第8話 雇われ社長兼マネージャー
「……オーナー。久しぶりの再会で嬉しいのは分かりますけど、待たせすぎですよ。私、忘れられてるのかなってドアの前で泣きそうでしたよ?」
「すまんな」
姉御は申しわけ無さそうに苦笑している。
え、姉御……俺と話すのが嬉しかったの? やだ、可愛い所もあるじゃない。
「……おい、
「姉御……初対面の人、怖いです」
見知った人と話すのでさえやっとなのに。初対面の人は……まだ無理。リハビリが必要!
「はぁ……。ダンジョンから出て来たばかりのように気絶しないだけマシか」
「あの……。
「……よ、よろしくおねがいします」
自分でも驚く程、小さい声しか出なかった。
川鶴さんは困ったように笑い、姉御に視線を向けている。
姉御は俺の頭に手を乗せ――。
「――そう言えば、配信機材はどうする?
「え、そりゃ悪い物より良い物の方で。
そりゃそうでしょう。
配信という物はよく知らないけど、音とか映像が悪かったら見ている人だって嫌な気持ちになるはず。そんなのは嫌だ。
「……そうか。他ならぬ本人がそう望んでいる。川鶴、分かったか?」
川鶴さんは頭が痛そうに額を抑え、小さく
やっぱり最高の機材なんて
「……分かりました。直ぐに発注しておきましょう。それでは大神さん。外に車を用意しておりますので、乗って下さい。事務所へと向かいます」
「……え? 川鶴さんと2人で、ですか?」
「……すいませんが、私が担当マネージャーですから。当社に男性スタッフはいないですし、オーナは多忙です。どうか我慢して下さい」
「あ、姉御ぉ……」
「情けない顔をするな。
正直、怖いけど……。
俺は川鶴さんと立派な
そして川鶴さんが運転席へ、俺が後部座席へと乗りこみ揺られる事、5分程した時――。
「――あ、大神さん。
「え? ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」
後部座席なら直接目を合わせずに済むから、円滑に話せるみたいだ。バックミラーに映る川鶴さんは、絶対に見ちゃダメ! 話せなくなるからね。
「はい。他にも直ぐに暮らせる家具付きの寮もご用意してあります。マンションの一室を借りた職員寮ですが、棟が違うだけで妹さんとも直ぐ傍です」
「
この人――良い人だ!
間違いなく、良い人だ! それに、出来る人だ!
「他にも不自由があったら、仰ってください。出来る限りの事はします。本日残りの予定は、この後に事務所で配信をするぐらいですね」
「……え? 配信?」
「はい。SNSを中心に、美尊さんと地底人の話題が広がっているんです。この話題がホットな内に、説明枠でも良いから開くのが大切です。ますは視聴者登録数を稼がないと、チャンネルの
「チャンネル? 収益化?」
「ええ。D.connectで個人チャンネルを
ヤバい、何語を喋っているのか分からない……。
ま、まぁ――何とかなるっしょ!
そんな軽い気持ちで流し、車は事務所へと着いた。
どうやら看板を見るに、オフィスビルを2階分貸し切っているようだ。
俺は配信の為の準備スペースを設営し、スーツへと着替えさせられた。ネクタイが結べず、川鶴さんに結んでもらったんだけど……距離、近いです。緊張します。
そうして2時間後――その時は訪れた。
―――――――――――
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