生き別れの妹とダンジョンで再会しました 〜10年間ダンジョン内で暮らしていたら地底人発見と騒がれた。え、未納税の延滞金?払える訳ないので、地下アイドル(笑)配信者になります〜
第163話 side トワイライト~那須涼風のお部屋~
第163話 side トワイライト~那須涼風のお部屋~
「――ああ、悩ましい!」
日が昇っている事にも気が付いていないのか、カーテンは閉めたまま。
「くっ……。ここに来て、お兄さん先生が深紅ちゃんと美尊ちゃんの仲に参戦!?」
美尊に深紅、そして向琉や愛のイラストを紙に描き――
消しゴムで擦った跡の多さから、如何に悩んでいるのかが良く理解出来る有様だった。
「深紅ちゃんのあの眼! あれは絶対に恋する乙女の瞳! あの後のダンジョンでも、悩ましげにホウッと息を吐いてたし……。ああ、もう!? 後ろには美尊ちゃんが居るんだよ、深紅ちゃん!?」
涼風は――1人で盛り上がっていた。
目の下にクマを作り、めちゃめちゃ興奮していた。
鼻息は荒く、その場に居ない深紅を問い詰めている。
「この場合のカップリングは一体!? お兄さん先生、オーナー(男性化)の気持ちはどうするんですかぁあああ!?」
どうするもこうするもねぇわ。
向琉が聴いたら、そう突っ込むだろう質問――独り言を叫んでいる。
そして涼風は、紙ではなく――液晶タブレットへとペンを走らせる。
漫画のようにコマ割りされた一コマでは――プラチナ色の髪、プラチナ色の瞳をした格好良い長身女性が『こいつは俺が守る』と、成金趣味の服装を着た男に宣言している。
その格好良い長身女性の腕には『お義姉様……』と呟く赤髪の女性――どう見ても、
そして『私のお姉ちゃんだから』と、少し冷めた瞳で長身女性の服の裾を引くスレンダーな女性は、水色のインナーカラーが入った髪に瞳――どう考えても、
「くぅううう!? ここで、ここでお兄さん先生(女体化)は――2人の気持ちにも気が付かずにオーナーの元へ向かってしまう! でもオーナーからの気持ちにも、お兄さん先生(女体化)は気が付いて居なくて!? ああ、もう! なんてギルティ! これは、ギルティイイイ!」
そう叫びながら、涼風が持つペンは勢いを増してタブレット上を駆け回る。
もう止まらない、堪らない。
そんな感情が空気を通して伝わってくる程の熱気だ。
ふと――涼風のスマホが鳴った。
「――美尊ちゃんから通話? どうしたんだろ?」
パッと、まるで人が変わったかのように大人しい顔に戻る。
先程まで興奮していたのは、あくまで人前には見せない姿。
見事な変身っぷりだ。
「もしもし? 美尊ちゃん、どうしたの?」
『涼風……。なんかね、深紅が変なの』
「――え?」
明らかに元気のない美尊の声。
それは、何処か戸惑っているような、弱々しく惑う声音だった。
もしかしたら、昨日の旭柊馬の件で――美尊まで精神的に参っているのかもしれない。
一夜明けた今、より深く考えて……マイナス思考から抜け出せなくなる。
良くある話だ。
妄想は妄想。現実は現実と割り切っている涼風は、心から心配そうに――。
「――どういう感じに変なの?」
スマホ越しに、真剣に尋ねた。
美尊は少し息を飲み、沈黙してから――。
『――お兄ちゃん、取られちゃうかも……』
「……エ゙?」
『お兄ちゃんの妹は、私なのに……。深紅が、お兄ちゃんの事をお兄様って呼ぶのも……。なんか特別な意味があるのかな? 涼風は、お兄さん先生って呼び名のままなのに……』
「…………ぁあァ゙ア゙゙゙」
『涼風? 私、どうしたら良いかな』
「――尊い……」
『……え?』
「あ、いや! ううん、多分……。深紅ちゃんは、お兄さん先生の妹の座を狙ってないと思うよ? 大丈夫じゃないかな?」
『……本当?』
「うん。……無意識に狙ってるのは、美尊ちゃんのお姉さんの座だから(ぼそっ)」
『うん? 今、何か言った?』
「う、ううん! とりあえず、美尊ちゃんはそれを心配しなくて大丈夫! お兄さん先生だって美尊ちゃんを妹として大切に想ってくれてるでしょ?」
『……うん。凄く、想ってくれてる。嬉しくて、恥ずかしいぐらい』
「…………ぁあァ゙ア゙゙゙。
『涼風? ごめん、電波が悪いのかも。犬が呻ってるような音が……』
「――あ、そ、そっか! 私のせいかも?」
『スマホの調子悪い? 突然、ゴメンね。また明日』
「うん、また明日~」
通話を切ってから3秒。
確かに通話が切れている事を確認して――。
「ぁああああああ! もう、ええ!? 創作は創作の中だけにしてよぉおおお!? これは、これはぁあああ!?」
涼風は――新たに与えられた養分に胸をときめかせ、床の上を転げ回った。
「
「はぁ……。もう、どうしよう」
布団を抱き、悩ましげに呟く。
その姿だけを見ていると――まるで密かに片思いする相手を想う、ラブロマンス漫画のヒロインだ。
「
のそりとベッドから起きると――涼風は、また液晶タブレットの前に座る。
趣味は人それぞれ。
とは言え――流石に『あなたで妄想してます』とは言えない。
誰か、身近で話せる人はいないか。
その想いを涼風は、漫画として描く事で発散しているのだ。
多感なお年頃であるトワイライトの面々の休日は、こうして過ぎて行く――。
―――――――――――
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