で人間社会をリタイアした俺は、消費税ぐらいしか分からないんですけど?
「うむ。身元引き受け人である私が
「な、なんで住民税!? 俺、ダンジョンの住民だったのに!?」
住民税ってアレだよな。その市区町村や都道府県に住んでいる地域社会の費用を払うって税金だよな!?
えぇ……。俺、地域社会から外された所に住んでたんですけど……。だってさ、地底人扱いだよ? 地底に済む人からも、住民税を取るの?
しかも、今まで収入すらなかったのに⁉︎
「前例は無いがな。ダンジョンのある地域に住んでいるのと同義だそうだ。なお大神家の不動産所得は、向琉が相続するものになる。失踪宣告などの手違いか、向琉は死亡扱いにもなってないからな」
「何も恩恵を受けてないのに、理不尽⁉︎ そんなの役所の重大ミスで俺のせいじゃないじゃないっすか⁉︎」
「トータルを計算すると――ざっと62億円だ」
「……は?」
「……特に10年に渡るダンジョン法関連の違反が効いたなぁ。頑張って払えよ」
「む、無理! 払えないです! え、俺は失踪してたんだし、死人扱いで税金も罰金も免除じゃないんすか⁉︎」
「その辺りは未曾有の災害で戸籍も何もかも錯綜していたからな。向琉が生きていると信じていた者や、後見人である私が裏から手を回しておいた」
「権力の使い方を間違えた権力者⁉︎ 生きてるのを信じてくれてたのは嬉しいですけど……。えぇ、マジでそんな大きな借金、俺にあるんすかぁ?」
「……さて、どちらだろうな?」
うおぉ……。
何その答え⁉︎
10中8、9……いや、99%以上あり得ないと分かっていつつも、断言されない事での不安!
「どちらにせよ――今なら、私が肩代わりしてやっても良いと言っている。真偽を探るのは、一先ずの安全が確保されてからでも間に合うとは思わんか?」
「う、それは確かに……。法的にアレなら、後でいくらでもなんとかなるはずですし……」
何と言うか、姉御……前から強引な所はあると思ってたけど、ここまでだっけ?
なんか――裏がある気がする。
脅すにしても『鍛錬を厳しくするぞ』、とかが姉御の
なんだかんだで、俺の武力向上に繋がる脅しで……。
間違っても、刑務所だの金だので脅すような人じゃなかったんだ。
この10年で変わってしまったのか、それとも……。
ええい!
こんなに頭を使うのは10年ぶりだ!
うん、俺には分からんです!
「本当に、肩代わりしてくれるんすか? そ、そんな大金を!?」
「私はシャインプロモーションのオーナーだと言っただろう?
姉御はスッと、机の上に契約書と書かれた紙を差し出した。何枚もあって、
もしかして姉御――自分がオーナーの会社へ俺を無理やりにでも引き込もうと、苦しい理由で借金があるとか仄めかしてない?
考えすぎ、かなぁ〜?
読めるか、こんなもん!――ええい、逃げ場が無いなら仕方ない。アイドル活動からは適当な理由を付けて、全力で逃げよう!
「します! サインをさせていただきます! 感謝しますよ、姉御ぉおおお!」
置かれたペンを手に取り、自分の名前を書類にサインする。自分の名前を漢字で思い出すのに、かなり苦労した。
ああ、もう逃げられない……。なんでかな? 目頭が熱いんだ……。
「ふっ……」
「……今、笑いました?」
姉御が笑う、だと?
姉御が笑うなんて……。余程、機嫌が良くなる事があったのか。それとも、これから本気でキレるかの2択だ。出来れば、平和な方向でありますように……。
「気のせいだ。詳しい活動の話は、うちの社長兼マネージャーに引き継ぐとしよう。――
すると1人の女性がゆっくり入室してきた。
黒髪ショートヘアーにメガネをかけ、心なしか疲れたような表情をしている。スーツを着ているが……姉御にこき使われてるのかな?
―――――――――――
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